2024.12.05

【ジョーディー・グリープ】気鋭の若手が挑む、UKロックとブラジル音楽の未知なる融合【HASHIMOTOSANのおすすめ音楽】

 

【ジョーディー・グリープ】気鋭の若手が挑の画像_1

一枚のアルバムとの出合いから始まる、"私的"な音楽の旅。多彩な音が育む、新しいカルチャーの萌芽を目撃せよ!

『The New Sound』 Geordie Greep

『The New Sound』 Geordie Greep
『The New Sound』 Geordie Greep photography: Yis Kid
¥2,860/Rough Trade

久しぶりにこんな音楽聴いたことない!と驚きとともにワクワクさせられる作品に出合った。イギリス出身のミュージシャン、ジョーディー・グリープの最新作『The New Sound』のことだ。2010年代後半に続々と登場したサウスロンドンの新鋭ロックバンドの中でも、ひときわ強い個性を放っていたblack midiのフロントメンバーとして知られているジョーディー。今年バンドの無期限活動休止を発表し、その衝撃も冷めやらぬ間にリリースされた今作は、幼い頃に母親が勤めていたクラブで耳にしたサルサやサンバといったラテン音楽への憧れを、バンド活動で培ったプログレッシブなロックサウンドと融合させた、まったく新しい響きが味わえる傑作だ。

今作のレコーディングはロンドンだけでなくブラジルのサンパウロでも行われていて、現地のミュージシャンとのセッションでの緊張感や熱量の高さがそのまま収録されているのも聴きどころの一つ。トロピカルなグルーヴのジャズサウンドが楽しめる「Terra」や、疾走感のあるサイケデリックなラテンロックチューン「Holy, Holy」は、ブラジルに行ったからこそ生まれた高揚感やエネルギーが生々しく反映されている楽曲と言えるだろう。ボサノヴァやMPBなど独自の歴史と文化をもつブラジル音楽を、イギリス出身の弱冠25歳の若者が先人たちへの敬意とともに新しい感覚と見事にミックスして完成させた今作。音楽に国境はない、制限はない、可能性は無限大にあるということを改めて思い知らされる、まさにニューサウンドな一枚だ。

HASHIMOTOSAN(ハシモトサン)プロフィール画像
HASHIMOTOSAN(ハシモトサン)

ジャンルを問わずさまざまなミュージシャンを愛する音楽マニア。Itなアーティストを紹介する自身のX(@hashimotosan122)にファン多し。最近は、世界各国の年代別ヒット曲を聴けるアプリ「Radiooooo」に夢中。

2024年12月のおすすめ音楽

『I Should Call Them』 Dua Saleh

『I Should Call Them』 Dua Saleh
配信中/Ghostly International

世界の終末を背景に、ひと組のクィア・カップルの波乱の物語を描く——。そんな構想を形にしたのは、俳優としても活躍する米国人のR&Bシンガー。変幻自在の声が愛の喜びと哀しみをセンシュアルに描出。

『The Jester』 Wallice

『The Jester』 Wallice
配信中/Dirty Hit

ピリッと皮肉を込めた言葉とメロウな歌声で等身大の自画像を描く、日系米国人のニューフェイス。日々理想と現実の狭間に落ち込んでいる彼女の葛藤がパンチのきいたインディ・ロックから伝わってくる。

『Harp, Beats & Dreams』 Marysia Osu

『Harp, Beats & Dreams』 Marysia Osu
配信中/Brownswood

タイトル通りにハープとビートで夢を紡ぐ、ポーランド生まれ・英国在住の新人がデビュー。クラシックとアンビエントとジャズが交わるファーストには、美と癒やしが支配する世界がどこまでも広がっている。

【HASHIMOTOSANの"雑食"音楽紀行】をもっと読む

FEATURE