一枚のアルバムとの出合いから始まる、"私的"な音楽の旅。多彩な音が育む、新しいカルチャーの萌芽を目撃せよ! 『Cascade』 Floating Points 『Cascade』 Floating Points ¥2,860/Beatink さまざまな物事が規制されていたコロナ禍を経て、それまで抑えてきた感情を解放するかのようにダンスミュージックシーンが活気づいている2024年。Jamie xxやVegyn、saluteなどから、心も体も躍らす傑作が続々と届いているが、その発信の中心地はイギリスだ。ロンドンやマンチェスターを拠点に活動している彼らは、互いの音楽に刺激を受けながら高め合っているよき仲間でもある。 Floating Pointsことサム・シェパードもその内の一人だ。自宅スタジオには無数のモジュラー・シンセが並べられ、スピーカーまで手作りするという機材への強いこだわりを持つ彼。神経科学の博士号も取得しており、興味のあることをとことん突き詰める探究心の強さをうかがい知ることができる。伝説的なジャズサックス奏者、ファラオ・サンダースとの共演や宇多田ヒカルの『BADモード』への参加など、多方面に活躍の場を広げていた彼の約5年ぶりとなる最新作『Cascade』は、ここ数年の活動のバックラッシュともいえる非常にヘビーでワイルドなサウンドが特徴の作品だ。特に作品中盤の「Fast Forward」から「Afflecks Palace」で体感できる、多種多様な音の波に飲み込まれながら高まっていく緊張感と高揚感、そしてそれが一気に解き放たれる心地よさは圧巻。今年のフジロックに続き、来年2月には再び来日公演が決定しているFloating Points。今作で聴ける彼の尋常ではない音へのこだわりを、臨場感とともに味わえるまたとない機会となりそうだ。 HASHIMOTOSAN(ハシモトサン) ジャンルを問わずさまざまなミュージシャンを愛する音楽マニア。Itなアーティストを紹介する自身のX(@hashimotosan122)にファン多し。最近は、世界各国の年代別ヒット曲を聴けるアプリ「Radiooooo」に夢中。 2024年11月のおすすめ音楽 『Strawberry Hotel』 Underworld ¥3,300/Virgin Music 英国エレクトロニック音楽界の重鎮による11枚目のアルバムは、静と動、陶酔と覚醒、ふたつの表情を併せ持つ壮大な1枚。波打つビートと浮遊するポエトリーで紡ぐ、彼らならではの世界は今も進化している。 『Pointy Heights』 Fousheé 配信中/RCA この新作でジャマイカにある自身のルーツを探るのは、ニュージャージー出身のシンガーソングライター。スカやレゲエのリズムをさりげなく帯びた、ノスタルジックな曲の数々が、聴き手にも郷愁の念を抱かせる。 『the 8th cumming』 cumgirl8 ¥2,420/Beat Records 映像なども駆使し、性とジェンダーを巡る問題を提起する、NYのガールズバンドがデビュー。シンセポップに乗せて、フェミニストの視点でテクノロジーを論じ、遊び心あるアート・アクティビズムを世に問う。 【HASHIMOTOSANの"雑食"音楽紀行】をもっと読む 【フローティング・ポインツ】自宅とダンスフロア双方を揺らす、電子音楽の最先端【HASHIMOTOSANのおすすめ音楽】 【テムズ】愛と希望、苦悩を世界に届ける、アフリカの歌姫【HASHIMOTOSANのおすすめ音楽】 【クレイロ】早咲きのベッドルームポップから、大人のソウル・ジャズへ【HASHIMOTOSANのおすすめ音楽】 【チャーリー・XCX】ポップアイコンが提示する、クラブサウンドとの新たなる交差【HASHIMOTOSANのおすすめ音楽】 【ベス・ギボンズ】加齢を受け入れ、別れと向き合う葛藤と現実を歌う【HASHIMOTOSANの"雑食"音楽紀行】 【ビヨンセ】アメリカ音楽の歴史を、多様な視点で再解釈する旅【HASHIMOTOSANの"雑食"音楽紀行】