2023.10.05

NewJeansが示す、K-POPの新たな可能性とその先【HASHIMOTOSANの"雑食"音楽紀行】

 

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一枚のアルバムとの出合いから始まる、"私的"な音楽の旅。多彩な音が育む、新しいカルチャーの萌芽を目撃せよ!

『Get Up』 NewJeans

『Get Up』 NewJeans
『Get Up』 NewJeans
¥2,750〜/ YG PLUS
※販売形態によって価格変動あり

デビューからわずか1年で世界中にファンが増え続けているNewJeans。その楽曲は、これまでK-POPやアイドルにあまり関心がなかった層や界隈にまで届き、国籍や世代を問わず多くの人々を魅了している。

従来のK-POPカルチャーの魅力といえば、ゴージャスな衣装や堂々とした佇まい、そして、アメリカナイズされた派手なサウンドや激しいパフォーマンス。一方で、NewJeansの個性は、それらとは一線を画すチルなファッションスタイルやリラックスしたムード。いつ身につけても飽きがこない、時代を問わず愛されてきたジーンズを由来としたグループ名の通り、彼女たちの作品にはどれも日常の中に自然になじむシンプルな心地よさがある。

Y2Kムーヴメントともリンクしたノスタルジックな質感を持ちながら、最新の音楽トレンドを押さえた楽曲も印象的だ。ミニアルバム『Get Up』は音楽的な挑戦姿勢をより強く示した作品に仕上がっている。UKガラージや2ステップなど、’90s後半〜’00s前半に流行したクラブミュージックのリバイバルの流れをうまく捉えた、軽快なリズムがクセになるクールなトラック。そこに加わった透き通るように美しい歌声を聴き、デビュー作やシングルを経て身につけた自信や経験から、さらに洗練された5人の成長速度に驚かされた。

このアルバムの立役者の1人が、今作収録の6曲のうち4曲でソングライターとして携わっているデンマーク在住のErika de Casierだ。彼女とその仲間である北欧のミュージシャンが制作した曲は、アイドルとしての可憐さやキャッチーさはキープしつつ、少し大人びて、ソフィスティケートされた表情を引き出している。K-POPに造詣があまり深くないErikaを起用することで、先鋭的な響きと大衆性を兼ね備えた、これまでにない新しい音楽を届けることに成功しているのだ。次々と斬新な仕掛けやサウンドを展開し続けているNewJeans。さまざまな固定観念を壊し、全世界に刺激を与え続けている彼女たちから今後も目が離せない。

HASHIMOTOSAN(ハシモトサン)プロフィール画像
HASHIMOTOSAN(ハシモトサン)

ジャンルや国、時代を問わずさまざまなミュージシャンを愛する音楽マニア。今注目すべき、Itなアーティストを紹介する自身のTwitter(@hashimotosan122)にファン多し。

2023年10月のおすすめ音楽

『Silver』 Say She She

『Silver』 Say She She
¥2,640/P-VINE

色とりどりのグリッターをふりまくようにして、多幸感で聴き手を包む本作は、ニューヨークの話題のバンドの新作だ。ノンストップのディスコ・グルーヴと、3人の女性シンガーのドリーミーな声のハーモニーが、ポジティブな生き方を指南。

『MSG + GREAT TASTE』 Miso Extra

『MSG + GREAT TASTE』 Miso Extra
¥2,420/Transgressive

日本語と英語を切れ目なくつなぎ、物語を描く、英国と日本の血を引くラッパー兼プロデューサーが本邦デビュー。この日本企画盤では、"耳へのうま味"と彼女が呼ぶ、メロウでセンシティヴなヒップホップを披露し、心地よく感覚を刺激する。

『falling or flying』 Jorja Smith

『falling or flying』 Jorja Smith
¥2,090/FAMM 9月29日発売

大ヒットしたデビュー作から5年、スモーキーな美声で世界を魅了した英国人シンガー待望のセカンド。ジャンルに縛られずにロックもアフロビートも自分の流儀で歌って、センシュアリティを解放し、成長のあとをくっきり刻んでいる。

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