2026.02.05

過去への愛と敬意で未来を創造する【ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー】 | 2026年2月のおすすめ音楽

一枚のアルバムとの出合いから始まる、"私的"な音楽の旅。多彩な音が育む、新しいカルチャーの萌芽を目撃せよ! 音楽マニアのHASHIMOTOSAN(ハシモトサン)が注目の一枚を解説。

一枚のアルバムとの出合いから始まる、"私的"な音楽の旅。多彩な音が育む、新しいカルチャーの萌芽を目撃せよ! 音楽マニアのHASHIMOTOSAN(ハシモトサン)が注目の一枚を解説。

hashimotosanのおすすめ音楽

『Tranquilizer』Oneohtrix Point Never

『Tranquilizer』Oneohtrix Point Never

『Tranquilizer』Oneohtrix Point Never
¥3,080/BEATINK

2020年代もいよいよ後半に突入し、ついこの間だと思っていた2010年代が、懐かしさの対象なのかと感じる瞬間が増えてきた。Y2Kリバイバルで、90年代・00年代のファッションやカルチャー、音楽が再流行・再評価されてきたように、一度廃れた文化も時代がめぐり、再びスポットライトを浴びるときがやってくる。

ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの名で知られるアメリカ出身のプロデューサー、ダニエル・ロパティンは、過去にあった音楽を再構築し新しい音楽として生まれ変わらせる天才。リノベーションの匠と言える存在だ。近年はザ・ウィークエンドの楽曲プロデュースや、ティモシー・シャラメ主演の映画『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』(’25)の音楽を担当するなど活動の幅を広げている。

彼の最新アルバム『Tranquilizer』は、インターネット上に残っていた90-00年代のさまざまな音源のアーカイブが一度完全に消失してしまい、時を経てデータが再びアップロードされ戻ってきたという実体験から着想を得て制作された一枚だ。多種多様なサンプル音源がちりばめられたコラージュアートのようなエレクトロサウンドは、非常にいびつな構造。しかしながら、次々と変化していく万華鏡をのぞいているかのような美しさを放っている。消え去ったものが戻っても、またいつ姿を消すかわからない。そんな儚さを秘めた過去の芸術への愛と敬意が、今作を傑作たらしめている要因の一つだろう。

4月には今作を音楽と映像で体感できる最新のライブセットでの来日も決定している。ぜひ生で体験したい。

HASHIMOTOSAN(ハシモトサン)プロフィール画像
HASHIMOTOSAN(ハシモトサン)

ジャンルを問わずさまざまなミュージシャンを愛する音楽マニア。Itなアーティストを紹介する自身のX(@hashimotosan122)にファン多し。最近は、新調したアナログプレイヤーでレコードを聴きながら過ごす時間がお気に入り。

2026年2月のおすすめ音楽

『Sweet Face Killah』 Infinite Coles

『Sweet Face Killah』 Infinite Coles

配信中/PIAS

クィア・カルチャーに根差した独特の表現を打ち出す、米国人シンガーのファースト。主題は、ゲイであるがゆえに自分を拒絶する、著名ラッパーの父との関係だ。そんな葛藤をエンパワーメントに転化する。

『For the First Time, Again』 Tyler Ballgame

『For the First Time, Again』 Tyler Ballgame

¥2,750〈1月30日発売〉/Beat Records

エンジェリックな声とアナログ感あふれるサウンドで聴き手を幸福感で包むタイラーは、米・東海岸出身の新人。紆余曲折を経て、30代半ばでデビューに至った彼の蓄積された想いが、歌に深い味わいを与えている。

『Blizzard』 Dove Ellis

『Blizzard』 Dove Ellis

配信中/AMF Records

大きな注目を浴びていながら、アイルランド人であること以外は謎に包まれたシンガー・ソングライターが、アルバムを完成。冬の夜長に寄り添う美しいフォークソングの数々から、故郷の風景が垣間見える。

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