【連載第10回】アートセレブのたしなみ/セレブのおしのびハロウィンパーティ

ペリエ・ジュエが現代アート関係者の食事会を催したり、ドン ペリニヨンが宮本亜門演出でダンスのパフォーマンスショーを開催したり、シャンパンとアートはマリアージュの相性が良いです。先日も、ヴーヴ・クリコのハロウィンパーティー「Yelloween」が 六本木ヒルズのMado Loungeにて行われました。森アーツセンターギャラリーの「ティム・バートンの世界」展とコラボした「Veuve Clicquot Yelloween with The World of Tim Burton」と題された華やかなイベント。なんとティム・バートン本人も来日すると聞いて、ハロウィンにティム・バートンとは縁起が良い気がして行って参りました。ちなみに、ハローウィーンなのかハロウィーンなのか混同していましたが、イベントのリリースにはハロウィンとあり、伸ばさないのが正式っぽいです。六本木人が言うのだから間違いありません。
 六本木駅はすでに仮装の人々でにぎわっていました。駅のホームには血まみれの人が数人。顔や口、腹部などから流血。この中に本当に怪我している人がいてもわかりません。そして路上にも魔女、ナース、ダースベイダー、スマーフ、セーラームーンなど、仮装の人々が。中には仮装を一瞥もせずにスタバでパズドラしているOLもいましたが……。でもここ数年いつの間にかハロウィンは日本に定着していたようです。シャイな日本人が別人になりきって自分を解放できる日です。

そんな仮装の同調圧力の中、普段着ですが一応カボチャっぽい色の服で会場へ。エントランスに続く通路の壁にはティム・バートンの絵が展示されています。モチーフはシザーハンズや幽霊、赤ずきんなど。ハロウィンは死霊が徘徊する西洋のお盆であることを改めて感じさせられます。会場にはモデルやアーティストなどおしゃれピープルがひしめいていました。シザーハンズコスプレの人も何人かいます。小柄な男性がいると思ったら、「チャーリーとチョコレート工場」に出演したディープ・ロイだったようです。そして、ピエロの人とぶつかりそうになり、その時は仮装だと思ったのですが、あとで「SEKAI NO OWARI」のDJ LOVEだったことを知りました。FUKASEやきゃりーも遊びに来ていたみたいで、かなりHOTなセレブ空間です。

 しかしイベントの仕切りは、若干前時代的で、企業感みなぎっていました。ステージの前にマスコミが場所取りでスタンバイし、ヴーヴ・クリコの人が挨拶。続いてギラギラ系のフジテレビ社員が「ネットの世界でもオンラインで話題になってます!!」などと「ティム・バートンの世界」展への熱い思いを語ったあと、ついにティム・バートンが登場。「今日はお集まりいただきありがとうございます。こんなところに座ってないでトリックorトリートに行ってください」とジョークを交えて挨拶していました。少年のような瞳がキュートです。でもわりと短時間で退場してしまいました(セレブ早引け、略してセレ引け)。

 

 さて、さきほど司会者が「東京で最もエキサイティングでスタイリッシュなパーティにようこそ!」と言ってましたが、フロアを盛り上げるのはTRFのDJ KOO! 「前に踊ってる人がいないと淋しいな」「本当はみんな手を振ってフーとか言いたいんだよね」などとトークしながら、TRFのヒット曲を次々かけていました。だんだんバブル世代の人が「フー!!」と合いの手を叫びだしました。スタイリッシュってなんだろう、おしゃれってなんだろう……そう思いながら会場を後にしたのですが、一周回ってむしろこれがCOOLなのかもしれません。

 

 

ティム・バートンの世界
会期:2015年1月4日(日)まで
会場:森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階)
開館時間:11:00~22:00(土日祝は23:00まで)※入場は閉館30分前まで
会期中無休
http://www.tim-burton.jp

“辛酸なめ子”

辛酸なめ子

漫画家、コラムニスト。埼玉県出身、武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。アイドル観察からスピリチュアルまで幅広く取材し、執筆。新刊は「妙齢美容修業」(講談社文庫)「辛酸なめ子の現代社会学」(幻冬舎文庫)。twitterは@godblessnamekoです。

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