昨年おめでたいことに 高円宮典子女王と出雲大社の権宮司・ 千家国麿氏がご結婚されるという国民的慶事がありました。ことほぎの波動にあやかりたく、「高円宮妃殿下写真展—鳥たちの煌(きらめ)き―」に伺いました。会場は横浜のセレブな庭園、三渓園(さんけいえん)。もともとは実業家で茶人でもあった原三渓氏の庭園だったのが、「この自然は創造主のもの。私有はできない」という無我の境地に至り、庭園として一般に開かれたそうで……。崇高なノーブレスオブリージュ精神を感じます。
庭園にはわびさび漂う五重塔や、横山大観、下村観山などの芸術家が訪れて歓談した鶴翔閣(かくしょうかく)、庶民が囲炉裏を囲んでお茶を飲める初音茶屋など、歴史ある建造物が点在。自然の景観としても、梅や松、竹、小川に滝と風流なものが大集合していました。投句箱が設置されていましたが、この庭園で俳句が一句も思い浮かばない自分は日本人としてヤバいかもしれない、という焦燥感にかられました。
そんな中、異質の存在感を放っていたのは庄屋の屋敷、旧矢箆原(やのはら)家住宅です。ダムの底に沈みそうになっていた農家を移築したそうですが、外も中も道具もすべてのものが茶色いです。薄暗い屋敷内で小さい子が「こわいよ〜」と目に見えない何かに怯えていました。屋敷は居住空間と接客空間に分けられ、接客用だけでも、広間、中の間、仏間、奥座敷、座敷、雪隠、とかなりの広さです。座敷牢がないか探してしまいました。
高円宮妃久子様の展示は庄屋とはまた別の、白雲邸という数寄屋風建築の日本家屋で開催されていました。いつ宮様関係の方が見に来てもいいようにか、暖房がガンガンにつけられてました。
写真はかわいいメジロの写真にはじまり、バナナを食べるハイガシラソライロフウキンチョウ、アルゼンチンのミドリヤマセミ(突然現れ目の前に止まったそうで、さすがインペリアルフォース……)、長野のブッポウソウ、エジプトのセキレイ、アルゼンチンのゴイサギなど、世界各地のダイナミックな鳥写真の数々。細いお体でこんなに世界中を精力的に飛び回っていらっしゃるとは(しかも秘境系)、さすがインペリアル遺伝子だと驚嘆しました。
その中に「求愛中のコアジサシ」という、白い鳥のたぶんオスがメスに向かって羽を広げてアピールしてる写真がありました。なんとなく嫁がれた典子女王様への思いが表れている気がします。もしくは淡白そうな娘婿への激励でしょうか。また、電線にとまって口論してるように見えるチャムネツバメには「意見の相違?」というコメントが。夫婦はたまに意見の相違があるかもしれないけれど仲良くね、というメッセージかもしれません。
辛酸なめ子
漫画家、コラムニスト。埼玉県出身、武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。アイドル観察からスピリチュアルまで幅広く取材し、執筆。新刊は「妙齢美容修業」(講談社文庫)「辛酸なめ子の現代社会学」(幻冬舎文庫)。twitterは@godblessnamekoです。