マリメッコで北欧プリントに囲まれて……#13

ポジティブで大胆で日本にはない色のセンスが目を引くマリメッコ。北欧というワードだけでも高揚してきますが、そのデザインやテキスタイル、ファブリックを集めた「マリメッコ展」がBunkamuraザ・ミュージアムで開催中。休日に行ったらおしゃれな男女が集まっていました。やはり北欧は永遠の憧れです……。

 展示室の最初に掲げられていたのは、ウニッコのプリント。マリメッコの代表的な花柄です。ウニッコはケシのことだそうで、中毒性のある花のヴァイブレーションが宿っているため、こんなにも人を惹き付けるのかもしれません。ウニッコをデザインしたのはマイヤ・イソラという女性。マリメッコには他にも、アンニカ・リマラ、ヴオッコ・ヌルメスニエミといったカリスマデザイナーが在籍していました。創始者アルミ・ラティアは人の才能を発掘する天才だったそうです。デザイナーのヴオッコ・ヌルメスニエミの映像が展示室で流れていましたが、素敵な年の取り方をしているおしゃれな女性でした。しかし「私は今まで見てきたものをコピーしたことはありません。デザイナーとしての経験から、デザインを見ればどうやってできたのかプロセスがわかります」と、デザインに対して厳しさを感じさせるお言葉も。「フィンランドに色彩をもたらしたのは私」という発言もあり、実はデザイン業界を牛耳っているのでしょうか。


 

 デザイナーの中には脇坂克二、石本藤雄など日本人デザイナーの名前もあって誇らしいです。脇坂氏は「カルセッリ」(回転木馬)、「ブーブー」(車)、「クミセヴァ」(エコー)などをデザイン。「カルセッリ」「ブーブー」などは色がポップで鮮やかでセンスが日本人離れしています。石本氏は「マイセマ」(風景)、「タイガ」(シベリアの針葉樹林)など、こちらはワビサビを感じさせるデザインがファブリックになじんでいます。偉大なる先人のおかげで、日本人が今マリメッコの入社試験とか受けたら通りやすいかもしれません。知ったのが遅すぎました……。

 プリントにはそれぞれ名前がついていて、それが長年愛されている理由の一つなのでしょう。「カンガストゥス」(蜃気楼)、「クミセヴァ」(エコー)、「シルッキクイッカ」(カンムリカイツブリ)、「アアルニ」(宝物)、「イソ カルフ」(おおぐま座)、「イソ スオム」(大きいうろこ)などいちいち詩的です。これらのプリントの名称を覚えるとともにスウェーデン語まで学べるという……。カンムリカイツブリなんて覚えても使う機会なさそうですが。とりあえず「イソ」が「大きい」という意味だということは学べました。柄から名前を想像したり、スウェーデンの子どもにとって知育の役目も果たしていそうです。自宅のカーテンと同じ柄を発見しテンションが上がりました(しかし10年ほど前に買った時は北欧価格で窓4つ分70万円くらいしましたが……)。


 

 ファブリックのイメージが強いですが、マリメッコではドレスなど服も多数作っています。1950年代、まだ女性はコルセットを着用していた時代にマリメッコでは女性の身体を解放するようなデザインを発表しました。記事はコットンで、基本、ゆったりしたデザインのドレスです。赤と紫とか、緑にピンクとかパンチのきいた色づかいで、ほっこりしすぎるのを防いでいます。愛用していたジャクリーン・ケネディの写真なども展示。マリメッコを着るだけで、柔軟で自由な感覚の女性に見えて魅力アップ。服を買わずとも、柄の名前の一つでも覚えれば、マリメッコのお店に行った時に「ああ、このプリントはヘトキアね」なんて訳知り顔で言えそうです。北欧初心者から一段階、進めたような気になれました。

マリメッコ展
期間:~2017年2月12日(日)
時間:10:00〜19:00(毎週金・土曜日は21;00・入館は閉館の30分前まで)
   ※12月31日(土)を除く
場所:Bunkamura ザ・ミュージアム
   東京都渋谷区道玄坂2-24-1
http://marimekko-exhibition.jp/

辛酸なめ子プロフィール画像
辛酸なめ子

漫画家、コラムニスト。埼玉県出身、武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。アイドル観察からスピリチュアルまで幅広く取材し、執筆。新刊は『辛酸なめ子の世界恋愛文学全集』(祥伝社文庫)『タピオカミルクティーで死にかけた土曜日の午後 40代女子叫んでもいいですか 』(PHP研究所)『大人のコミュニケーション術 渡る世間は罠だらけ』(光文社新書)『妙齢美容修業』(講談社文庫)『辛酸なめ子の現代社会学』(幻冬舎文庫)。Twitterは@godblessnamekoです。

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