嵐・大野智のアート活動の集大成となる展示『FREESTYLE 2020 大野智 作品展』が六本木ヒルズ展望台東京シティビューで開催されています。5年ぶりで3度目となる個展。チケットは即完売していたので、内覧会にお邪魔させていただきました。
今まで断片的にしか拝見していなかった大野の作品。今回、新作旧作合わせた絵画は60点以上、さらに立体作品130点、写真10点というすごいボリュームを目の当たりにして、嵐として活動するなか、どこにこんな時間とエネルギーがあったのかと驚かされました。作品のクオリティも素晴らしくて、アイドルが芸術活動をされているというより、芸術家がアイドルになった、というべきかもしれないと感じました。チケット完売で鑑賞できない人が多いのがもったいないくらいです。
会場入り口では大野の「ご覧あれ~」という一言が描かれたキャンバスが出迎えてくれます。広いスペースには東京の海抜250メートルの景色を背景に、巨大なオブジェが回転していました。「グリーンヘッド」というタイトルで、上を向いて楽しそうな表情の男性の頭部が台座の上で回転。創作活動をしている時の、多幸感が高まっている状態を表現しているのでしょうか? 窓際には、嵐のニューシングル『カイト』のジャケットに使用された作品のバナーが下がっていました。さっそく大野ワールドに引き込まれます。
エントランスの周辺には、さらに大量の「ヘッドフィギュア」が展示。数えると100体はありました。精巧にできていて、どれも魂が宿っているかのように表情豊かで、「グリーンヘッド」と同様にみんな楽しそうです。創作活動は苦しむのではなく、楽しんで良いということを大野の作品から教えられます。
芸術家としてのまぎれもない感性を感じさせたのは、少女の顔を描いた「みっちゃん」という油絵作品。2015年の『FREE STYLE II』で展示された作品です。顔の陰影の絶妙な色合いは常人には出せません。少女の瞳の中に輝きが宿っていて、目が合うと立ち止まって見入ってしまいます。
そして新作の「ジャニーさん」「巨大細密画」も全然違う作風ですが、大野の才能が凝縮されていました。リリース資料によると、周りに「ジャニーさんを描いてみたら?」と勧められて当初は躊躇されたそうですが、試行錯誤して制作中、「十数色入れたら……いきなり"見え"て。そこからは、もう……楽しくなったね」と本人は語っていたそうです。見えた、というかジャニーさんの魂とつながって交信している感じです。色の塗り方が、幾何学的なのに曲線的という、ジャニーさんの鬼才ぶりが絵からほとばしっているような作品。絵の前にいると、感度が高い人は「You……がんばったね」とか霊言が聞こえてくるかもしれません。
「巨大細密画」は、モチーフを一つ一つ詳細に見ていると時間があっという間に経ってしまいます。手抜きや妥協を感じさせない線に、大野の誠実な人柄が表れているようです。民族的でもあり宇宙的でもある、時空を超越した絵で、絵の中にはフクロウや時計、お城、ガイコツ、花、宇宙人などが描かれていました。地球の今の状況について、大野が地球人代表として宇宙人に知らせているようなメッセージ性を感じました。UFOも描き込まれています。大野は宇宙と交信して創作活動しているのでは、と改めて思わされました。だからこそ、都心で最も宇宙に近い展望台での個展なのでしょう。
これらの展示を観て感じたのは、もし芸術の神が存在するのなら、影響力の強い存在を選んで降りてくるのでは?ということです。芸能人に精力的な創作活動をしている人が多い理由はそこにあるのかもしれません。ジャニーズファンの方々の中で感化されて芸術家になる人が出てくる可能性もあります。また、大野の活動によって突き付けられるのは、「忙しいのは言い訳にならない」ということ。今仕事が忙しいから、それが過ぎたら……を理由に、先延ばしにしていることがあったり、やりたい表現活動があっても老後にやればいいか、と思っている現代人(私を含めて)に対して、激務なのにここまでやり切った大野が投げかけているメッセージを真摯に受け止めたいです。