今回の展示ではじめて上野リチを知った不勉強な筆者で恐縮ですが、三菱一号館美術館での「上野リチ ウィーンからきたデザイン・ファンタジー展」の会場に入った瞬間、その世界観に心を掴まれました。平日の夕方、多くの女性客でかなり混雑していて、人気を実感。
名字が上野さんですが、上野リチはウィーン生まれで本名はフェリーツェ・リックス。建築家の上野伊三郎と結婚したことで上野姓になります。ウィーンと京都を行き来しながら、テキスタイルやプロダクトデザインを多岐に渡って手がけました。今回開催されたのは彼女の活動を包括する回顧展です。
ウィーンの裕福なユダヤ系実業家の家に生まれたリチ。少女時代の写真を見ると質の良い服と靴にパラソルを持った完璧なファッションで、やはり裕福でいいものに囲まれた環境がセンスを育むのでは?と思わされます。学校へは二頭立ての馬車で通い、朝食はホテルのレストランで食べていたというのでかなりのお嬢様です。
19歳でウィーン工芸学校に入学。在学時からファッション展に出品したりして頭角を現します。卒業後は工房のデザイナーだった教授に声をかけられ、当時アート系の学生の憧れだったウィーン工房に入ります。
ウィーン工芸学校の授業の資料も展示されていました。「自然物および日用品のデッサン授業法」では、ロブスターを、赤と黒のコントラストで描いたバージョン、点描バージョン、平面的なタッチ、と数パターンで展開していて、生徒の表現の可能性を広げる授業法だと感じ入りました。
「上野リチ ウィーンから来たデザイン・ファンタジー展」
期間:~ 5⽉15⽇(⽇)*展⽰替えあり
時間:10:00~18:00 (入館は閉館30分前まで)
(祝⽇を除く⾦曜と会期最終週平⽇、第2⽔曜⽇は21:00まで)
休:月曜日 ※ただし4⽉25⽇、5⽉2⽇、5⽉9⽇は開館
※開催日時などにつきましては、新型コロナウイルス感染症の状況により変更の可能性もあるので、公式HPなどでチェックしてください。
会場:三菱一号館美術館
東京都千代田区丸の内2-6-2
https://mimt.jp/lizzi/
漫画家、コラムニスト。埼玉県出身、武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデ ザイン専攻卒業。アートやアイドル観察からスピリチュアルまで幅広く取材し、執筆。主な著作は『江戸時代のオタクファイル』(淡交社)『女子校礼讃 』(中央公論新社)『スピリチュアル系のトリセツ』(平凡社)など多数。Twitterは@godblessnamekoです。


