東京の中心で【ヒグチユウコ】のサーカスに没入できる展示 #85

もはや同時代に生まれたことを感謝したくなるような『ヒグチユウコ展 CIRCUS FINAL END』が森アーツセンターギャラリーにて開催。2019年から全国9会場を巡回し、最初は作品数が約500点だったのが、各巡回先で描きおろされた作品などが加わって約1000点に倍増。ヒグチユウコが描く不思議な生き物たちがサーカスの団員で、全国を回っているうちメンバーが増員していったような……。会場では、そんなヒグチサーカスのメンバーたちと戯れることができます。

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時代を超越している博物画タッチの作品。グレースケールの作品が雰囲気出ています。

画家で絵本作家のヒグチユウコは、絵本『せかいいちのねこ』『ギュスターヴくん』『ラブレター』ほか、多くの著書を出版し、素敵なグッズを販売。GUCCIとのクリエイションも行なっています。画力の高さとクオリティ、量、個性、全てにおいてハイレベルで、膨大な作品数に圧倒されます。いったいいつ寝ているのかと思うほどの仕事量。もちろん手抜きはなく、葉っぱ一枚、猫の被毛一本にいたるまで描き込まれ、細部まで神経が行き届いています。

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猫やひとつめちゃんが登場する壁紙も見逃せません。細かい絵を拡大バージョンで鑑賞できます。
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ブリューゲルへのオマージュ作品も、よく見るとかわいいキャラがいて癒されます。

ブリューゲルの「バベルの塔」や、ヒエロニムス・ボスへのオマージュとして描かれた作品も展示。ヒグチユウコの画力や精密さは15世紀のレジェンド画家たちに匹敵するレベルでした。彼女の筆にかかったら、なんでも再現できるし、どんな風景も可視化されます。ブリューゲルの版画「大きな魚は小さな魚を食う」は、元の絵に描かれていた人間の代わりにギュスターヴくんが登場。不思議となじんでいました。人間の罪と罰を描いた絵画も、ヒグチユウコの繊細なグレースケールタッチで描かれると、優しく罪の意識を包み込んでくれるようです。

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ヒグチユウコがポケモンのイーブイとその進化系を描いたシリーズ。イーブイたちの新たな魅力を発見。

オリジナルの作品では、白い体に大きな目の「ひとつめ族」、顔がタコで手はヘビ、足が猫の「ギュスターヴくん」など、不思議なキャラが頻出。博物画っぽい細密なタッチに引き込まれます。世界観に説得力をもたらすのはやはり彼女のゆるぎない画力。幻想的な生き物もかつて本当に存在していたかのように思えてきます。

ディズニーやポケモンとのコラボの作品を見ると、メジャーなキャラも彼女の世界に引き入れてしまう引力を感じます。さらに引き込まれるのはサーカスのような装飾の赤い壁の展示ルーム。中心にはぬいぐるみ作家の今井昌代さんとの共作の、カカオカーに乗ったレーシングチームのぬいぐるみたちが。そして壁じゅうにはたくさんの作品が展示され、見入っていたらあっという間に時間が経過。キャラたちが脳内サーカスを展開しそうな楽しいコーナーです。とにかく作品数が多くて、ヒグチユウコさん働きすぎでは?と勝手に心配してしまいますが、ご自身が描くキャラたちに励まされて創作しているのでしょうか。世界に没入して描いているので、その間は疲れも感じないのかもしれません。

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『いらないねこ』の原画コーナー。けなげな猫の姿に、絵だけでも泣けてくる感じが……。  

『ふたりのねこ』『せかいいちのねこ』『いらないねこ』などの猫の絵本シリーズの原画は、文字が入っていなくても、猫の絵だけでも伝わってくる情緒があります。猫好きなら絵を見ただけでも泣けそうです。夢野久作が綴った短編『きのこ会議』の挿絵もシュールでした。時代を超えた夢の共演です。

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所せましと展示された作品の数々。約1000点のすごさを実感させられます。

貴重な創作風景を収めた動画も流れていました。左から描き込んでいって、紙が汚れないようにクリアファイルを手の下に敷く、といった参考になるテクニックが。また、絵の描き方をご自身が解説している作品もありました。「色はまぜすぎない」「白いところは紙の色をそのままつかう」「一色を何度も重ねて塗ると単調になりにくい」といったテクニックは、絵が好きな人に参考になりそうです。ヒグチユウコ×ホルベイン コラボの水彩絵の具も展示されていて、絵の具のパッケージや巻き紙に素敵な絵が……。圧倒的な才能を前に描く前から断念してしまう人、逆にモチベーションが高まる人に分かれそうです。

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作品が展示されている和室コーナーも。見にきた人を楽しませる趣向が凝らされています。
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映画のポスターのイラストの仕事コーナー。安定のデッサン力です。
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GUCCIとのコラボのキッズ用Tシャツはグローバルに受け入れられそうです。

GUCCIとのコラボ作品やショップコーナーで物欲が高まったあと、カフェのコラボメニューをチェック。期間中、展覧会場と同じフロアに「CANTEEN GUSTAVE by THE SUN & THE MOON」がオープン。「ボリスのツナ入りプッタネスカ」「ひとつめちゃんのタコライス」「ニャンコとオカヒトデのはちみつレモンパンケーキ」など、なんとお皿付きで4000円台でした。家でこのお皿で食事すればいつもの料理にも深みが出そうです。

Yuko Higuchi×GUCCI公式サイト>

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 「CANTEEN GUSTAVE by THE SUN & THE MOON」のコラボメニュー。ひとつめちゃんがライスに……。
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色鮮やかな作品が多いサーカスの展示ルーム。人物画は岡山会場の描きおろし作品です。

視覚や味覚、嗅覚など、五感からヒグチユウコを吸収できる展示。子どもの頃に見たサーカスの思い出のように、「ヒグチユウコ展 CIRCUS FINAL END」の記憶は生涯海馬に刻まれる……そんな密度の濃い体験ができます。幻想に浸るとともに、ヒグチユウコのあまりにもすごい仕事量を見て、現実に戻って仕事しなければと鼓舞されるという、モチベーションup効果もありました。

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奥行きのある作品に吸い込まれる感覚が。ボリスの背に乗るギュスターヴは異世界にワープしそうです。

ヒグチユウコ展 CIRCUS FINAL END 

期間:~2023年4月10 日(月)
時間:10:00~18:00(入館は閉館30分前まで。⾦・土曜は20:00まで)
休:無休

会場:森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52F)
東京都港区六本木6-10-1 
https://higuchiyuko-circus.jp/

※開催日時などにつきましては、状況により変更の可能性もあるので、公式HPなどでチェックしてください。

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