1920年代、のちの近代建築の巨匠ル・コルビュジエは、気鋭の家具デザイナーとして活躍していたアイリーン・グレイに出会う。彼女は恋人の建築家で評論家でもあるジャン・パドヴィッチとコンビを組んで、建築デビュー作である海辺のヴィラ「E.1027」を手掛けた。その家はル・コルビュジエが提唱してきた近代建築の5原則を具現化し、モダニズムの記念碑といえる完成度の高い傑作だった。出会った当初はアイリーンに惹かれ絶賛していたル・コルビュジエだったが、称賛の思いは徐々に嫉妬へと変化していく。
近代建築の巨匠として知られるル・コルビュジエといえば、昨年、彼が手掛けた上野の国立西洋美術館が世界文化遺産に登録されたことが記憶に新しい。多くの人がコルビュジエを憧れと尊敬の眼差しで見つめているが、彼には生涯で唯一、その才能を羨んだと言われる女性がいた。アイルランド出身のデザイナーで建築家のアイリーン・グレイだ。2009年にクリスティーズで行われた『イヴ・サンローラン&ピエール・ベルジェ・コレクション 世紀のオークション』で、史上最高額(約28億円)で落札された椅子を手掛けたことでも知られている。
1920年代、のちに近代建築の巨匠と呼ばれるル・コルビュジエは、気鋭の家具デザイナーとして活躍していたアイリーン・グレイに出会う。彼女は恋人の建築家で評論家でもあるジャン・パドヴィッチとコンビを組んで、建築デビュー作である海辺のヴィラ「E.1027」を手掛けていた。南フランスのカップ・マルタンに完成したその家は、ル・コルビュジエが提唱してきた近代建築の5原則を具現化し、モダニズムの記念碑といえる完成度の高い傑作だった。出会った当初はアイリーンに惹かれ絶賛していたル・コルビュジエだったが、称賛の思いは徐々に嫉妬へと変化していき……。
アイリーンの手掛けた彼女の別荘「E.1027」は、モダニズム建築史上に残る傑作とされるが、実は長い間、ル・コルビュジエの作とされ、アイリーンの存在は歴史の影に覆い隠されてきた。そこにはル・コルビュジエのアイリーンへの嫉妬と欲望が絡まり合う愛憎ドラマが隠されていたのだった!
今もなお、多くの人たちに影響を与える2人の天才建築家の人生を、美しい映像で綴った珠玉作。実際の建築や家具もたくさん登場するので物語と共に楽しんで。
『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』
監督・脚本:メアリー・マクガキアン
出演:オーラ・ブラディ、ヴァンサン・ベレーズ、ドミニク・ピノン、アラニス・モリセット他
2017年10月14日(土)よりBunkamuraル・シネマ他全国順次公開
http://www.transformer.co.jp/m/lecorbusier.eileen/
※アイリーン・
text:Misato Kikuchi