2010年に他界したアレキサンダー・マックイーンのドキュメンタリー映画『マックイーン:モードの反逆児』が、2019年4月5日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国の劇場で公開されている。デヴィッド・ボウイやレディー・ガガ、ビョークらを魅了した天才デザイナーの人生をエモーショナルに描き出す、必見の作品だ。
2010年に亡くなった天才デザイナー、アレキサンダー・マックイーンのドキュメンタリー映画『マックイーン:モードの反逆児』が、2019年4月5日(金)より全国の劇場で公開されている。
前衛的で独創的なクリエイションで見る者を圧倒し、天才の名を欲しいままにしたマックイーン。そんな彼は輝かしい成功の一方で苦しみ、富と名声の絶頂期にあった2010年、自ら命を絶った。
マックイーンは1969年にロンドンの労働者階級の街、イーストエンドで6人兄弟の末っ子として誕生。16歳で学校を卒業した後、母の勧めでサヴィル・ロウのテーラーで働き始め、服作りに目覚めた彼は、演劇のコスチュームを製作するエンジェルズ&バーマンズ、日本人デザイナーのコージタツノ、それにミラノのロメオ・ジリでの勤務を経て、セントラル・セント・マーチンズへ。その卒業コレクションを英国モード界を代表する名物スタイルエディター、イザベラ・ブロウに認められた彼は、1993年に失業保険を資金にしてデビュー・コレクションを発表。以来、2001年にパリ・コレクションに移るまでロンドン・コレクションに参加し続ける。
激しい賛否両論を巻き起こすようなショーで一躍時代の寵児となったマックイーンは、1996年に弱冠27歳でパリの名門ジバンシィのデザイナーに抜擢。研ぎ澄まされる圧倒的なクリエイションと、成功の重圧。彼の人生は波乱に満ちたものとなっていく。
2000年にはグッチ・グループの傘下に入り、ジバンシィと決別。その後はロンドンを拠点にしながら自らのコレクションを先鋭化させつつ、さまざまなブランドとのコラボを成功させたり、セカンドラインのマックキューを立ち上げたりと、精力的に活動を展開したマックイーン。そんな彼は絶頂期の2010年、自ら命を絶つこととなる。
天賦の才に恵まれながら短く燃え尽きたマックイーンの光と影を見事に描き出したのは、『オネーギンの恋文』(1999)の脚本や『キンキーブーツ』(2005)の製作などを手がけてきたピーター・エテッドギーと、数々のCMやミュージックビデオ、ファッション映画などを手がけたイアン・ボノート。
彼らは姉のジャネットや、その息子でテキスタイルデザイナーのゲーリー、イザベラの夫のデトマー・ブロウ、アシスタントだったセバスチャン・ポンス、それに彼の恋人たちなど、身近な人々との間に粘り強く信頼関係を築き、貴重なインタビューに成功。これまで所在不明だったという本人のインタビュー映像やプライベート映像などもふんだんに使用している。
観る者の胸を打つ音楽は、マックイーンと親交のあったマイケル・ナイマンのもの。マックイーンの独創性に満ちた驚異的なショーの映像を、音楽がさらにドラマティックな芸術として昇華させている。なかでも2006年にマックイーンに依頼されて書いたという美しいピアノ曲「Lee's Sarabande: Dealing for the Sarabande」には感涙必至。映像、音楽、ストーリーが見事に溶け合ったファッション・ドキュメンタリーの新たな金字塔、ぜひ映画館で味わってみてほしい。
『マックイーン:モードの反逆児』
2018年/イギリス/英語/カラー/ヴィスタサイズ/1時間51分
監督/ピーター・エテッドギー、イアン・ボノート
出演/リー・アレキサンダー・マックイーン、イザベラ・ブロウ、トム・フォードほか
音楽/マイケル・ナイマン
© Salon Galahad Ltd 2018
http://mcqueen-movie.jp/
text : Shiyo Yamashita