アイロニカルで不気味な世界観と、繊細なモノクロームの線画で知られるアメリカの絵本作家、エドワード・ゴーリーの展覧会「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密」が、東京・練馬区立美術館で開催中。マックス・エルンストやティム・バートンも魅了した、個性的で優雅な作品世界に浸りたい!
アイロニカルかつ不気味な世界観と、繊細なモノクロームの線画で多くのファンを持つアメリカの絵本作家、エドワード・ゴーリーの展覧会「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密」が、東京・練馬区立美術館で開催中だ。
『不幸な子供』『うろんな客』などの絵本の邦訳版が2000年代に入って次々と出版されたことにより、日本での人気も高まっているゴーリーは、1925年シカゴ生まれ。少年時代より読書好きで天才少年として知られていた彼は、17歳で徴兵されると、その保留期間の間に名門シカゴ・アート・インスティチュートで美術を学ぶ。その後、従軍により一時学業を中断したものの、終戦後にはハーバード大学でフランス文学を専攻。ハーバード時代に美術や文学のみならず、歌舞伎やバレエなどの舞台美術や、地域の芸術など、さまざまな分野に興味の対象を広げ、造詣を深めたという。
彼の作品が最初に出版物に登場したのは’50年のこと。’53年には大手出版社ダブルデイの専属アーティストとして、ペーパーバック部門でカバーや挿絵を手がけるように。同年、『弦のないハープ または、イアブラス氏小説を書く。』で絵本作家としてデビュー。グラフィックノベルの先駆けとも評されるこの作品は、『第三の男』などで知られるイギリスの小説家グレアム・グリーンらによって絶賛され、ゴーリーは一躍注目の存在に。その後、アーティストとしてルッキング・グラス・ライブラリー社に移籍するが、’62年に独立している。
’72年には最初のアンソロジー本『Amphigorey』が出版され、ニューヨーク・タイムズのブックレビューにおいて「今年注目すべき5冊のアートブック」に選ばれるなど、大きな評判に。’78年にはブロードウェイの舞台『ドラキュラ』のセットと衣裳デザインを担当し、トニー賞を受賞している。その翌年の’79年にゴーリーがマサチューセッツ州ケープコッドに購入した築200年の館は、彼が2000年に亡くなった後、「ザ・エドワード・ゴーリー・ハウス」として一般公開。現在も世界中からゴーリーのファンが訪れている。
彼の作品の特徴は、なんといってもモノクロームの繊細な線画と、独特の韻を踏んだ文章。そして何より、不条理で時に残酷な世界観にある。その唯一無二のゴーリー・ワールドに魅了された人物には、シュルレアリストのマックス・エルンストや、映画監督のティム・バートンなども。ゴーリー自身が幅広いジャンルの仕事を行っていたように、彼の芸術は様々な分野のアーティストたちに強い影響を与えている。
本展は世界巡回の原画展の一環で、2016年より日本全国各地で巡回。原画に資料や書籍などを加えた約350点からゴーリーの世界観を紹介するというもの。ゴーリーの絵本作品をもっと楽しむためにも、ぜひ足を運んでみて。
エドワード・ゴーリーの優雅な秘密
会期:〜2019年11月24日(日)
会場:練馬区立美術館(東京都練馬区貫井1-36-16)
時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)
休館日:月曜(祝日・休日は開館、 翌火曜は休館)
料金:一般¥1,000、高校・大学生および65~74歳¥800、中学生以下および75歳以上無料 ※要年齢確認証
※障害者手帳等持参の場合:一般¥500、高校・大学生¥400(介添者1名まで障害者料金で観覧可能)、ぐるっとパス利用者:¥500(年齢などによる割引の適用外)
03-3577-1821
https://www.neribun.or.jp/museum.html
text : Shiyo Yamashita