1950〜80年代にファッション・フォトグラファーとして活躍、2006年に発表された写真集『Early Color』が世界的に反響を呼んだことで80代で実質的な再デビューを飾った写真家、ソール・ライター。その回顧展が2017年に続きBunkamura ザ・ミュージアムにて開催される。新たに発掘された未発表作品などは必見!
2017年に開催された日本初の回顧展が大きな話題を呼んだ写真家、ソール・ライターの展覧会「ニューヨークが生んだ伝説の写真家 永遠のソール・ライター」が、前回と同じBunkamura ザ・ミュージアムにて開催される。彼が残した膨大な作品の中から、新たに発掘された未発表作品や資料などを通じて、その世界を味わう貴重な機会となりそうだ。
ライターは1950年代よりニューヨークを拠点にファッション・フォトグラファーとして活躍。ただ、80年代に商業写真の世界から退いてからは、表舞台から姿を消していた。そんな彼が再び注目を集めるようになったきっかけは、2006年にドイツの出版社、シュタイデルより発表された『Early Color』。この写真集が世界的に反響を呼んだことで、ライターは80代にして写真界で第2のデビューを飾ることとなった。
2013年に89歳で亡くなった後、彼のアシスタントを務めていたマーギット・アーブらがソール・ライター財団を設立。以来、彼らはライターがニューヨークのイースト・ヴィレッジのアパートに残した膨大な未整理作品を含む、ライター作品の全アーカイブ構築に取り組んできた。そこには写真作品だけでなく、絵画作品や、ライター個人にまつわる資料も含まれ、全作品のアーカイブ化には少なくともあと10年はかかるのだという。
本展の第1部では『Early Color』によって、“カラー写真のパイオニア”と呼ばれるようになったライターの世界初公開となるカラー作品をはじめ、前回の展覧会では紹介できなかったモノクロ及びカラーの代表作、多数の未発表作品など200点以上を展示する。これまでほとんど紹介されてこなかった、2000年代になってからデジタルカメラで撮影されたカラー写真なども登場するので必見だ。
一方、第2部はソール・ライター財団のプロジェクトを通じて彼の実像に迫るものに。2018年8月にスタートした、ライターが残した数万点に及ぶカラー・スライドのうち、特に1940年代から60年代に撮影されたと思われる作品に絞って2年がかりでデータベース化するというプロジェクトにおいて既にデータ化された未発表作品が世界で初めて公開されるほか、家族や恋人、知人、それに雌猫などの“女性たち”を撮影し小さなサイズに焼き付けた、ライターが“スニペット”と呼んでいた写真の数々がまとめて公開される。
ほかにもセルフ・ポートレートや、写真を始めた頃から最愛の被写体であった妹のデボラ、『Harper’s BAZAAR』のモデルとして知り合い、半世紀以上にわたってライターのパートナーであったソームズ・バントリーのポートレートも。バントリーによる絵画数点も世界初公開される。財団のリサーチによって新たに発掘されたスケッチブックや、家族のアルバム写真、愛猫の写真など、ライターの写真作品の背景にあるものがわかる展示も充実。前回の展覧会や、日本では2015年に公開されたドキュメンタリー映画『写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと』を観た人はもちろん、これまでライターのことを知らなかった人も、是非足を運んでみてほしい。
「ニューヨークが生んだ伝説の写真家 永遠のソール・ライター」
会期:2020年1月9日(木)〜3月8日(日)
休館日:1月21日(火)、2月18日(火)
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム(東京都渋谷区道玄坂2-24-1 B1F)
時間:日曜〜木曜 10:00〜18:00/金曜・土曜 10:00〜21:00 ※入館は閉館30分前まで
入館料:一般 ¥1,500、大学・高校生 ¥1,000、 中学・小学生 ¥700
03-5777-8600(ハローダイヤル)
https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/20_saulleiter/
text : Shiyo Yamashita