アートディレクター、デザイナーとして、世界を舞台に多岐にわたる分野で活躍した石岡瑛子の世界初の大規模回顧展が現在、東京都現代美術館にて開催中だ。時代を切り拓いた1960〜80年代のグラフィックデザイナーとしての仕事から、海外に拠点を移して以降の映画や演劇、オリンピックのプロジェクトまで、圧倒的な個性と情熱が詰まった仕事の数々を総覧できる。
世界を舞台に、常に新しい時代を切り拓き続けたアートディレクター、デザイナーの石岡瑛子。彼女の半世紀にわたる多彩な仕事の数々を振り返る世界初の大規模回顧展が、現在、東京都現代美術館で開催されている。
石岡は1938年東京生まれ。父親は日本におけるグラフィックデザイナーの先駆け、石岡とみ緒で、妹の石岡怜子もまたグラフィックデザイナー。後者は本展のアドバイザリー・ボードの一員を務めるとともに、カタログのデザインにも携わっている。
東京藝術大学在学中から頭角を現した石岡は、卒業後、「お茶汲みではなく、男性と同じ待遇を」との主張が受け入れられ、資生堂に入社。本展の第1部「Timeless:時代をデザインする」では、そんな石岡が1960〜80年代にかけて手掛けた、資生堂、角川書店、パルコなどの広告キャンペーンや、角川書店『野性時代』の表紙などを中心に展示。時代そのものをデザインし、さらにその先を見据えて走り続けた彼女のグラフィックデザイン、エディトリアルデザイン、そしてプロダクトデザインは、今見ても新鮮なものばかりだ。
続く第2部「Fearless:出会いをデザインする」では、1980年代半ば以降、日本に飽き足らず世界へと活動の場を広げ、グラフィックデザインからアートディレクション、衣装デザイン、さらにはプロダクションデザインへと表現領域をも広げていった彼女の、1990年代までの仕事を紹介。グラミー賞の最優秀レコーディング・パッケージも受賞したマイルス・デイヴィスのアルバム『TUTU』のアートワークができるまでのさまざまな資料や、プロダクションデザインを手掛けて第38回カンヌ国際映画祭の最優秀芸術貢献賞を受賞したポール・シュレイダー監督作品『ミシマ―ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ』の作中で使用された金閣寺のセット、アカデミー賞の衣装デザイン賞を受賞したフランシス・フォード・コッポラ監督作品『ドラキュラ』の華やかな衣装などが並ぶ。
さらに第3部「Borderless:未知をデザインする」で紹介されるのは、オペラや映画、サーカスのコスチュームや、オリンピックのユニフォームを通して人間の可能性をどこまでも拡張していくような、2000年代以降の仕事の数々。ターセム・シン監督による『ザ・セル』『落下の王国』、そして石岡の最後の仕事となった『白雪姫と鏡の女王』の3つの映画作品の衣装をはじめ、シルク・ドゥ・ソレイユ『ヴァレカイ』の衣装や、オランダ国立オペラ『ニーベルングの指環』の衣装、ソルトレークシティオリンピックの際の各国選手のための競技用ウエアやスタッフ用ウエア、そして北京オリンピックの開会式の衣装まで、未知の視覚領域に恐れず挑戦しデザインしていく彼女の仕事に圧倒される。
石岡の力強い作品の魅力を伝えるべく、空間の作り方や音声や映像の使い方などにも工夫を凝らした、あまりにも濃厚な回顧展。ぜひ時間に余裕を持って訪れることをおすすめしたい。
「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」
会期:〜2021年2月14日(日)
会場:東京都現代美術館 企画展示室 1F/地下2F(東京都江東区三好4-1-1 木場公園内)
休館日:月曜(2021年1月11日は開館)、12月28日(月)〜2021年1月1日(金・祝)、1月12日(火)
開館時間:10:00〜18:00(展示室入場は閉館30分前まで)
観覧料:一般 ¥1,800/大学生・専門学校生・65歳以上 ¥1,300/中学生・高校生 ¥700/小学生以下無料
03-5245-4111/ハローダイヤル 03-5777-8600(8:00〜22:00 年中無休)
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/eiko-ishioka/
text : Shiyo Yamashita











