オークションハウスのフィリップスは、実業家・アートコレクターの前澤友作の所有するジャン=ミシェル・バスキアの超大作「Untitled」(1982年)を、2022年5月18日(水)に開催される20世紀・コンテンポラリーアート部門のイブニングセールに出品することを発表。落札価格は7,000万ドル(約80億円)を上回ると予想されている。
オークションハウスのフィリップスは、実業家・アートコレクターの前澤友作の所有するジャン=ミシェル・バスキアの超大作「Untitled」(1982年)を、2022年5月18日(水)にニューヨークのオークションシーズンの幕開けとなる、20世紀・コンテンポラリーアート部門のイブニングセールに出品する。落札価格は7,000万ドル(約80億円)を上回るとの予想が。また、この作品の購入については、イーサリアムまたはビットコインの暗号通貨での支払いが認められている。
今回出品される作品は、前澤のコンテンポラリーアートコレクションのうちの一点。売却に際して前澤は「この『Untitled』と過ごした約6年間は、幸せで刺激的な忘れられない時間となりました。アートコレクションとは、自身の成長・変化と共に、常に進化を続け、なるべく多くの人々に共有されるべきものだと信じています。この素晴らしい作品が次の持ち主へと受け継がれ、世界中の人々に楽しんでもらえることを心より願っています。そしてまた、進化を続ける私のアートコレクションを、近い将来完成予定の私の美術館で皆さまにお披露目できることを楽しみにしております」とコメントしている。
1996年に出版されたバスキアのカタログ・レゾネの表紙を飾り、いくつかの回顧展でも目玉作品として紹介されて以来、彼の作品の中で最も象徴的な作品の一つとして知られている。フィリップスのグローバルチェアマンであるシャイエン・ウェストファルは本作について「バスキアのキャリアを振り返ると、1982年はしばしば変曲点であると考えられています。若干21歳、彼の最初のギャラリストのアニーナ・ノセイとの個展を始め、世界各地で6回の個展を開催、大好評を博し、国際的な名声を得るまでに急成長したのです」とコメントしている。
バスキア作品の中でも最大級の、高さ約8フィート・幅16フィート以上というサイズも印象的。この横長のサイズは、バスキアが幼少期にニューヨーク近代美術館で見たパブロ・ピカソの名作「ゲルニカ」から強い影響を受けたことに由来している。本作の中で、短いドレッドヘアのバスキアは悪魔のような姿で描かれており、角から滴る血のように赤い絵の具で表現されているのは、彼自身の激しい怒りだそう。バスキアは富と貧困、内面と外面といった“示唆的な二項対立”をテーマにした作品を繰り返し描いているが、この作品で描かれているのは天国と地獄の二元性への関心だ。
オークションに先立ち、本作はロンドン・ロサンゼルス・台北を回るプレビューツアーへ。その後、フィリップスのニューヨーク本社に展示される予定だ。また、4月9日(土)からはニューヨークはチェルシー地区にあるスターレット=リーハイ・ビルにて、展覧会「Jean-Michel Basquiat: King Pleasure ©」も開催される予定。フィリップスが冠スポンサーを務める本展は、200点を超える未公開の絵画、ドローイング、マルチメディア・プレゼンテーションなどで構成されるもので、会場構成はイギリスの現代建築を代表する建築家のひとりでガーナ出身のデイヴィッド・アジャイが担当する。こちらにもぜひ注目したい。
PHILLIPS
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text : Shiyo Yamashita