ジョージ ナカシマの最初期のデザインのひとつ「ブログレンスツール」をはじめとした特別仕様のナカシマの家具が一堂に会する展覧会が、2022年3月26日(土)〜4月3日(日)、YAECAの運営する鎌倉・ink galleryにて開催される。会期中は田園調布にあるフランス菓子店「SAVEUR」のケーキなども会場にて楽しめる。
ジョージ ナカシマの最初期のデザインのひとつで、これまで一度も製品化されることがなかった「ブログレンスツール」の初復刻版をはじめとした特別仕様のナカシマの家具が一堂に。2022年3月26日(土)〜4月3日(日)、YAECAの運営する鎌倉・ink galleryにて「ジョージ ナカシマ展」が開催される。
会場となるink galleryの建物は、昭和を代表する建築家のひとりである吉村順三が設計、1974年に竣工したもの。ただ、施主の意向もあり吉村作品であることは公にされてこなかった、いわば幻の住宅だった。時と共に傷んでしまったこの家を購入したYAECAの服部哲弘は、建築家の中村好文とともに、吉村の意図した姿に戻すよう誠実な改修を施したのだという。
吉村はナカシマが1934年に来日した際に入所したアントニン・レーモンド事務所の同僚であり、ナカシマに多大な影響を与えた人物としても知られている。ナカシマは吉村に教えられて日本の古典文学に触れ、歴史的な神社仏閣や民家まで、日本の多彩な建築を共に見て回ることで、日本文化や精神を吸収した。
本展のキュレーターである水澗航 (ENKEL主宰)は、ナカシマの自著『木のこころ』のなかでの吉村についての記述を引用しながら、「『(吉村は)簡素なもののもつ気品と力、建築で発揮される材料それ自体の美しさ、削られたままの白木の優美さ』を教えてくれた。そして『伝統的な、あるいはまた近代的な創造の場合でも、プロポーションというものは僅かな誤差でデザインを完全に駄目にしてしまうこと』を知っていた、と。まさに、後年の吉村の作風を言い当てたような最上の評価であり、この言葉はそのまま、自然の恵みである、素材となる木のこころに誠実に耳を傾け、家具として第二の生命を与えようとした木匠ナカシマの作風とも一致します」と指摘。
両者は後年、吉村が設計したネルソン・ロックフェラーの「ポカンティコヒルの邸宅」(1973年竣工)に、ナカシマが220点以上の家具を製作・納品したりも。ちなみに今回の会場のひとつである茶室の施工を手がけたのは、この邸宅と同じく数寄屋建築の名門・中村外二工務店なのだそうだ。そんなナカシマと吉村について、水澗は「第二次世界大戦が終わり、世界が大量消費社会へと突き進んでいく中でも浮足立つことなく、日本とアメリカで、目の前にある与えられた土地条件や素材に己のすべてで真摯に向き合い、消費社会を突き抜けたような真の『暮らしの豊かさ』を追求しつづけたのです」とも述べている。
本展では、ナカシマの家具が吉村の空間の中に置かれることによって、日本の暮らしに寄り添った、より親密なイメージに変化しているのも見どころのひとつ。会期中は田園調布のフランス菓子店「SAVEUR」のケーキ、YAECAスタッフの手作りによる桜餅、おはぎが楽しめるほか、26日(土)・27日(日)には料理研究家・内田真美のお菓子も登場するので、こちらも合わせてチェックしてほしい。
「ジョージ ナカシマ展」
会期:2022年3月26日(土)〜4月3日(日)
会場:ink gallery(神奈川県鎌倉市鎌倉山1-19-12)
時間:11:00〜18:00
会期中無休・入場無料
0467-31-0088
https://www.instagram.com/yaeca.ikkaku/
text : Shiyo Yamashita