独創的なプリントとカラフルな色使いで人気の、フィンランド生まれのデザインハウス、マリメッコの代表的なデザインを手がけたテキスタイルデザイナー、マイヤ・イソラ。旅を愛し、恋多き女性でもあった彼女のドキュメンタリー『マイヤ・イソラ 旅から生まれるデザイン』が、現在全国公開中だ。
北欧を代表するデザインハウス、マリメッコを代表するデザインの多くを手がけたテキスタイルデザイナー、マイヤ・イソラ。彼女の創作の秘密に迫るドキュメンタリー『マイヤ・イソラ 旅から生まれるデザイン』が、現在全国公開中だ。
マイヤは1949年から87年までの38年間に500以上のデザインをマリメッコに提供した。「Unikko（ウニッコ）」「Kivet（キヴェット）」「Joonas（ヨーナス）」「Melooni（メローニ）」「Maalaisruusu（マーライスルース）」などの大胆かつカラフルな柄は、今なお私たちの暮らしを彩り続けている。本作は、そんなマイヤの類稀な人生を、旅先からの手紙や日記、娘の証言、アーカイブ写真や映像、アニメーションなどで構成した傑作ドキュメンタリーだ。
マイヤは1927年、フィンランド南部リーヒマキ生まれ。1945年に17歳年上の商業芸術家ゲオルグ・レアンデリンと結婚、翌年19歳でクリスティーナを出産するもほどなく離婚、母に娘を預けヘルシンキの芸術大学へ進学。ノルウェー旅行で出合った壺をデザインしたファブリックがマリメッコ創業者のアルミ・ラティアの目に留まったことから、マリメッコ創業前の1949年からデザイナーとしてアルミとの二人三脚をスタートしている。
52年には画家のヤーッコ・ソメルサロと再婚。マイヤはアシスタントとしてヤーッコを支えるも、陰で絵を描き続ける。このヤーッコとも55年に離婚、それ以降は旅する生活がクリエイティブなインスピレーションの源泉に。58年には「装飾シリーズ」でブレイク。59年にはヨルマ・ティッサリと3度目の結婚（70年に離婚）。60年にはジャクリーン・ケネディが購入したドレスを着て雑誌の表紙を飾ったことが話題に。その後の「バロックシリーズ」や「建築シリーズ」など、マイヤの大胆でカラフルなデザインは、マリメッコの海外での成功に大きく貢献した。
64年にはアルミの意に反して花のデザインだけを集めた「花シリーズ」を制作。そのうちのひとつでケシの花をモチーフとした「ウニッコ」はマリメッコのアイコンとなる。マイヤはデザイナーとしてだけでなく、画家としても活躍。2001年3月3日に亡くなるまで絵画の制作に取り組んでいたという。
旅の中での体験や、その中で出会った人々から得たもの、さらには恋愛をもエネルギーに変えて絵を描き、新たなデザインを生み出していったマイヤ。そんな彼女の人生を、「マイヤ・イソラのファブリックは自分の人生の一部」と語る新鋭監督、レーナ・キルぺライネンが瑞々しく描き出している。面白いのは、マイヤの人生が「自分語り」の形で綴られていくこと。彼女の声はフィンランドの声優、パイヴィ・ヤルヴィネンが担当している。
激動の戦後を生き、何にも縛られることなく表現活動を続けたマイヤの人生を形成した出来事に基づき、アーカイブ資料と新しいドキュメンタリー映像の組み合わせで構成されたこの映画。観ればきっと、今の時代を生き抜くためのヒントや勇気がもらえるはず！
『マイヤ・イソラ 旅から生まれるデザイン』
監督・撮影：レーナ・キルペライネン／出演：マイヤ・イソラ、クリスティーナ・イソラ、エンマ・イソラ
2021年／フィンランド・ドイツ／フィンランド語／97分／カラー・モノクロ／ビスタ／5.1ch
ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開中
http://maija-isola.kinologue.com/
