女の子のなりたいイメージを具現化。伝説のファッション・イラストレーター、森本美由紀の展覧会が弥生美術館にて開催中

無駄のないシンプルな線で女の子のなりたいイメージを具現化したファッション・イラストレーションで人気を博した森本美由紀の展覧会が、現在、東京・根津の弥生美術館にて開催中だ。お洒落で洗練された世界観を墨と筆を用いた一発勝負で表現した、森本ならではのアートワークの魅力をたっぷり堪能できる、貴重な機会だ。

東京・根津の弥生美術館では現在、「伝説のファッション・イラストレーター 森本美由紀展」を、2023年6月25日(日)までの会期で開催中。無駄のないシンプルな線で女の子のなりたいイメージを具現化した、洗練されたファッション・イラストレーションで人気を博した森本。その作品世界を、たっぷりと堪能できる、貴重な機会だ。

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墨によるアートワーク 1990年代 紙・墨 ©Miyuki Morimoto/森本美由紀 作品保存会

森本は1959年岡山県津山市生まれ。地元の高校を卒業後上京、セツ・モードセミナーに入学し、日本のファッション・イラストレーターの草分け的存在として知られる長沢節のもとで学んだ。在学中にフリーランスのイラストレーターとしてデビューし、1980年代には女性誌を中心にイラストを描き、若い女性の感性を生かした洒落た画風で人気を博した。

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ピチカート・ファイヴのCDのための習作 1997年 紙・墨・マーカー ©Miyuki Morimoto/森本美由紀 作品保存会

1990年代になると画風を変え、1950〜60年代の「VOGUE」のスタイル画家によるイラストの影響を受け、筆と墨を使った独特のドローイングスタイルを確立させた森本。そのスタイリッシュな画風は他ジャンルのクリエイターをも刺激し、ピチカート・ファイヴをはじめとする渋谷系のミュージシャンたちのCDのアートワークも数多く手がけている。

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墨×カラーによるアートワーク 2000年代 紙・墨・マーカー ©Miyuki Morimoto/森本美由紀 作品保存会

2000年代に入ると松屋銀座の広告や文具・雑貨メーカーのマークスやユニクロなどの商品展開にも携わるなど、仕事の幅を広げた森本。フランス版「COSMOPOLITAN」など海外の雑誌にもイラストを提供していたが、2013年に惜しまれながら亡くなった。

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墨によるアートワーク 2000年代 紙・墨 ©Miyuki Morimoto/森本美由紀 作品保存会

2010年に刊行した書籍『森本美由紀 ファッションイラストレーションの描き方 線画をスタイリッシュに描くために』の中で、「私の考えるファッション・イラストレーションは、女の子が服を着ておしゃれをしている絵を描くことで、女の子のなりたいイメージを具現化したもの。 服そのものを見せる絵ではありません。描きたい世界を無駄のないシンプルな線で表現するスタイルを追求しながら、さらにリファインされた普遍的な絵を目指してきました」と述べていた森本。本展に展示された193点に及ぶ原画等からは、そんな彼女のシンプルだけれども奥深い“引き算の美学”を感じとることができる。

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ファッション・ブランド「スプンティーノ」のための作品 2005年 紙・墨・マーカー ©Miyuki Morimoto/森本美由紀 作品保存会

本展では1980年代のカラフルな作品から、筆と墨を使ったドローイングへと移行する過程を追いながら、森本の作品世界の全貌を紹介。2023年5月14日(日)までの前期と5月16日(火)〜6月25日(日)の後期でカラー作品を入れ替えるほか、津山のアトリエから新たに発見された貴重な資料も紹介している。なお、同じ敷地内にある竹久夢二美術館で同時開催中の「竹久夢二 描き文字のデザイン ―大正ロマンのハンドレタリング―」も観覧できるので、こちらもぜひ楽しんで。


「伝説のファッション・イラストレーター 森本美由紀展」
会期:〜2023年6月25日(日) ※5月14日(日)までの前期と5月16日(火)からの後期でカラー作品の展示入れ替えあり
会場:弥生美術館 1〜2階(東京都文京区弥生2-4-3)
開館時間:10:00〜17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜(5月1日は開館)
入館料:一般 ¥1,000、高校・大学生 ¥900、小・中学生 ¥500円 ※竹久夢二美術館も観覧可
問い合わせ:03-3812-0012
https://www.yayoi-yumeji-museum.jp/yayoi/exhibition/now.html

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