フィンランドの偉大な建築家・デザイナー、アルヴァ・アアルトの人生と、その作品をめぐるドキュメンタリー映画『アアルト』が、2023年10月13日(金)より全国で順次公開される。彼の傑作建築を時系列順に追いながら、彼と最初の妻アイノとの関係なども丁寧に描き出した、北欧好き、建築・デザイン好き必見の作品だ。
フィンランドが生んだ巨匠建築家・デザイナーのアルヴァ・アアルトの生誕125周年を記念して、彼の人生とその作品をめぐるドキュメンタリー映画『アアルト』が全国で順次公開される。
アルテックの「スツール60」や、イッタラの「アルヴァ・アアルト コレクション ベース」など、アイコニックなプロダクトでおなじみのアルヴァ・アアルト。建築家としてはフランク・ロイド・ライトやミース・ファン・デル・ローエ、ル・コルビュジエなどと並ぶ巨匠建築家のひとりとして知られ、「パイミオのサナトリウム」や「ヴィープリの図書館」、「マイレア邸」、「ニューヨーク万国博覧会 フィンランド館」といった作品は傑作として建築史に燦然と輝いている。
さて、この映画はそんなアルヴァの作品と人生を、本人の言葉や最初の妻アイノとの往復書簡、関わりのあった建築家や研究者、友人や家族などの発言とともに追っていくもの。中でも建築家のドキュメンタリーとして異色なのが、アルヴァの人となりをアイノ、そして2番目の妻エリッサとの関係をもとに掘り下げているところだ。
子どもの頃、アルヴァが設計した「ロヴァニエミの図書館」に足繁く通い、その建物のもつ魅力の虜になったという監督のヴィルピ・スータリは、“共感と官能を呼び覚ます建築家”とも評される彼の建築の魅力を描きたいと考えつつ、「アルヴァ・アアルトとは何者なのか。人生をともにした二人の妻はどのような人物であったのかを探求したいとも思いました」と述べている。
78年の生涯で、作風をどんどん変化させながら200を超える建物を設計、世界的な成功を収めながらも、公私にわたるパートナーだったアイノの早すぎる死に打ちのめされたアルヴァ。自身も建築家・デザイナー・アートディレクターとしてアルヴァと対等の立場で活躍しながら、女癖の悪いアルヴァに悩まされもしたアイノ。そして、やはり自らも建築・デザインの分野で才能を発揮しつつ、明るくアルヴァを支えたエリッサ。この映画を見ると、これまで写真や製品を通してしか知らなかったアアルトの世界が、生き生きと動き出して見えるような気がするのが不思議だ。
特徴的なカメラワークと音響効果も印象的な、非常にアーティスティックな作りのこの映画は、フィンランドのアカデミー賞とも言われるユッシ賞で音楽賞・編集賞を受賞。ヨーロッパ映画やドキュメンタリー映画に興味のある人はもちろん、建築やモダニズムデザイン、フィンランドに興味のある人も、是非映画館に足を運んでみて。
『アアルト』
監督・脚本:ヴィルピ・スータリ
2020年/フィンランド/103分
2023年10月13日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、UPLINK吉祥寺他、10月28日(土)より東京都写真美術館他、全国順次公開
aaltofilm.com