NFT、メタバース……最近よく耳にするけど、実体がよくわからないデジタル用語。ライフスタイルや、ビジネスシーン、そしてファッションと切り離せないショッピングの概念も進化する? いつか観たSF映画みたいな未来が訪れる日も近い? 大のデジタルガジェット好きとしても知られるモデルの鈴木えみさんが、次なる世界を覗き見する新連載がスタート。 ナビゲーターにはNFTプラットフォームを展開する「HARTi」の代表取締役・吉田勇也さんが登場!
NFTってなんですか? 〜仮想通貨とどう違う?〜
鈴木えみ(以下・E):まずNFTって何ですか?ということろからなんですけど。
吉田勇也(以下・Y):一言でいうと、NFTとは“デジタルデータに一つだけの価値をつけられるもの”ですね。
E:それがブロックチェーンってことですか?
Y:う〜ん、それがまたちょっと違うんですけど。例えば、インターネットとSNSって違うじゃないですか。ブロックチェーンとNFTがまさにその関係って感じですね。インターネットっていう技術の上にSNSがあるのと同じで、ブロックチェーンっていう技術の上にNFTっていうサービスがあるって考え方です。
E:なるほど。
Y:ブロックチェーンの中にはNFTの他にも、対概念でFTなどいろいろなキーワードがあります。NFTは英語でいうと「Non-Fungible Token(ノン ファンジブル トークン)」、FTは「Fungible Token(ファンジブル トークン)」の略ですね。
E:FTは仮想通貨とかですね。
Y:そうです。「Fungible」は日本語で言えば、代替可能なという意味。例えば、えみさんが持っている1万円札と、僕が持つ1万円札は一緒で、同じ価値で交換可能ですよね、というのが「Fungible」。それに対して、えみさんのサイン入りのTシャツは、直筆だったら一点一点の価値が違うから簡単に交換できないですよね、っていうのが「Non-Fungible」です。
E:おお、わかりやすい。
Y:同じ価値で取り引きされる仮想通貨はFTで、そうじゃないデジタルアートはNFTになりますね。
E:仮想通貨は株に近いんですか? 上がったり下がったりするじゃないですか。
Y:株というよりは、日本円とか米ドルに近いって感じですかね。ただ日本円は日本銀行が発行していますけど、仮想通貨はブロックチェーン上で通貨の管理をしているだけなので、特定の発行主がいないんです。大きな違いは、日本銀行ならコントロールできますけど、仮想通貨はその価値をみんなで支えあっている仕組みなんで、コントロールが難しくなっているってことですね。
E:昨年あたりからデジタルアートって言葉もかなり耳にするようになりましたけど、それ以前にもNFTってあったんですよね?
Y:そうですね。2018年頃に本格的に流行り始めた、ブロックチェーンゲームという領域があって。日本発の企業がユーザー数で世界一位を記録したこともあったんです。
E:へぇ〜!
Y:ブロックチェーンゲームというのは「たまごっち」みたいなゲームで、その中のコンテンツの刀とか武器とか、そういったアイテムがNFTになっていたんです。NFT化することによって、「たまごっち」以外の他のゲームでもそのアイテムが使えるって仕組みですね。元々はそういったゲームから生まれた概念なんですけど、今はもっと複雑なブロックチェーンが世界中で日々誕生している感じです。
E:そうなんだ〜!
Y:その時代に出てきたのが、「OpenSea」っていうNFTのメルカリみたいな会社ですね。ユーザーが持っているNFTを売り買いできるスペースです。今は世界規模に広がって、たった90人で3,000億円くらいの流通額をつくっているですよ。
E:わぁ〜、90人で3,000億円! 吉田さんの会社の「HARTi」も競合になるんですか?
Y:一部はかぶっているんですけど、「OpenSea」は個人の売り買いだけのマーケットプレイスなんで、僕の会社とはちょっと違いますね。
E:「HARTi」は他にどんなことをやっているんですか?
Y:僕らは発行したNFTをマーケティングに使いたい企業向けに、NFTがどれだけお客さんに届いて、どれくらい使われたかを追跡して分析しているツールを持っているので、それらを活用して企業がこれからNFTにどうやって参入していくかをサポートするって仕事もやっているんですよ。
E:なるほど〜。
NFTを始めるにはウォレットが必要! 〜Web3.0の世界〜
E: 実際にNFTが欲しい!って思った時に、何から始めるのがいいのでしょうか?
Y: まずはウォレットをつくるところからですかね!
E: 端的に、ウォレットって何ですか!?
Y: 文字通り、FTやNFTを入れる“お財布”です。例えば、今って大抵のサービスのアカウントつくるとき、メールアドレスとパスワードが必要じゃないですか。これはWeb2.0のスタイルだと言われていて。これがWeb3.0になると、ウォレットを認証するだけで、IDとパスワードが必要なくなるんですよ。そのウォレットにFTとかNFTとかがどんどん入れられるって感じです。
E: 吉田さんの会社の「HARTi」や、キツネのマークの「MetaMask」とかがウォレットの会社ですよね。
Y: そうです。「MetaMask」は現在世界で一番ユーザー数が多いと言われています。さまざまなブロックチェーンゲームにも対応しているんで、言うなれば“加盟店が多い”って感じですね。でもちょっと使いにくいって声もあって。
E: ウォレットを連携すれば、将来的にはメタバースとかいろんなサービスに繋がっていくんですか?
Y:その通りです!
E: web3.0については、私ちょっとわかりますよ。えっと……“個の時代”ってことですよね!
Y:すごい本質的なところを突いてきますね〜! ざっくり言うと、Web1.0は1990年代くらいのインターネット出始めで、ホームページを見るとか一方的な時代。Web2.0は2000年代中頃くらいのメールやSNSなど、相互でやりとりができる時代を言います。Web2.0では、SNS企業が大量に個人情報を持つようになり、選挙や政治までコントロールするくらいの力を持ちはじめて。ちょっとこれは危ないんじゃないの?って風潮になっているのが、現在ですね。
E:以前、個人がアップしたポストの権利が「Instagram」の会社のものになるってニュースを見たことがあります。問題になってましたよね。
Y:そうそう! 国や政府が介入して、SNS企業とイタチごっこしているんですよ。そこで出てきたのがWeb3.0っていう概念で、中央集権的な企業による独占をやめて、個人に主権を取り戻そう、って考え方です。自分の個人情報は自分のウォレットで管理して、なくなってもクラウドは助けてくれないよってことですね。非・中央集権型、って感じです。
E:なるほど。
Y:もともとインターネットが目指していた夢は分散なんですよ。世界中に情報を分散させてみんなで共有していこうってことだったんだけど、資本主義に乗っかっちゃってシリコンバレーの企業が独占しちゃって。Web3.0では原点に立ち返ろう、原理主義って感じですね。
E: そうなんですね、Web3.0に期待が高まりますね。まずはウォレットのアプリをダウンロードするところから始めてみます!
E:「HARTi」のアプリでウォレットを作るのは、簡単な情報登録だけで誰でも無料でできるんですね。で、実際にここからNFTを買う場合、吉田さん的にはどれがおすすめですか?
Y: 今、「HARTi」で一番人気なのは、チンアナゴの「浅瀬のおともだち」ですね。えみさんが手に持っている、その絵のデジタルアートです。
E: これですね! こうやってリアルを手にすることもできるんだ!
Y: その絵も今は非売品なんですよ。実物があるかどうかは、作品によります。ただ、先日このNFTを所有している人たち限定のイベントを開催したんです。渋谷のレストランを貸し切って行ったんですけど、年齢も職種もさまざまな多くの方が参加してくださいました。
E: なるほど。NFTは売買する価値だけでなく、所有者しか行けないイベントや体験ができるって価値もあるわけですね。
より確実に推せる世界になる!? 〜NFTと“推し活”〜
E: Web3.0の世界が広がれば広がるほど、ありとあらゆるものにNFTが付随することになるってことですか?
Y: ウォレットを通して購入したものにはNFTがつくようになると思います。例えば、今でもビールを購入するとLINEスタンプがもらえるキャンペーンとかってあるじゃないですか。それにもしNFTを入れたら、じゃあ100個集めた人は次の商品開発に参加できるとか、そんなこともできますね。
E: わぁ〜、楽しげ! でも買い物を追跡されているような気も……。正直まだ、いいのか悪いのか、わからないな〜。
Y: どう活用するか、ですよね。僕は最近、新大久保に行って“推し活”を研究しているんですけど(笑)。NFTは“推し活”とすごく相性がいいなと思っています。
E: 今って本当に明るく推せる時代になってきましたよね。こないだ何十年かぶりに渋谷の109に行ったら、“推し活”グッズの店がいっぱいあって驚きました!
Y: NFTによって推しとファンとの関係性も変わってくると思いますよ。ファン度がNFTによって可視化されるから、確実にお返しができるようになるんです。“推し甲斐”が生まれるというか! あとは、例えばイベントのチケットも、今だと転売されたら転バイヤーだけが儲かってしまう仕組みだけど、それがNFT化されると運営側にちゃんとリターンが生まれるようになります。そうすると、チケットの売り方もおそらくもっと多様化してくるんじゃないかな。
E: 推し文化が根付いている日本は、Web3.0の世界も特殊な育ち方しそうですよね。
Y: 間違いないですね。
E: ウォレットの中身は基本的に公開されているものなんですよね?
Y: そうですね。基本的には公開されています。ただ、暗号化されているので、どの個人が持っているのか特定するのは難しいですね。
E:そうなるとユーザー側は、同じ趣味の人と繋がりやすくなりますね。あとは価値の自慢がしやすい! 逆にデメリットってあるんですか?
Y:現時点でのデメリットを言うと、自分で管理しないと誰も助けてくれない世界ってことです。例えば、今はパスワードがわからなくなっても「Google」が復帰してくれますけど、それがWeb3.0になるとなくなるんです。自分のデータを管理する“お母さん”的な存在がいなくなっちゃうわけなんで、もし一所懸命“推し活”して、たくさん集めたNFTをウォレットに入れといたのに、酔っ払ってポチッと消しちゃったら、もうすべてなくなっちゃうわけですよ。
E: “お母さん”に頼ってばかりで、自立心がない人はダメってことですね(笑)。
Y: 大事なパスワードは紙に書いて金庫に保管みたいな、アナログなことです(笑)。最近はハードウエアウォレットっていうのがあって、USBみたいなものにウォレットのパスワードを入れて保管するっていうのがあるんですよ。スイスの銀行ではそれを保管する金庫サービスのようなものも始めているみたいですね。
E: 今のうちに自分のことは自分でやるってことを始めるべきですね(笑)。誰かが何とかしてくれるって意識をやめる!
Y: そうですね!