1993年のソロデビュー以降、その先鋭的なサウンドとビジュアル表現で、新たな音楽体験を模索してきたビョーク。現在、東京・日本科学未来館にて、ビョークの楽曲や世界観と最先端のテクノロジーとが融合した実験的なVR(バーチャルリアリティ)展示プロジェクト「Björk Digital―音楽のVR・18日間の実験」が開催中なのですが、スタート前日にビョークが出演する公開収録&トークショーがあり、興味津津でうかがってきました!
まず「Björk Digital」とは、ビョークの最新アルバム『ヴァルニキュラ』をVR作品化し展示しながらVRと音楽の可能性を探る、現在も進行中のプロジェクトのこと。この日の公開収録「Making of Björk Digital」は、日本科学未来館のシンボル「ジオ・コスモス」(地球の形をしたディスプレイ)をバックに、MITメディアラボのネリ・オックスマン教授による特製マスクを装着したビョークが『ヴァルニキュラ』収録曲「Quicksand」の生歌唱&パフォーマンスをおこない、その模様を360度VR映像としてライブストリーミングするという世界初の試みでした。360度カメラによる映像には、最新テクノロジーを駆使したAR(拡張現実感)/VRの演出が加えられ、テクノロジーと音楽体験の融合の可能性を追求する、まさに「実験」だったのです。(収録された映像は、<Björk Digital Exhibition>のためにアーカイブ化され、今後、ロンドンなど各都市を巡回する際に、360度VR映像の展示作品として公開予定とのことです。)
Photo by Santiago Felipe
収録終了後には、日本では初めてのトークショー登壇となったビョーク、パフォーマンスのクリエイティブディレクションを担当した菅野薫さん(Dentsu Lab Tokyo)、テクニカルディレクションなどを手掛けた真鍋大度さん(Rhizomatiks Research)、映像制作に携わったTAKCOMさん (P.I.C.S. management)による、今回のパフォーマンスやコラボレーション、最新テクノロジー、クリエイティビティの可能性などにまつわる、刺激的で熱いトークが繰り広げられました。トークショーでのビョークの発言で印象的だったのは、「テクノロジーはただ目新しい技術を使うのでなく、そこに人間性や感情を乗せてこそ意味を持つ」こと。そして「クリエイティビティとテクノロジーが、自分たちを取り巻く環境に問題を抱えた人類にとって新たなフェーズのスイッチとなる」ということ。音楽表現において、貪欲なまでにテクノロジーを追求してきたその理由が本人の口から語られたことで、彼女のクリエイションに対する興味が一層深まったように思います。ちなみに、アイスランド訛り(?)の英語がとってもキュートでした。
Photo by Santiago Felipe
ここからは、本展の見どころを簡単にご紹介。今回、展示されているVR作品は3つ。「Vulnicura VR」は『ヴァルニキュラ』収録曲を新たに体験するもので、それぞれにヘッドセットを装着した来場者は、「Stonemilker」ではアイスランドのビーチでのびのびと歌うビョークの姿、「Mouth Mantra」では歌うビョークの口の中の様子(!)、そして「Notget」では大きな蛾の女の仮面への変身を、世界が誇る映像クリエーターやプログラマーとのコラボレーションにより実現したVRコンテンツとして楽しめます。
Stonemilker VR ©Andrew Thomas Huang
Mouth Mantra VR ©Jesse Kanda
Notget VR ©REWIND VR
また、前作『バイオフィリア』とともに生まれた、音楽の構造、自然、テクノロジーなどに関する画期的な教育アプリ「Biophillia」の体験スペースや、本展のために20年以上に渡るキャリアからセレクトした歴代ミュージックビデオを5.1chでリマスターし上映するシネマルームも併設されています。
Photo by Santiago Felipe
ビョークの才能はもちろん、彼女の先進性、視野の広さやクレバーな面も感じ取れる展示となっているので、ファンはもちろん、ビョークってどんなアーティストなんだろう、と気になっている人もぜひ足を運んでみてください。
最後に、7月13日(水)には、今回のビョーク来日を記念して『ヴァルニキュラ』のライヴ盤も先行発売されるので、こちらもチェックのほどを。
VR展示プロジェクト「Björk Digital ―音楽のVR・18日間の実験」
開催日程:〜2016年7月18日(月・祝)
開館時間:10:00〜17:00
※金・土・日曜日および祝日は〜22:00
休館日:2016年7月5日(火)、12日(火)
会場:日本科学未来館 7階 イノベーションホールほか(東京都江東区青海2-3-6)
料金:2500円(税込)
※入場日時指定制、整理番号付(VRコンテンツ以外は当日に限り終日鑑賞可)
※展示の中心となるVRコンテンツは13歳以上が対象
※小学生以上は入場券が必要(未就学児の入場不可)
※企画展、常設展、ドームシアター(いずれも17:00まで)の鑑賞には別途料金が必要
※アーティストの出演はありません
主催:スマッシュコーポレーション
共催:日本科学未来館
協力:株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ
ビョーク 『ヴァルニキュラ:ライヴ』
2016年7月13日(水)日本先行発売
¥2,400+税(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル)