ニューヨーク州の最後に残された秘境、キャッツキルズ西部にあるサリバン群が今、注目のスポットに
サリバン郡は、マンハッタンから北西へ約2時間、キャッツキル山地のアッパー・デラウェア・バレーの中にあり、古くからニューヨーク・シティにとっては豊かな資源の宝庫だった。このあたりで採掘される青灰色の砂岩は、19世紀にはニューヨークの街の歩道の多くに敷かれた。現在、農場や酪農場は、シティの最上級レストランに有機栽培の野菜やチーズを供給している。
ハドソン・リバー・バレーやハンプトンズなど、ここより人口密度が高く、再開発によって高級化した地域と比べると、ニューヨーク州の片隅にあるこの地域は、デラウェア川の流れに寄り添うように点在する小さな集落の集まりで、時代に取り残されたかのようだ。フライフィッシングが有名で、19世紀には、トラウト(マス)が豊富なビーバーキル川のそばにいくつかのアウトドア・クラブがあった(一部は今も存続している)。マンハッタンとここを結ぶ鉄道も、洗練されたホテルやレストランもなかったため、年月が過ぎても開発は進まず、訪れる人も少なかった。こうしてサリバン郡は、人里離れた秘境として守られていた。
だが、今や状況は変わりつつある。郡の西側にあるナローズバーグ、リビングストン・マナー、カリクーンという隣り合う3つの町(互いに30キロメートルも離れていない)が、起業精神に富む地元民や都市部からの移住者のおかげで変身しているのだ。シックなホテルもいくつか登場し、静かな町の大通りには、新しい店やレストランがオープンしている。とはいえ、開発はさほど大規模なものではなく、サトウカエデやキハダカンバが色とりどりのモザイクを描く森林や、野の花に彩られたなだらかな丘、この地で健やかに育っている白頭鷲が、サリバン郡ならではのものとして、大切に守られている。(その他、おすすめガイドもチェック)
SOURCE:「Into The Wood」By T JAPAN New York Times Style Magazine
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