2018.04.07

ジェイ・Zのポートレイトを描きながら、スタジオでヘンリー・テイラーが語ったこと

米国版T Magazineの表紙のために黒人ラップ・ミュージシャンのジェイ・Zを描いたヘンリー・テイラー。3月末に初の個展を日本で開催中のアーティストの創作の現場を訪ねた


 2017年12月、『T Magazine』のホリデー号の表紙を飾ったジェイ・Z(Jay-Z)のポートレイトを描いたアーティストのヘンリー・テイラーは、その年の10月末、マドリッドのホテルに滞在していた。ちょうどフランスのアート・フェア「FIAC」が終わったばかりの頃だ。ジェイ・Zのポートレイトを仕上げねばならない期日が迫っていた彼は、iPhoneを使って、ジェイ・Zの写真やビヨンセとのツーショット写真、彼の曲のラップの歌詞など、アイデアソースになりそうなものをネットで探していた。

ジェイ・Zにインスパイアされ、『T Magazine』2017年12月のホリデー号のために描いてくれた2つの作品の横に立つアーティストのヘンリー・テイラー。ロサンゼルスのスタジオにて(写真左)『Go Next Door and Ask Michelle’s Momma Mrs RobinsonIf I Can Borrow 20 Dollars Til Next Week?』(2017)(写真右)2017年12月3日発行の『T Magazine』の表紙に起用された作品『I Am a Man』(2017)

T Magazineのために描かれた2枚の絵

「ジェイ・Zの2003年の作品『Dirt off Your Shoulder』じゃないが、私も“誰かの肩からホコリを払わせる”ことができたかもしれないね」。ロサンゼルスのダウンタウンにある自分のスタジオで、テイラーは長く伸びたタバコの灰が落ちないようバランスをとりながら言った。一方で、また別の、もう少し最近の曲の歌詞がテイラーの頭にしつこく浮かんでくるという――「俺は黒人じゃない、俺はO.J.だ」。このフレーズは、O.J. シンプソンが殺人事件の公判で主張した言葉の引用だ。シンプソンは、自分が名声と富を得ることによって事態が変わり、アメリカに住む黒人男性を苦しめているさまざまな問題――貧困、警察の残虐行為や拘禁といったものからなんとか離れることができたのだと語った。(その他の作品を、もっと見る)

ジェイ・Zの「Dirt off Your Shoulder」ミュージックビデオ

ロサンゼルスのダウンタウンにあるテイラーのスタジオは、野宿するホームレスが多く住みついているスキッド・ロウ地区に隣接している。スキッド・ロー地区をスケートボードで走り抜ける男を描いた。描きかけの絵を指差しながら、テイラーは言った。「ここで生活しているとホームレスたちが自然に目に入ってくる。だから自然に作品に入ってきちゃうのさ」

テイラーは、槍の一部や曲がった木の棒などの拾った物を集めては彫刻に使ったり、ここに保管しておく

SOURCE:「In the Studio With the Artist Who Painted Jay-Z」By T JAPAN New York Times Style Magazine 

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