2019.08.10

AM11:00までの朝食夢物語 妄想モーニング

My dream breakfast
きらきらと降り注ぐ朝の陽射し。吹き抜けるさわやかな風。そんな美しい時間にいただく朝食こそ、憧れの人と一緒に食べたいもの。では、いつ、どこで、誰と、どんな自分で、どんな料理を?各界の妄想好き著名人が夢の朝ごはんを語り尽くす。

01 アーノルド・シュワルツェネッガーと筋肉ピクニック

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滝沢さんの"妄想"メニューは、プロテイン入りの特大おにぎり(具は梅干し、そぼろ、鮭)、卵サンド、亜麻仁油で揚げた鶏胸肉の唐揚げ、ゆで卵、山盛りのゆでブロッコリー、ホエイプロテイン

モデル・女優
滝沢カレン
さん

Profile

たきざわ かれん●1992年、東京都生まれ。2008年『SEVENTEEN』にてモデルデビュー。現在、多くの雑誌でモデルとして活躍する一方、「グータンヌーボ2」(関西テレビ 火曜24時25分~)、「沸騰ワード10」(日本テレビ 金曜19時~)などバラエティ番組にも多数出演中。

ここはイタリア・トスカーナの田舎町。小山の上にある赤い屋根の可愛い家にアーノルド・シュワルツェネッガーさんは住んでいる。8月のある朝、私は自転車で、その家に向かっていた。『ターミネーター2』の撮影を1カ月後に控え、ナーバスになっている彼を息抜きのためにピクニックに連れ出すことにしたのだ。朝5時に起きて、二人で食べるモーニングを作ると、勢いよく家を飛び出した。夏の風がさわやかに耳もとを駆け抜け、花や緑が小刻みに笑う。30分ほど走ると、家の庭で、すでに腹筋をする彼の姿が見えてきた。「シュワルツさん、おはようございます!」「滝沢、早いな」。お互いに、まだよそよそしい呼び方だけど、それでも彼の大ファンの私にとってはうれしい響き。早速二人乗りの自転車に乗り換え出発した。♪バーイセコウ~と二人で歌いながら弾むように山道を飛ばす。湖のほとりの草原に着くと、私はシートを広げ、バスケットに詰めた朝食を並べていく。プロテイン入りおにぎり、亜麻仁油で揚げた唐揚げ……彼の体を考えて作ったものばかり。「俺のことをこんなに気にかけてくれるなんて最高だな!」と褒めてほしかったけれど、彼は黙々とごはんを頰張り、あっという間にたいらげる。そして、いてもたってもいられないゴリゴリアーノルドは、すぐにまた筋トレを始めた。腕立て伏せをするその大きな背中に私は飛び乗り、「あと10回!」と追い込んでいく。本当は女の子らしくワンピースを着て来たかったけれど、こんなこともあろうかとデニムとスニーカーで来て正解。とにかく彼のサポートができれば、私は幸せだから。

でも、そんな思いが通じたのかも。休憩中にふと彼がつぶやいた。「滝沢、今度の土曜日もピクニックに行くぞ」。えっ、来週も!? 飛び上がりたいほどうれしかったけれど、「OK。次はもっと重いダンベルを用意しないとね」とクールにウィンク。二人の間にはまだ距離があるけれど、彼と私の間に特別な空気が流れ始めたのを感じていた。アーノルドが小鳥にナッツをあげるのを眺めながら、私は空へ羽ばたきたいような気持ちになった。

02 未来の旦那さんと過ごす宮古島の朝

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Private Resort Hotel RENN ●沖縄県宮古島市城辺字友利422の2 070−1065−4362 全3室 宿泊料金は1泊朝食つき¥17,300(1室2名使用時の大人1名分料金) オーナーのお母さんが作る地元の食材を活かした日替わりの朝食(写真)が評判

プロスケーター
村上佳菜子さん

Profile

むらかみ かなこ●1994年、愛知県生まれ。3歳からスケートを始める。2010年、世界ジュニア選手権優勝。2013年、全日本選手権で2位となり、2014年にソチオリンピックに出場。同年、四大陸選手権優勝。2017年、現役を引退し、プロに転向。最近ではバラエティ番組などでも活躍。

私が恋する宮古島。3年前、仲よしの浅田真央さんと二人で旅行したのが最初で、以来、毎年訪れています。包み込んでくれるような大自然や素朴で温かい島の人たちは、まさに私にとっての癒やし。とくにお世話になっているのが、いつも宿泊する「Hotel RENN」のオーナーの蓮さん。心から信頼できるダンディなおじさまで、しかもホテルの朝食は、すべて蓮さんのお母さんの手料理なんです! きらめく朝日の中、島野菜を中心としたお料理を食べていると、都会で疲れた体が浄化されていくのでした。だから同棲している彼との結婚が決まったとき、迷わず宮古島で式を挙げることにしました。彼は私より10歳年上の尊敬できる相手。包容力があって落ち着いていて、一緒にいて安心できる人。じつは彼とつき合い始めたとき、真っ先に紹介したのも蓮さんとお母さんでした。

観光シーズンの過ぎた10月半ば、真央さんをはじめ、数名の友人と家族が宮古島に集まりました。式を挙げるのは、東平安名崎灯台を望む岬。ここに立つと、特別なパワーに自分が満たされていくのを感じます。挙式のあとは、RENNでカジュアルなパーティ。私と彼は、そのままRENNに宿泊です。

そして翌朝8時。まだ半分夢心地のまま、私たちはゆるゆるとダイニングへ向かいます。テーブルには、いつものようにお母さんの手料理。そば粉のガレット、アグー豚のソーセージ……どれも好きなものばかり。忙しかった昨日とはうって変わって、ゆったりとした時間が流れる中、静かに食卓を囲む私と彼。そこへ蓮さんが話しかけてきました。

「おはよう。昨日はお疲れさま。で、今日はどうするの?」「一応、ダイビングする予定で」「おすすめのポイントはありますか?」と尋ねる彼に、「だったらこの先に……」と地図を手に説明を始める蓮さん。ふと窓の外に目をやると、朝の光を反射して、庭のグリーンが鮮やかに輝いています。心地よく吹き抜けるさわやかな風。特別だけど、特別じゃない時間。そのありがたさをかみしめながら、私は宮古島の自然にあらためて感謝したのでした。

03 王様、初めての吉野家の朝定物語

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焼き魚、納豆、卵がついたバランスのよい特朝定食のほか、吉野家では朝ごはんメニューも充実。特朝定食¥510(販売時間は4時〜11時)・牛皿 並盛¥306・生ビール(グラス※ビールは一部店舗で提供)¥186/吉野家 https://www.yoshinoya.com/

落語家
春風亭一之輔さん

Profile

しゅんぷうてい いちのすけ●1978年、千葉県生まれ。日本大学芸術学部卒業、春風亭一朝に入門。2012年、真打昇進。高座出演のほか、ラジオやテレビにも多数出演。雑誌や新聞に連載も持つ。現在は、「春風亭一之輔のドッサリまわるぜ2019」と称して全国津々浦々を巡業中。著書『春風亭一之輔 師いわく』『春風亭一之輔のおもしろ落語入門 おかわり!』(ともに小学館)も好評。

ある国の国王として来日して3日。国賓並みのもてなしを受けていたものの、私はひどく退屈していた。裸の男たちがぶつかり合う競技もさほど興味が持てなかったし、楽しみにしていたグルメも我が国でも食べられるものばかり。やれやれとホテルに戻り、風呂に入ろうと服を脱ぐ。そしてバスルームのドアを開けた……つもりだったのだが、間違えて部屋のドアを開けてしまい、私はパンツ一丁でホテルの廊下へ出てしまった。しまった! 鍵は部屋の中だ! しかもさっきSPに「うまいもんでも食ってこい」と小遣いを渡したばかり。あせって階段でロビー階に行こうとしたが、今度は誤って非常階段を降りてしまい、気がつくとホテルの外。パンイチのまま、私は夜の日比谷の街に放り出されてしまったのだ。

「裸のオヤジがいるぞ!」と酔っ払いにからまれ、言葉もわからないまま、街をさまようこと数時間。そんなとき、声をかけてくれたのが交通整理をしていたおっちゃんだった。名前を安田と言った。年齢は60歳くらいだ。「おめえ、そんな姿で風邪ひくぞ」。安田のおっちゃんは自分のジャンパーを私にかけると、「ちょっと待ってな。あとでメシご馳走してやるよ」と言って、朝方仕事が終わると近くの店に連れて行ってくれた。カウンターだけのこぢんまりとした店内だが、朝から職人たちで賑わっている。「オレは牛皿とビール。この外人さんは特朝定で」。すぐに料理が出てきた。見たことのないものばかりだが、体は冷えてるし、腹も減ってる。まずは温かいスープに手をつけた。うまい!「鮭は皮がうめえんだよ」と促され、恐る恐る食べてみるとイケる!「おめえさん、わけぇんだから、もっと食べなよ」と今度はおっちゃんが牛皿の牛肉を私のご飯にのせてくれた。これがまた絶品だ。ご飯と牛肉の絶妙なハーモニー! 「うめえだろ」と満足そうなおっちゃん。そのやさしさに目頭が熱くなる。それにしてもうまい店だ。ぜひとも我が国に支店を出さなければ。気がつくと、さっきまで曇っていた空が明るくなっていた。朝日に燦然と輝くオレンジの看板が私の目に眩しく映った。

04 グローバルな仲間と早朝ミーティング

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ジランドール ●東京都新宿区西新宿3の7の1の2 パーク ハイアット 東京41F 03−5323−3459 <営>朝食6時30分〜10時30分、〜11時(土・日・祝) 無休 ブッフェ(¥4,200)のほか、アラカルトも充実。ヴィーガン対応メニューも多い。(写真中央)ミックスリーフサラダ¥1,200(アボカドは追加メニュー)、(写真右下)キヌアのソイミルクポリッジとミックスドライフルーツ シナモン¥900、(写真下)フルーツとベリーの盛り合わせ¥2,000、(写真左)オールブラン¥1,000、ミックスジュース 各¥1,600、アイスコーヒー・ティー 各¥1,000※価格はサービス料別

タレント
ブルゾンちえみさん

Profile

ぶるぞん ちえみ●1990年、岡山県生まれ。「ブリリアン」とのユニット「ブルゾンちえみwith B」としても活動。この夏は、ケラリーノ・サンドロヴィッチの戯曲をほかの演出家の手で舞台化する「KERA CROSS」の第1弾として上演される『フローズン・ビーチ』に出演。詳細はhttps://www.keracross.com/

令和になって、はや数年。お笑いだけの仕事にとどまらず、さまざまなプロジェクトに携わり、世界中を駆け回っている今日この頃。最近では、自宅よりも都内の高級ホテルで過ごすことのほうが増えてきたわ。じつは今日も宿泊先のホテルのダイニングで朝からミーティング。といっても、相手は気心の知れた仲間たち。フィンランド人のフォトグラファー・ヘンリック、アフリカ系フランス人のエンジニア・アンリ、韓国人のグラフィックデザイナー・ジュンソ。3人とは2年前にストックホルムで開かれた環境会議で出会って意気投合。それ以来、定期的に会合を重ねているの。プロフェッショナルなだけでなく、スタイリッシュでイケメンな彼らとの集会はエキサイティングな時間よ。

私はシャワーを浴びたばかりのウェットなヘアをざっくりと束ねると、Tシャツに長めのカーディガンというこなれたスタイルでホテルのダイニングへ。すでに3人が揃っていたわ。「グッモーニング!」「ハイ、ちえみ。元気だったかい?」と軽くみんなとハグしてテーブルへ。ここの朝食はビュッフェが人気だけど、3人ともヴィーガンだし、私も朝は軽めにすませたいから「アラカルトでお願いできるかしら」と各々がオーダー。アボカドのサラダ、キヌアの入ったお粥、フルーツの盛り合わせ……。「私はコーヒーも。先にお願いね」「かしこまりました」とウェイターがチャーミングな笑顔で応じる。「ところでちえみ、今日のアジェンダはなに?」とヘンリック。「サステイナブル社会の実現のために、お笑いの世界がどう貢献できるか、よ」「それはいいね。僕が思うに日本の芸能界は……」。早速、熱く語り出すジュンソの低音ボイスが心地よく響く。ふと感じるアンリの熱い視線に気づかないふりをしながら、私はベリーに手を伸ばした。きらきらと差し込む朝の光とコーヒーの香り。美しい調和からもたらされる波動に、徐々に覚醒していく左脳。気がつけば、私は彼らと熱く議論を交わしていた。

05 憧れの松井秀喜さんと青山でガレットタイム

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ヨックモック 青山本店 ブルー・ブリック・ラウンジ ●東京都港区南青山5の3の3 03−5485−3340 <営>10時〜23時(LO22時)、〜19時(LO18時30分/日・祝)無休 国産のそば粉を使用したガレットは一日中注文できる人気のメニュー。ガレット(コンプレット)¥1,250、ガレット(ブラータとプロシュート)¥1,800、ブレンドコーヒー¥800、カフェラテ¥850

モデル・俳優
宮沢氷魚さん

Profile

みやざわ ひお●1994年、アメリカ生まれ。東京育ち。2015年、『MEN’S NON-NO』専属モデルとしてデビュー。2017年、ドラマ「コウノドリ」で俳優デビューし、役者としても活躍。現在、ドラマ「偽装不倫」(日本テレビ 水曜22時~)に出演中。

時は202×年。ハリウッド版『ゴジラ』の続々編のオーディションに合格した僕は、ついにハリウッドデビューを果たすことに。その撮影現場で出会ったのが、元ヤンキースの松井秀喜さんだった。「ゴジラ」の愛称を持つ松井さんもこの作品にカメオ出演することになっていたのだ。野球が大好きで、小学生の頃はクラブチームに入り、プロ野球選手を目指していた僕にとって、松井さんは憧れのヒーロー。ワールドシリーズでMVPまで獲得し、いまだにニューヨークのファンから愛されているレジェンド。頭のサイズが大きすぎて、ヘルメットが入らない……など、おもしろエピソードがたくさんあるユニークなキャラクターも大好き。
「はじめまして。宮沢です」。最初の挨拶は恐る恐るだったが、僕の熱い思いを察してか、松井さんは、気さくにいろいろ話してくれた。アメリカの球場の芝、ロッカールームの様子……話は盛り上がり、別れ際には連絡先を交換するまでに。以来、僕は「ごはん、行きましょう!」とラブコールを送っていた。すると半年たった頃、突然、松井さんから連絡が!「今、日本に戻って来てるんだけど、氷魚くん、ごはんでも行こうか」「行きます!!!!」。ソッコー返事をし、週末の午前中に会うことに。場所は僕のセレクトで青山のヨックモックになった。「松井さん、お久しぶりです!」。憧れの人との再会にあらためて感動すると同時に、その飾らない笑顔に癒やされる僕。「ここのガレット、すごくおいしいんです。ぜひ食べてほしくて」「じゃあ、氷魚くんが選んで」。そこで僕はボリュームのある生ハムのガレットをチョイス。「ん! これはうまいね」と松井さんも満足そうだ。「そういえば、今度、僕もニューヨークに部屋を借りようと思ってて。いい物件が出たら、一緒に見に行ってくれますか?」。そんな無茶なお願いにも「いいよ」と松井さん。「マンハッタンに住むなら、あの店がおすすめだよ」と親切にアドバイスしてくれる。僕の役者としてのキャリアはまだまだこれからだ。でも僕のそばには松井さんが、ゴジラがいてくれる。そう思うと百人力。僕は自分の中に力がみなぎってくるのを感じていた。

SOURCE:SPUR 2019年9月号「妄想モーニング」
photography: Mino Inoue (01,03,04,05), Wataru Oshiro (02) cooking: Erika Iwai (01) interview & text: Hiromi Sato coordination & text: Naoko Monzen