8月に公開される『劇場版おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~』への出演をはじめ、ドラマ、映画等で着実に役者としてのキャリアを積み上げている志尊 淳。「演じる者」としてのまなざしは、今どこに向いているのか。
Interview
お祭りのようなストーリー そのすべてが見どころ
「どの現場もそうですが、『劇場版おっさんずラブ 〜LOVE or DEAD〜』の現場も熱量がすごかったです。すべてのスタッフさんが同じ方向を向いていて、何が起こるかわからない現場の空気感を必ず支えてくださるし、小道具ひとつにしても、ファンの方に向けたメッセージがあって、見えないだろうというところも丁寧に貪欲にやられていました。キャスト陣も含めて、みなさんの作品に対する愛が本当に深くて素敵でした。僕は映画から参加したので、追いついていこうと、とにかく必死でした」
こう語るのは、昨年放送され、社会現象となった大ヒットドラマ「おっさんずラブ」の劇場版に出演する志尊淳さん。演じるのは、主人公“はるたん”こと春田創一が所属する天空不動産東京第二営業所に配属された、キラキラネームの新入社員・山田正義(ジャスティス)。おっさんたちのピュアなラブバトルに参戦する重要キャラクターだ。
「海外帰りで、英語交じりの日本語を話す天真爛漫な青年です。『おっさんずラブ』というドラマを拝見して、会話をしたときの反応や、現場の空気を大事にしてつくられているという印象を受けたので、役をつくり込もうというのはなかったです。この作品では、共演者の方々との関係性だったり、距離感があってのジャスティスだなと思いました。それらがつくられてから、ジャスティスという人間が深掘りされていきました」
その関係性、距離感を率先してつくったのが、主人公・春田を演じる田中圭さんだったという。
「圭くんとは、ずいぶん前ですが一度共演したことがあります。がっつりお芝居するのは初めてだったんですけど、ものすごく引き出してくださる方だなと思いました。まわりを気にかけてくださるし頭のいい方で、僕が感じている違和感を解消しようと、初日に監督と3人で食事に行こうと誘ってくださって。何か印象的な言葉をかけられたというわけではないんですが、役としても、人としてもこの人についていきたいと思いました。あの日がなかったらどうなっていたんだろうっていうぐらい救われました」
共演者と紡いでいったシーン、その一つひとつが見せ場だと語る志尊さん。
「ストーリー全体で言うとお祭りですね(笑)。いろんな要素が含まれているというか、ワンシーン、ワンシーン見逃せない見せ場がふんだんに盛り込まれています。僕と部長、春田さんの3人のシーンは、台本を読んでも本当にこのシーンなの?というぐらいすごいシーンになっていると思います。吉田鋼太郎さんと僕が絡むところなんですけど、圭くんが『おっさんずラブ』の本番で初めてっていうぐらい笑いが止まらなくて(笑)。牧さん、狸穴さんも揃った5人のサウナのシーンも、はちゃめちゃで面白いです(笑)。ひとりずつ追っても笑えると思います」
さらには、爆破シーンも!
「不動産屋なのに爆弾騒動に巻き込まれるという、とんでもないシーンです(笑)。何か落ちてきたのかっていうぐらい近い距離で爆発が起きました。僕は以前戦隊もの(トッキュウジャー)をやっていたので爆破を経験したことはありますが、比にならないぐらいの規模でした。衝撃が走って、口を開けて唖然としました(笑)。僕演じるジャスティスも火の中に飛び込んだんですけど、なんの作品をやっているんだ?っていうぐらい迫力がありました」
出演して改めて、本作品の人を惹きつけてやまない魅力を感じたという。
「『おっさんずラブ』は、純粋な恋愛ものです。キャストの誰もが心で演じているからこそ、これだけ人の心をつかんだのだと思います。性別なんて関係ないと思わせる素敵なラブストーリーです」
役に真摯に向き合って突出した何かをつかみたい
今夏は本作のほか、主演ドラマ「潤一」や「Heaven? 〜ご苦楽レストラン〜」など話題作への出演が続く。志尊さんといえば、近作のトランスジェンダーを演じた「女子的生活」、ゲイセクシャルの青年を演じた「半分、青い。」など、さまざまな役に挑み、演じる役の幅がどんどん広がっている印象だ。
「僕自身、いろんな役にチャレンジしているという意識はまったくないです。トランスジェンダーの役などは、ただ単に性別や性対象の部分が挑戦的だと感じさせるだけであって、僕は他と変わらない、ひとりの人として考えています。でも、それぞれ違った個性、色がある中でそう言っていただけるのはうれしいことです。どんな役でも抵抗もまったくないですし、自分が頂いた役、やりたいと思う役に信念を持って、真摯に向き合って突出した何かをつかみたいです。最近、学生役も少なくなってきて、大人と少年の狭間みたいな時期にいることを感じています。今後は警察官とか医師とか硬派な役、あと、時代劇もやったことがないので興味がありますね」
どんな役者になりたいかという問いには、「特にないです」と即答する志尊さん。それは遠くの未来ではなく、今を見つめているからだ。「将来の役者像は、一つひとつの役を演じる果てにあるものだと思っていますし、自分が決められるものではないので。逆に自分がどうなっていくんだろうという楽しみがあるので、今を全力で生きています。誰とも違う、道を走っていってどうなるのか、楽しみです」
Profile
志尊 淳
しそん じゅん●1995年、東京都生まれ。主な出演作に、NHK連続テレビ小説「半分、青い。」、映画『帝一の國』(’17)など。ドラマ「Heaven? 〜ご苦楽レストラン〜」(TBS)、主演ドラマ「潤一」(関西テレビ)が放映中。10月4日に映画『HiGH&LOW THE WORST』が公開、10月8日よりNODA・MAP第23回公演『Q:A Night At The Kabuki』への出演が控える。
~LOVE or DEAD~』
モテない独身ダメ男・春田創一と、誰もが憧れる理想の上司・黒澤武蔵、ドSな後輩・牧凌太の三角関係を描いた大ヒットラブコメディが映画化。おっさん同士のピュアラブが五角関係に展開!? 8月23日より全国公開。
SOURCE:SPUR 2019年9月号「明日の志尊淳」
Interview & text: Miku Sugishima photography: Takemi Yabuki 〈W〉 styling: Yosuke Tezuka hair & make-up: Suga Nakata