拝啓 オスカー・アイザック様
私が初めてあなたをスクリーンで見たのは『ダイアナの選択』(07)という映画。エヴァン・レイチェル・ウッド演じる女子高生と関係を持つギャング的な青年の役で、何だか色っぽい新人俳優でいいな、また彼を映画で見たいなと思ったのを覚えています。
「っていうか、あれはオスカー・アイザックだったんだ!」と気がついたのは、『エンジェル・ウォーズ』(11)や『ドライヴ』(11)で名前が売れかかっていた頃です。そのすぐ後に『インサイド・ルーウィン・デイヴィス』(13)への出演が決まって押しも押されもせぬ大スターになり、かつ『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(15)のポー・ダメロン役で全世界的なアイドルになってしまったので、“私が密かに好きなオスカー・アイザック”の期間がほとんどなく、大ファンだと公言することもなく今まで来てしまいました。
少し前だったら中規模なアート作品の演技派スターだったかもしれないタイプのあなたが、こんなに大きなステイタスを手に入れたのは時代のいい流れで、あなたが前三部作は家族でコスプレして(しかもハン・ソロでもルークでもダース・ベーダーでもなく、“歩くバッテリー”ゴング・ドロイドの扮装で)見に行くほどの『スター・ウォーズ』ファンだったことを考えると本当に祝福しかないです。
しかし、困ったことに大スターになり過ぎたおかげで、来日してもらえる機会がなくなってしまった。『インサイド・ルーウィン・デイヴィス』のプロモーション来日が直前でキャンセルになった時のショックを、私の編集担当のK嬢は今も忘れていません。
だから今回『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』で来日してもらえて、本当に嬉しかった。どうにかインタビューしたいとK嬢と共にがんばりました。しかし(予測していたことですが)『スター・ウォーズ』のプロモーションのスケジュールは過酷でした。あなたとジョン・ボイエガ2人の囲み取材で、三媒体合同、撮影込みで時間は20分。
ホテルのソファにジョン・ボイエガと一緒に座ったあなたは、彼と始終小突き合ったり、クスクス笑ったり、内緒話を囁き合ったりして本当に仲が良さそうでした。27歳のジョンとは13歳も年齢が違うのに、先輩と後輩というよりは男子校のクラスメイト同士みたい。記者会見でもキャストとスタッフが「三部作の最終作が公開されて、プロジェクトが終わってしまうのはほろ苦い」と盛んに言っていましたが、みんな本当に親密です。
予告編を見る限り、ポーとジョンが演じるフィン、そしてデイジー・リドリーのレイがこんなに行動を共にするのは今回の『スター・ウォーズ』三部作で初めて。多くのシーンを分け合うことで、お互いについての新たな発見はありましたか? と聞くとあなたは
「毎日が発見だったよ」と言っていました。
「…僕がどれだけジョンを愛しているかっていうことのね」
ポーとフィンのコンビ(カップル)のファンへのサービス、どうもありがとうございます。でも愛は本物なのでしょう。
「(オスカーに関する)ライトな発見も、ダークな発見もあったよ」とジョン。「共に笑い、語り合う機会をもらえて、より絆を深められた。デイジー演じるレイを含め、3人で旅をしていく展開に感謝している」
リドリー・スコット監督の『ロビン・フッド』(10)のジョン王役は「リチャード・ニクソンとレッド・ツェッペリンのロバート・プラントを掛け合わせた感じ」、『エクス・マキナ』(15)における天才プログラマーでIT企業トップの役は「スティーブ・ジョブスとスタンリー・キューブリックをイメージした」と、いつも明確なビジョンを持って演技することで知られているあなたも、ポー役は「(三部作で)先の展開が読めない中で表現していかなくてはならなくて、そこが大変だった」と話していました。
「でも今回の作品はユーモアに溢れていて、ポーのおどけた面が見られる。窮地に陥っても明るく、こんなの大したことはないさ、と切り抜ける軽やかさがあって、それが敵を打ち負かしていく力になっている。それが僕の性格がポーという役にもたらしたものなのか、ポーが僕に影響を及ぼした結果なのかは分からないけどね」
『すスカイウォーカーの夜明け』は三部作の最後というだけではなく、1977年から続く『スター・ウォーズ』九作の物語を完結させる映画という大きな重圧がかかる作品ですが「今回は特に生き生きと演じたかった。時に破綻しつつも、遊び心を持って役に当たろうと思った」とあなたは語っていました。
「こういう膨大なスケールの作品ともなると、素晴らしいプロダクション・デザインや大掛かりなロケーションやセット、撮影に当たる何千人ものスタッフの中で、俳優が萎縮してしまったりもする。思い切った演技が出来なくて、がんじがらめになって壁に突き当たってしまうということもあるから、あえて思いっきりぶつかることを意識したよ」
「とにかく圧倒された。スケール感がすごい」とあなたが言う『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』の公開も待ちきれませんが、今後の活動も気になります。
来日してすぐ、ゲームを愛するハリウッド・セレブの定番となりつつある“小島秀夫事務所詣”に行かれたようですが、是非とも主演したいと言っている『メタルギア ソリッド』の映画化について話たりはしたんでしょうか?
2年前の『ハムレット』が好評だったあなたの舞台の次回作は、来年オフ・ブロードウェイで上演されるチェーホフの『三人姉妹』。共演は何とグレタ・ガーウィグ! グレタが三人姉妹の次女マーシャ、あなたが人妻の彼女と恋に落ちる陸軍中佐ヴェルシーニンと知って、私のときめきは止まりません。「チェーホフの戯曲なら何でもやりたい。『ワーニャ伯父さん』のアーストロフが憧れの役」と何度も過去のインタビューで言っているあなたの、チェーホフの舞台に対する情熱やプランも聞いてみたかったのですが、もちろんそんな時間はありませんでした。
次はいつ来日されるでしょうか。ドニ・ヴィルヌーヴ監督の『デューン/砂の惑星』は2020年終わりに本国アメリカで公開予定ですが、日本でも公開が決まったら、何なら主演のティモシー・シャラメと共に来てくれていいんですよ。それがダメなら、来年に撮影予定のポール・シュレイダー監督の主演作を待たなくてはならないことになります。
とにかく次に日本に来る時は、単独取材でせめて今回の倍の時間がもらえるように、私とK嬢は努力するつもりです。
その時まで、お元気で。活躍と幸福を心より祈っています。
敬具
山崎まどか
12月20日(金)より全国ロードショー
12月19日(木)に北海道・東京・愛知・大阪・福岡の劇場で前夜祭上映が決定!
https://starwars.disney.co.jp/
♦あらすじ
かつて銀河に君臨していた祖父ダース・ベイダーの遺志を受け継ぎ、圧倒的支配者へと上り詰めた、スカイウォーカー家のひとりでもあるカイロ・レン。そして、伝説のジェダイ、ルーク・スカイウォーカーの強い遺志を引き継ぎ、類まれなフォースを覚醒させたレイ。42年もの長い歳月をかけて語られてきたスカイウォーカー家を中心としたサーガの結末は、二人の運命と、光と闇のフォースをめぐる、最終決戦に託されたー。
♦プロフィール
オスカー・アイザック:1980年グアテマラ生まれ、アメリカ・マイアミ育ち。ジュリアード音楽院でアクティングを学ぶ。『マリア』(06)『ワールド・オブ・ライズ』(08)『ロビン・フッド』(10)などでキャリアを積む。カンヌ映画祭でグランプリに輝いた『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』(13)で主人公を好演し、『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』(14)ではナショナル・ボード・オブ・レビューの男優賞を受賞。今後はドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『Dune』が控えている。
ジョン・ボイエガ:1992年イギリス・ロンドン生まれ。5歳で初舞台を踏む。アイデンティティ・ドラマ・スクールで演技を学び、エドガー・ライト製作総指揮、ジョー・コーニッシュ監督のSFコメディ『アタック・ザ・ブロック』(11)に主演。その後、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(15)に出演し、世界的スターに。代表作に『ザ・サークル』(17)『デトロイト』(17)『パシフィック・リム:アップライジング』(18)など。Netflixのアニメ『ウォーターシップ・ダウンのウサギたち』(18)には声優として参加。