「セットアップはもともと好きで、プライベートでもよく着ます。硬すぎないムードがいいですね」 ジャケット¥64,000・パンツ¥34,000(ともにアンバー)・靴¥35,000(ブローム)/スタジオ ファブワークシャツ¥38,000/モールド(チノ) 靴下/スタイリスト私物
「実は寒いのが苦手なんです。こんなあったかいアウターがあれば冬も乗り切れるかも」シアリングファーのジャケットにレザーパンツを合わせ、質感の違いを楽しんで。 リバーシブルジャケット¥197,000/クオン ショールーム(シーオール) タートルネックカットソー¥14,000・レザーパンツ¥86,000/ユハ スリッパ¥39,000/エドストロームオフィス(ジュリアン デイヴィッド)
「メガネとサングラスは普段からよくかけますね。何本あってもいいぐらい。視力は悪いわけではなく、むしろいいほうなんですが(笑)」毛足の長いカーディガンをまとい、まどろむひととき。 カーディガン¥36,000・シャツ¥37,000/モールド(チノ) メガネ¥38,000/ブリンク外苑前(ユウイチ トヤマ)
「このコート、めちゃくちゃかっこいいですね! 合わせたボトムがワイドパンツなのも好きです。私服のほとんどがワイドパンツかも」 コート¥88,000(ヨーク)・タートルネックニット¥23,000・パンツ¥36,000(ともにウル)/スタジオ ファブワーク
演じる役なら不可解な言動すら愛おしいと感じる
10月に公開された映画『HiGH&LOW THE WORST』の小田島役で見せた独特の雰囲気に目を奪われる人が続出。若手俳優として注目度急上昇中の塩野瑛久さん。“イケメン”なんて軽い言葉ではなく、“美形”と表現したい整った顔もさることながら、彼の最大の魅力は演じる役によって別人のような変化を見せること。今回の撮影でも、まとう服によってまったく違う表情が出た。 「ファッション撮影はなかなか経験することがないですが、好きなんです。ファッションも特別詳しいわけではないですけど、着るもののデザインには結構こだわりますね。裾や袖が広がってる形が好きで、つい手に取ってしまうんです。レディスもよく着ます」
細身の彼ならレディスのシルエットのほうが体に合うのだろうと納得していると、こう続けた。 「なので、アパレルショップのレディスコーナーで僕と遭遇することがあるかもしれません(笑)」
いたずらっぽい笑みはまた新しい顔。今回、役の裏に隠れた彼のリアルな顔をのぞきたくて、仕事のこと、人生観、趣味などさまざまな方向から聞き込んだ。その結果見えてきたのは彼の見たことがないたくさんの顔だった。 「新しい役をいただいたときは、まず自分なりに解釈してから現場に入りますね。その役を生み出した方は別にいて、その人は僕の役を強く愛してるかもしれないけど、それに負けないくらい僕も愛します。そうすると、その役がどう生きてきて、どういう思考で、どんなときにどんな表情をするかがなんとなくわかってきます」
時にはどうしても愛せない生き様の役柄というのもあるのでは? 「実際に自分の目の前に現れたら愛せないと思いますが(笑)。演じる役となると、理解できない行動すら愛おしいと感じるんです。理解できない行動について“こういう理由があったからやったんだ”という行間をお芝居で埋めるのが役者としての僕の仕事だと思うので」
実際に現れたときに“愛せる人”について聞くと「自分の人生に対して誇れる生き方をしている人」との答えが。「同性異性問わず自分に近いタイプを好きになる傾向はあるんですけど、同じ『男劇団 青山表参道X』の西銘駿は真逆なのに惹かれる存在です。すごく明るい性格なんですけど、誰に左右されるわけでもなく、常に明るさを貫き通してるのがすごい。あとは間違ったときに自分を正当化しない。“間違ってるのはわかってるけどやっちゃうんです!”って言うところが可愛いなと(笑)。言い訳しない人が好きなのかもしれないです」
自分の中にぶれない芯を持った人に惹かれるということだろうか。塩野さん自身はどうなのだろう。 「自分には自信を持つようにしてます。何をするにも自信を持って堂々とやったほうが人を惹きつけられますし、結果的にやったことが正解になるんじゃないかって。ある女性から“メイクアップをしてないときは人によくぶつかられるのに、してるとあまりぶつかられない”って話を聞いて、それはメイクアップをしてるかしてないかの見た目の違いではなく、してない自分に自信が持てないからじゃないかと思って。メイクアップをしていなくても、自分が堂々としたオーラを放っていれば、ぶつかられることがなくなると思うんですよ」
カーディガン¥36,000・シャツ¥37,000/モールド(チノ) メガネ¥38,000/ブリンク外苑前(ユウイチ トヤマ)
“若いから”って言葉で片づけられるのが嫌だった
自分に自信を持つこと、堂々としていることの意味に気づいたのは16歳の頃。中学卒業後、高校には進学せず社会に出た彼自身の選択によるという。 「高校に行ってる友達は“高校生”って肩書があるけど、僕は何もない。だったら高校に行ってる人たちが経験できないことを蓄えておこうとは思ってましたね。あと“若いからわからないよね”って言われるのが大嫌いで。“若いから”では片づけられたくないから堂々とした振る舞いをしてやろうっていう反骨精神みたいなものはあります」
役者として、いち青年として、ストイックな生き様を感じさせる塩野さん。一方プライベートでは、家で録りだめたアニメを観賞するという一面も。 「アニメで最近面白かったのは『鬼滅の刃』と『炎炎ノ消防隊』。『炎炎ノ消防隊』は映画っぽい構図が好きで。ずっと引きの絵でキャラクターが陰になったまま、1分くらい会話が続くシーンがあるんですよ。監督さんやスタッフさんが作品を愛して作ってるから成立するんだろうな。そういう“愛”が伝わる作品が好きです」
最近引っ越したこともあり「部屋の片づけ」も関心事のひとつ。 「引き出しを開けたときに、どこに何が入ってるのかすぐわかるように、徹底的に便利にしてやろうと思って。マメではなくて雑なほうですよ。1年後が想像できるからこそ、最初のうちにやっておこうと。ただ、収納ボックスひとつ買うにも、しっかりリサーチしてから買いたくて。どこのものがいいとか、かなり調べます。調べすぎて、どれがいいのかわからなくなって、結局買いに行かないパターンも(笑)」
スイーツ好きで料理男子、特技がクレープ作り(実家がクレープ店!)という少女漫画かと思うようなプロフィールの持ち主でもある。 「料理は凝ったものが作れるわけではなくて、役作りの延長なんですよ。外食は味も濃いし、野菜不足になるので、体重を絞ったり、体型をキープしたりしたいとなると、家で食べたほうがいいじゃないですか? この前も野菜をひたすら刻んで、ささみとホールトマト缶を入れたスープを大量に作りました。でも、もともとは白米をおかずに白米を食べるほどの米好きです(笑)。決してストイックなわけではなくて、スイーツも食べたいし。そのために食事のカロリーは控えめにしてるんです」
甘いモノならなんでも好きという塩野さんのスイーツにまつわる夢は? 「あらゆる名店のナンバーワン菓子パンを食べ続けること(笑)」
最高の笑顔が飛び出した。私たちが知らない塩野瑛久の顔は、どうやらまだまだありそうだ。 Profile/塩野瑛久(しおの あきひさ)1995年生まれ、東京都出身。「男劇団 青山表参道X」の副リーダーを務める。映画『HiGH&LOW THE WORST』の金髪の小田島有剣役で一躍話題に。現在西銘駿とW主演を務めるドラマ「Re:フォロワー」(朝日放送)、「ヤヌスの鏡」(FODオリジナルドラマ・フジテレビで地上波放送)が放送中。
SOURCE:SPUR 2020年1月号「塩野瑛久、あなたを知りたい」 photography: Takemi Yabuki〈W〉 styling: Kohta Kawai hair & make-up: Yusuke Tokita〈ECLAT〉 interview & text: Haruka Furukawa