2020.02.10

ユルゲン・テラーにインタビュー。故郷ドイツのこと、モデルのこと、Netflixのこと。

MCMとユルゲン・テラーの出会いは、極めてオーガニックなものであった。ドイツを代表するラグジュアリーブランドと、世界的に活躍するドイツ人フォトグラファー。この二者の橋渡しをしたのが、ベルリンに拠点を置く気鋭アートギャラリーのケーニッヒ・ギャラリーだ。

「ファッションとアートを融合させたかった。ブランドのビジョンを体現するために構想したのが、銀座ブティック。ビルにはアートギャラリーが併設されていて、自由な発想を形にすることができる」と語るのは、MCMグローバルクリエイティブオフィサーのダーク・ショーンベルガー。ケーニッヒ・ギャラリーとのコラボレーション第1弾を祝して来日したユルゲンと、少しの時間おしゃべりをした。

text:Shunsuke Okabe

ユルゲン・テラーにインタビュー。故郷ドイの画像_1
Juergen Teller, self-portrait wearing Balenciaga sneakers, London 2018


「見てくれよ、これ!これはバイエルン・ミュンヘンが優勝した時に撮ったんだ!」ビールを頭からかぶった自身の写真を指差し、熱心に語るのはユルゲン・テラー。どうやら彼のフットボール好きは筋金入りらしく、取材当日もお気に入りのチームのロゴ入りのスウェットを着ていた。ちなみにコーヒーはカプチーノ派らしく、しきりにカップに指でなぞり、泡を味わっていた。

ユルゲン・テラーを知らない人は、ファッションの世界で恐らくほとんどいないだろう。あえて説明するとしたら、マーク・ジェイコブスやセリーヌをはじめ、著名ブランドの広告を数多く手がける世界的ファッションフォトグラファーであること。コンパクトカメラを使ったコンセプチュアルな作品で知られ、多くのフォトグラファーに影響を与える、現役のレジェンドであること。現在ロンドンを拠点にする彼は、恋人のドヴィル・ドリズィテと2人の子供達、ローラとエドと共に暮らしている。世界中を飛び回る彼だが、多忙なスケジュールの中で、自分を高めてくれるあるルーティーンを見出したという。

「海外で仕事をする上で決めていることがある。それは、一度海外に行ったらその後ロンドンに戻るということ。僕にとって家族と過ごす時間は、仕事を続けるために必要不可欠なものなんだ」。

ユルゲン・テラーにインタビュー。故郷ドイの画像_2
Juergen Teller, Bicycles at Göttingen Bahnhof No.1, 2019 © Juergen Teller, All Rights Reserved


ロンドンに拠点を置いて30年以上になる彼だが、その一方で故郷であるドイツへの思い入れも並々ではない。今回、日本で披露された個展のタイトルは『ハイムヴェー』。日本語で望郷という意味だ。このテーマに向けた思いを「ドイツ人であるというアイデンティティを強く反映させた」と語るユルゲン。作品の中には、彼の母親の写真もいくつか散見される。

「世界中を飛び回っても、ドイツが好きだという気持ちは変わらない。この気持ちがあるからこそ、変わらない姿勢で仕事に取り組めるのかなと思う」。

ユルゲン・テラーにインタビュー。故郷ドイの画像_3
Juergen Teller, Wieso series, 2019 © Juergen Teller, All rights Reserved (3)


国際的に高い評価を獲得する彼だが、その名声が故に彼の作品は時に物議を醸すこともある。中でもヌードを扱った作品は、度々議論の的になってきた。

そのことについて、「アートとタブーの境界線の議論は、今に始まったことではない。だからといって挑戦しないという選択肢はないね」と語る。「僕が撮影で大切にしてるのは、モデルとの距離感。レンズを通してモデルの目を見つめて、なにを考えているかを汲み取る。モデルの人権、と聞くと難しく感じてしまうけど、それぞれのパーソナリティに関心を持ち、どれだけ寄り添えるかということが大事なんじゃないかな」。

ユルゲン・テラーにインタビュー。故郷ドイの画像_4
Juergen Teller, Kristin Scott Thomas No.1, London 2017_© Juergen Teller, All rights Reserved_RGB


今回のエキシビションでは、著名な女優やモデルの作品が多く並ぶが、ユルゲンとこれまでに仕事を共にしてきたセレブリティはそれだけではない。彼を一躍スターフォトグラファーたらしめた一枚のポートレート、ビョークと彼女の息子の写真にはじまり、これまで名だたる女優やアーティスト、モデルたちを撮影し、ユルゲンにしか引き出せない素の姿を捉えてきた。

「誰をモデルにするかは、作品の要。どんな撮影でも意見を出す。仲の良いモデル、例えばケイト・モスやクラウディア・シーファーとの仕事はいつだって最高だね。でもそれだけじゃなくて新しい人との出会いも楽しみにしている。日本人モデルとの撮影だってもっと挑戦したい。何か面白い企画を思いついたら、いつでも連絡してよ」

 

ユルゲン・テラーの私生活をもっと知りたい、5つのQ&A

Q. 理想の朝食のメニューは?
A. 日本食。美味しいしヘルシーで最高。

Q. プレイリストの一番上に来る曲は?
A. ファルコの『ロック・ミー・アマデウス』

Q. Netflixは観る?お気に入りのショーは?
A. めちゃくちゃ観てる。一番のお気に入りは『オザークへようこそ』

Q. 東京で必ずやることは?
A. 食べ歩き。

Q. 一番良く使う絵文字は?
A. ❤️

 

MCM GINZA HAUS Iでは、ケーニッヒ東京のエキシビション第2弾が開催中。

リナス・ファンデ・ヴェルデ「エンジンをかけたまま」
会期:2020年1月21日~2020年2月23日
場所:ケーニッヒ東京(東京都中央区銀座3-5-4 MCM GINZA HAUS I 6階)
開館時間:11:00~19:00
休館日:月曜日、火曜日
入場料:無料
http://jp.mcmworldwide.com/
03-5524-7177

FEATURE