神秘的な風景と野生動物“自然からの贈り物”を心で感じるケニアへの旅

ケニア北部から南へ向かい、首都ナイロビのある中央部を巡る6日間の旅――道中で目にするのは、山岳地帯、砂漠、サバンナ……。その途中には湖があり、小さくはあるが文化や歴史に満たされた村々の間に、緑豊かな農園が広がっている


 ケニア北部のサンブル国立保護区。ここに来るのが初めての人も、サファリを知り尽くした人も、この地に魅了される共通した理由がある。ここではどんな人間も、野生動物や自然の風景に対して畏敬の念を抱かざるをえなくなるということだ。
 幌付きジープで移動中の車窓からは、“自然からの贈り物”としか言いようのない風景を何度も目にする。夏の真っ青な空一面をどんよりとした不穏な雨雲が覆い尽くしたかと思えば、次の瞬間、雲のすき間からいく筋もの光が地上に降り注ぐ。また、エワソ・ンギロ川近くにある「エレファント ウォッチ キャンプ」の辺りでは、象の親子が光り輝く空の下、静かに散歩し、夕暮れ時になると、バッファローたちの群れが砂ぼこりだけを残して森の中に消えて行く。

画像: 山の向こうに夕日が沈んでいく

山の向こうに夕日が沈んでいく

 滞在2日目、ケニアで初めて迎える朝。野生動物たちの生息環境を乱さぬよう注意しながら、ジープでそっと進んで行く。早朝にだけ、ライオン、チーター、サイ、キリンなどの動物たちに出会うことができるのだ。さらに道を進みたどり着いたナクル湖では、膨大な数のフラミンゴが整然と立ち並び、どこまでも広がる青い空が鮮やかなピンク色を際立たせる。さらにその風景が水面に反射して、草木の緑と相まって、まるで色が無限に変化しているかのようだ。なぜこの土地がこれほどまでに人々の心を魅了するのか? その理由がはっきりとわかった気がした。

 サファリでの体験は、心の中を平穏と静寂で満たしてくれる。それは、母なる大地の美しさに触れることで、自分の内側を見つめ、壮大な自然を目前に感謝の念を思い起こさせてくれるような感覚だ。

 ケニア南部にある「アンボセリ国立公園」は、アフリカで最も高い山「キリマンジャロ」を一望できる。しかもそこでは、あのマサイ族と会えるのだ。有料にはなるが、マサイ族の村に招待してもらい、彼らの独特な文化や毎日の生活の一端を垣間見ることもできる。音楽とダンス、それに衣服やアクセサリーは色鮮やかかつ精巧で、マサイ族の文化に触れて心を動かされない人はいないだろう。

画像: マサイ族の人びと。女性たちは子供を称える歌を歌っていた

マサイ族の人びと。女性たちは子供を称える歌を歌っていた

画像: マサイ族やその他の部族の子供たちに授業をしている地元の学校。ここは訪問客による寄付金や世界スカウト機構からの支援で運営されている

マサイ族やその他の部族の子供たちに授業をしている地元の学校。ここは訪問客による寄付金や世界スカウト機構からの支援で運営されている

 そして数時間をかけての帰路で再度、母なる大地が、私たちにその美しさを送り届けてくれた。空がすっかり晴れ渡り、普段は雲に隠れているキリマンジャロが鮮やかな姿を現していたのだ。その夕焼けの風景が、私の身体に蓄積した疲労を一掃してくれたようだった。

画像: 晴れ渡った空にキリマンジャロが姿を現した

晴れ渡った空にキリマンジャロが姿を現した

<STAY>

Ashnil Samburu Camp(アシュニール サンブル キャンプ)
「アシュニール サンブル キャンプ」は、エワソ・ニエロ川のそばにある、快適なテント式のバンガローだ。リゾートのように庭園や、デッキチェアの並んだプールに、サバンナを一望できるバーも併設されている。“サファリ”をテーマにしたインテリアは上品で居心地がよく、立地もサンブル国立保護区に近いので、野生動物の世界を体験するには申し分のない場所だ。
www.ashnilhotels.com

画像: アシュニール サンブル キャンプのテント。目前には自然が広がる

アシュニール サンブル キャンプのテント。目前には自然が広がる

Kibo Safari Camp(キボ サファリ キャンプ)
想像してみて欲しい。夜は満天の星空のもと、酒を片手にたき火にあたり、豪華なテントで寝泊まりする。昼は、窓から遠くに見えるキリマンジャロの絶景をあなたは満喫しているのだ。ウッド調のインテリアに囲まれ、壁にはこの地に生息する鳥の絵が描かれている。伝統的な「マクティ」(わらぶき屋根)のテント内にはふかふかのベッド。「キボ サファリ キャンプ」はリラックスできて、まるで映画の中にいるかのように、ロマンチックな“サファリ”ファンタジーの世界を生きているような気持ちにさせてくれる、理想的な場所だ。レストランでは、自家農園で採れる新鮮な果物と野菜を使った多国籍料理がふるまわれる。日中の観光から帰ってきたあと、夜はプールのそばのスパでゆっくりとくつろげるという、うれしい特典付きだ。
https://kibosafaricamp.com

画像: キボ サファリ キャンプの休憩所。天気がよければ正面にキリマンジャロを姿を現す

キボ サファリ キャンプの休憩所。天気がよければ正面にキリマンジャロを姿を現す

Giraffe Manor(ジラフ マナー)
「ジラフ マナー」は有名な高級ブティックホテルだ。インテリアデザインはクラシックでありながら可愛らしい。ここの魅力はなんといっても、キリンの群れが朝と夜に訪れて来ることだろう。彼らは時には、長い首を窓の中に伸ばして、宿泊客にエサをおねだりしてくることもある。(続きを読む)
www.thesafaricollection.com

SOURCE:「Nature's Gift from KenyaBy T JAPAN New York Times Style Magazine:JAPAN BY TEXT & PHOTOGRAPHS BY WALTER GRIAO, TRANSLATED BY SHINJIRO MINATO NOVEMBER 29, 2019

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