2020.09.25

等身大のジェンダーレス・モード「道枝駿佑はありのまま」

なにわ男子のメンバーとして活躍する、道枝駿佑。彼の飾らないイノセントな姿には世代や性別、あらゆるカテゴライズを超えていく存在感がある。レースやフリルなども自然体でまとう、新しい時代のスター像がここに。

 

ありのままの自分でいたほうが何事も楽しめる

ジャニーズのブランドに恥じぬアイドルを目指して

 湿気を帯びた生暖かい空気が漂う、7月初旬。「よろしくお願いします」。新たな衣装をまとった彼がカメラ前に舞い戻るたび、スタジオに涼やかな風が吹き込む。178センチのすらりとしなやかな肉体に、美しい曲線を描く輪郭。すがすがしい切れ長の目からは、すべての人をふんわりと包み込むような穏やかさがにじみ出る。まるで、真っ白なカラーの花のような人。道枝駿佑を見ていると、ふとそんなことが頭に浮かぶ。

 撮影中の彼は、驚くほど静かだ。レースのロングドレスにも動じず、黙々とポーズをひねり出す。

「昔から、まずは自分で考えて試すことを大切にしているんです。それが正解だったら自信につながりますし、間違いでも、アドバイスから学んで引き出しが一つ増える」

 しかし堂々としたポージングを褒められると全否定。「いやいや。次はどうしよう!?って、頭は終始フル回転。ほぼパニック状態でしたよ(笑)」と、照れ隠しのような苦笑いを浮かべ、ピュアな一面を見せた。

「個人とグループの現場では、雰囲気が全然違うと思います。メンバーと一緒のときは、もっとうるさいので(笑)。安心感があるんですよね。かといって、ひとりだと不安というわけではなくて。グループは人数も多いから、それだけで迫力、オーラが出るんです。だから個人の現場では、みなさんの印象に残れるよう、グループに負けない存在感を出すぞ!という気持ちで挑んでいます」

 関西ジャニーズ Jr.のユニット「なにわ男子」のメンバーに抜擢されたのは2018年。デビュー前にして絶大な人気を誇るチームとして勢力を増す中、個人でも俳優として高い評価を獲得。今年出演したドラマ「BG〜身辺警護人〜」では木村拓哉さんと、11月に公開を控える映画『461個のおべんとう』では井ノ原快彦さんと、大先輩との共演も果たした。

「先輩方との共演は、正直、めちゃめちゃ緊張しました。勉強になることばかりでしたが、なかでも一番感動したのが、おふたりが一緒に芝居のチェックをしてくれたこと。僕がひとりで始めたら、サッと入って、アドバイスをくださって。僕も後輩と共演するときが来たら、こんなふうに、スマートにリードしたい。そのためにももっと成長しなきゃ、と気が引き締まりました」

 大のSMAPファンであった家族の影響を受け、物心がつく前からアイドルを目指すように。履歴書を送っては落ちる、を繰り返し、4度目の挑戦をした小学6年生のときに晴れて合格。それから6年がたった今、ジャニーズへの愛は薄れるどころか、日に日に強くなっているという。

「小さい頃は、キラキラと輝く姿がかっこいいな、という単純な憧れでした。でも大人になって、改めて、先輩方の偉業を肌で実感するように。ジャニーズは数々の歴史をつくってきましたが、なかでもすごいなと思うのが、30代、40代になっても活躍し続けるアイドル像をつくり上げたこと。その一員として、ジャニーズのブランドに恥じぬアイドルにならないといけない。目標は、SMAPや嵐のようにメンバーがお互いを尊重し合いながら、10年、20年と続くグループをつくること。そしていつか彼らのように、常識を覆す、新しいアイドル像を築き上げたい!」

 

自分を偽ってまで愛される必要はない

「つらいことがあっても笑顔でステージに立ち、ファンの方たちに夢を与える。50歳になっても、その姿勢を真面目に貫いていきたい」

 アイドルとしての心構えをそう語るも、理想のために自分らしさを失うことだけはしたくないと断言する。

「いろんな方とお仕事をさせていただくなかで、やっぱり人は、素の状態が一番輝けるんだなと感じたんです。偽りの姿は必ず見透かされ、自分も疲れてしまいますから。ありのままの自分でいたほうが何事も楽しめるし、心から楽しんでいるときの笑顔のほうが、魅力的だと思いませんか? それを受け入れてくれる人がひとりでもいれば、十分。むしろ、最高に幸せだと思うんです」

 好感度が重視されがちな芸能界において、さらに、アイドルという立場で、“自己愛ファースト”を実践するのは決してたやすいことではないはず。そんなこちらの心配をよそに、淡々と語り続ける。

「僕、嫌いな話題ってあまりないんですけど……容姿いじりだけはどうにも苦手なんです。自分が言われたら嫌なはずなのに、どうしてみんなは笑えるんだろう? 自虐ネタにして振り切ったりしている人もいるから、関係のない僕がどうこう言うのも変なんですけど。それでもみんな、内心、少なからず傷ついているんじゃないかな。ファッションも髪型も趣味も、センスや好みは人それぞれ。みんな違うからこそ、お互いが引き立ち、惹かれ合うものだと考えていて。僕自身が型にはめられたくないからこそ、自分は絶対にしないと決めているんです」

 堂々と、しかし決して自分の意見を押しつけることなく意見する姿からは、すでに目標とする「新しいアイドル」としての片鱗が。撮影の数週間後は、18歳の誕生日。人生の節目を前に今後挑戦してみたいことを尋ねると、間髪をいれずに「車!!免許が取りたいです!」と即答。おもちゃに目を輝かせる少年のような笑顔にまたも、不意をつかれる。

「それから、高校を卒業しても、勉強は続けていきたい。一番は語学で、社会学や経済学にも興味があって……学びたいことが多すぎて、どこから始めようかな。知識を身につければつけるほど仕事の幅が広がりそうだし、思いもしなかった才能が見つかるかも!? お仕事面では、まずなにわ男子の『メンズ校』とアリーナツアーをきちんとやりきりたいですね。今年は僕もメンバーも、個人の仕事をたくさんさせていただいたので。それぞれが別の現場で身につけた力をしっかりと発揮し、パワーアップした姿を届けたいです」

PROFILE
みちえだ しゅんすけ●2002年7月25日、大阪府生まれ。関西ジャニーズJr.によるユニット、なにわ男子に所属。今年1月に初の全国ツアーを完遂。また個人では’19年よりソフトバンクのテレビCMシリーズに出演し、2020年早春テレビCM急上昇タレントランキング男性部門1位を獲得。俳優としての注目が高まるなか、「BG~身辺警護人~」に出演し、「メンズ校」の公開も控える。180cm近い身長を活かし、「東京ガールズコレクション」のランウェイなどでも活躍。

SOURCE:SPUR 2020年10月号「道枝駿佑はありのまま」
interview & text: Ayano Nakanishi

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