吉高由里子が『僕等がいた 前篇・後篇』(’12)以来、8年ぶりの恋愛映画に出演。ライジングスター、横浜流星とタッグを組んだ新作『きみの瞳(め)が問いかけている』のアナザーストーリーをスペシャルシューティング! 話題のふたりの本音に迫る。
(横浜)ペイズリー柄のロングシャツ¥500,000(参考価格)/クリスチャンディオール(ディオール)
(吉高)レザーパーツつきドレス¥227,000/ロエベ ジャパンクライアントサービス(ロエベ)
甘いセリフがないのがいい。
ラブストーリーは苦手だから
Yuriko Yoshitaka
本作の主題歌であるBTSの「Your eyes tell」をBGMに、役柄の明香里と塁の“その後”をイメージ。ドラマティックな衣装に「すごく新鮮ですね。撮影の間は、不思議な感じでした。ずっと人形になってるような」(横浜)、「がしっとやられてね(笑)」(吉高)。
(横浜)白シャツ¥9,900/Shuryパンツ¥26,000/LAD MUSICIAN 原宿(ラッドミュージシャン) その他/スタイリスト私物
(吉高)ジャケット¥29,000/VINIVINI LUXE 中に着た白シャツ¥9,800/スミスアーティーク 中に着たTシャツ¥45,000/ライラヴィンテージ パンツ¥53,000/Vini vini アスコットタイ¥6,800/オールドハット ブレスレット¥36,000/ストローラーPR(リューク)
フェミニンな服をまとった横浜流星の姿が目に入るなり、「いいじゃん!」と弾けるような笑顔を浮かべた吉高由里子。少し照れくさそうにうなずいた横浜は、撮影中も役者の先輩として自然にリードをする吉高に安心して体を預ける──。映画『きみの瞳が問いかけている』で過酷な運命に翻弄される恋人同士=明香里と塁を演じたふたりの間には、確かな信頼関係が築かれているように見えた。
横浜 僕としては、すごく引っ張ってもらったなと思ってます。
吉高 個人的に楽しんでいただけ(笑)。
横浜 あはは。クランクイン前に時間をつくってくれて、焼肉に行ったのがすごくきいたかも。
吉高 監督と流星と3人で行って。そこで連絡先交換して、撮影中は毎日連絡取ってたもんね。
横浜 うん。僕はそういうやりとりに助けられてました。
そういう自分とつき合っていくしかない!
深い傷を負いながらも、共振するように惹かれ合う明香里と塁。お互いの存在は、その傷を許し合える“ホーム”のような場所でもある。吉高と横浜にとっての“還る場所”とはどこなのだろうか?
横浜 地元の中学の同級生のことが浮かびます。昔からの自分を知っていて、いつでもあのときのままでいさせてくれる存在ですね。
一方、吉高は2014年に約一年間の充電期間を経験しているが──。
吉高 休ませてもらったのは、20代半ばの働き盛りの時期でした。自分の顔や声をモニターで見たり聞いたりするのが疲れてしまって。少し休みたいなと思ったんです。そうしたら、「一年休みあげるから好きなことしておいで」と言ってもらえたので、すぐに海外に行きました。でもやがて、仕事がなくなったことに不安も覚えない自分が逆に怖くなってきたんです。「こんなに待ってくれる会社、なかなかないよな」とも思い直して、「すいません、働きます。休ませてくれてありがとうございます!」とお願いして復帰したんです。充電期間中は自分とちゃんと向き合って、いろんなことを考えました。(横浜を見て)あまり背負い込みすぎないようにね(笑)。映画の撮影中もすりきり一杯みたいなときあったよね?
横浜 ありがとうございます(笑)。でも僕は、子どもの頃からやっていた空手でメンタルをコントロールする術を培えているのかもしれない。「ギリギリだ」って思っても、そこで踏ん張れるんですよね。
吉高 すごいね。私はすぐ泣いちゃう。去年もドラマの撮影中に、セリフ噛んで言えなくて泣いちゃった。
横浜 そうやって感情を開放できるのはうらやましいですよ(笑)。
吉高 あはは、ありがとう。でもそのときが29歳とかで……だからもう諦めて、そういう自分とつき合っていくしかないって思ったんですよね。やっぱり私は、映画やドラマの現場が好きなんだと思います。一気にたくさんの人と出会ってコミュニケーションを取る職業もなかなかない。そこに恐怖もあるんですけど、すごい速さでいろんな刺激をもらってると感じています。流星は、「お芝居したい!」っていうタイプ?
横浜 それは最近になってからなんです。事務所に入った当初の演技レッスンでは、「こんなにたくさんの人の前で泣けないよ!」って思いながらやってたこともありました。でも、どんどんいろんな人と関われるようになって、好きになってきたんです。
そうやって感情を開放できる
のはうらやましいです(笑)
Ryusei Yokohama
いろんな人がいるんだと思うことが大事かもしれない
本作の主題歌は、今年9月、韓国人アーティストとして初めて米ビルボード・シングルチャートの1位を獲得したBTSによる「Your eyes tell」。最年少メンバーのジョングクが書き下ろし、横浜が演じる塁の目線で綴られたせつない歌詞は、その後のふたりの未来をも予感させる。
吉高 すっと心の中に入ってくるような、きれいな声。映画にのることによって引力がかなり増していて。歌の力って大きいなと改めて感じました。
横浜 塁目線の歌詞ということもあって、心にドンと来た。すごく作品の世界観に寄り添ってくれたと思います。今号のテーマにちなみ、寄り添う力の重要性についても聞いてみた。
吉高 やっぱりこの業界はクセのある人が多いんですけど(笑)、自分とはちょっと違うなと感じても「何なんだろう?」とは思わなくなってきました。好きでも嫌いでもない、フラットなエリアが自分の中で増えたというか。「変な人~」と思ったらそれで終わり。無理やり自分に寄せようとするから、嫌な気持ちになったりするのかなと。いろんな人がいるわけですし「わからない人はわからない」という答えがあってもいい。そのほうが気持ちも和む。
横浜 僕も、昔は自分と周りをいちいち比べて、ルールを破る人のことが許せなかった(笑)。でも今は、その人にはその人の事情があるということを考えられるようになりました。人は人、自分は自分。昔はアドバイスをされても、「これが俺だから」って受け入れなかったこともあったんですけど、今はちゃんと話は聞こうという姿勢に変わった。それでわからなかったら、無理にわかろうとしなくてもいいし。たくさんの人と関わるようになって変化したのかもしれないです。“いろんな人がいるんだ”って思うことが大事かもしれないですよね。
Yuriko Yoshitaka
1988年生まれ。2006年『紀子の食卓』でデビューし、ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。2014年、連続テレビ小説「花子とアン」の主役を演じた。代表作に『蛇にピアス』(’08)、『ユリゴコロ』(’17)など。
Ryusei Yokohama
1996年生まれ。2019年、テレビドラマ「初めて恋をした日に読む話」が話題に。今年は「私たちはどうかしている」などで主演を務めた。「あなたの番です」で第15回ソウルドラマアワードのアジアスター賞を受賞。
©2020「きみの瞳が問いかけている」製作委員会
©2020 Gaga Corporation / AMUSE Inc. / Lawson Entertainment,Inc.
『きみの瞳(め)が問いかけている』
不慮の事故で視力を失った明香里(吉高由里子)と、罪を犯したキックボクサー塁(横浜流星)の人生が交差するとき、衝撃の事実が明らかになる――。空手の世界大会で優勝した経験を持つ横浜の格闘シーンにも注目。(10月23日公開中)
SOURCE:SPUR 2020年12月号「わたしたちの還る場所」
photography: Saki Omi〈io〉 styling: Yusuke Arimoto〈NANAKAINOURA〉(Yuriko Yoshitaka), Shogo Ito〈sitor〉(Ryusei Yokohama) hair & make-up: RYO(Yuriko Yoshitaka), TAICHI NAGASE〈VANITES〉(Ryusei Yokohama) interview & text: Kaori Komatsu