2008年から2012年まで「週刊少年ジャンプ」(集英社刊)で連載されていた大場つぐみ・
小畑健による大人気漫画「バクマン。」を舞台化。真城最高(通称:サイコー)と高木
秋人(通称:シュージン)の高校生マンガ家コンビが、「週刊少年ジャンプ」のトップを
目指して奮闘する様子を描く本作。サイコーを演じるのは、舞台『弱虫ペダル』舞台『PSYCHO-PASS サイコパス Virture and Vice』に出演している鈴木拡樹さん。シュージンを演じるのは、MANKAI STAGE 『A3!』やミュージカル『テニスの王子様』 2ndシーズンなどに出演する荒牧慶彦さん。多くの人気作品に出演し、2.5次元作品を牽引する存在と言って過言ではない二人に「バクマン。」愛から、役作りのプラン、これまでも共演経験があり、役者仲間として信頼しあう二人の関係性など幅広く聞いた。
松田プロデューサーと荒牧さんの雑談から始まった一大プロジェクト
―─「バクマン。」は、アニメ化、実写映画化など、様々なメディアミックスで成功を収
めています。今回の舞台化のきっかけは、プロデューサーの松田誠さんと荒牧さんの会話
がきっかけだったそうですね。
荒牧 そうなんです。松田さんとの雑談から始まりました。僕は小さい頃から、アニメや
マンガ・ゲームが大好きなんですけど、松田さんと食事をしながら、大好きな作品のことを話す中で「バクマン。」の話になったんです。このキャラクターはこの役者がいいよね、な
んてキャスティングも妄想して盛り上がっていたら、サイコーは拡樹くんがいいという
話になりました。それは、鈴木拡樹という役者が、僕にとって最も尊敬する役者の一人だからです。そして、もし舞台化できたらなら、その拡樹くんと“相棒”という間柄で芝居をしてみたいと思いました。この二つの気持ちから、拡樹くんがいいと名前を挙げさせていただきました。
鈴木 僕のキャスティングについての話は、製作発表会で初めて知ったんです。荒牧くんに
感謝ですね。
荒牧 迷惑じゃなかったですか?
鈴木 “相棒”に選んでくれたことがすごく嬉しいです。もともとできないけど、ますます足
を向けて寝られなくなりました(笑)。何度も共演しているけれど、同年代の役としてタッグを組むことはなかったので、今までとはまた違った形で一緒に過ごせそうですね。しかし、本当に松田さんもすごいですよね。役者の声を拾ってくださって、これだけの大きな形で実現してくれたことが本当にすごいことだと思います
荒牧 食事をしながら話していたことが、まさかこんなに大きくなるとは。重みが増して、プレッシャーを感じています(笑)。
鈴木 作品の規模が大きすぎて、まるで会社を立ち上げているような感じだもんね(笑)。
荒牧 ほんとそうですよね(笑)。
―─お二人が思う「バクマン。」の魅力を教えてください。
荒牧 僕は単純に大好きな「DEATH NOTE」の二人がまたタッグを組んでくれたという喜び
がありました。「DEATH NOTE」が終わって寂しさを感じていたときに「バクマン。」が始まって、漫画の作り方を描く新しい観点を取り入れたストーリーに魅了されました。あと、漫画を作るというと、地味に感じるかと思いますが、地味だと思わせない表現方法にも夢中になりました。
鈴木 僕自身ももともと「バクマン。」は大好きですし、嬉しかったですね。2.5次元の舞台
を多くやらせていただく中、漫画の成り立ちや作り方に興味があったので、「バクマン。」
はそういう意味で全く知らない人間が読んでも、こんなに連載って大変なんだって知って
いくことができて、興味を刺激される作品で、毎週楽しみにしていました。
友情、努力、勝利をこういう形でも表現できるんだって、すごくわかりやすく描いてくれた作品ですよね。僕はサイコーを演じるんですけど、彼が漫画家を目指すことになる動機もすごくリアルに感じました。おじさんが漫画を描いていたからもともと興味があったけど、親が反対するだろうと、その路線は考えていなかった。では、自分の人生はどう過ぎ去っていくんだろうと考えていたとき、きっかけを与えられて、一気に燃え上がるあの感じ。そこが多くの人間が共感できるポイントだと思います。キャラクターとしても好きですね。
荒牧 僕もシュージンが好きです。頭がよくて漫画家になるきっかけがある意味、人間臭
いんですよね。宝くじを当てるよりこっちの方がお金持ちになれるって。そして絵がうま
いサイコーを見つけて、コンビを組んでやっていこうというそういうところは、僕自身もシ
ュージンに似ているのでわかります。きっかけを見つけたら、計算ずくで計画を立てる人
間なので、そこは素のままでシュージンを演じられると思います。
鈴木 不器用と器用、二人で対照的だよね。シュージンは器用で何でもできるんだよね。
だからこそ、のめり込めるものを見つけるのが大変なのかも。
―─鈴木さんとサイコーの共通点はありますか?
鈴木 不器用さが似ていると思います。自分で一歩踏み出すのにも勇気がいるところも一
緒ですね。
漫画を描く作品だから、 動きがなさそうだけど、 逆にものすごく動くことになりそう
―─演出・脚本をウォーリー木下さんが担当されます。製作発表会でウォーリーさんは、「漫画を描いていることが直感的にわかるような演劇的な仕組みを考えています。絶対誰にも
予想できないものになると思います」とおっしゃっていましたが、演技プランは考えてい
らっしゃいますか?
鈴木 まだイメージできていないですね。自分が表現する感情面で湧き上がるものや葛
藤などを板に乗せられたらと思いますが、全体像がわからなくて。本当に舞台版「バクマ
ン。」って、どうなるんだろう(笑)。
荒牧 どうなるんですかね(笑)。ウォーリーさんから「こういうことをしたい」ということは聞いているんですけど、実際、実現できるものなのか稽古に入ってみないとわからない
んですよね。画期的な演出になることは間違いないと思いますが。
鈴木 漫画を描く作品だから、あまり動かなくて舞台に向いていないんじゃないかって
思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、僕は逆にこの作品を舞台化すると聞いたとき、ものすごく動くぞって思いました(笑)。
荒牧 確かに(笑)。僕も普通の舞台より動くと思います(笑)。
お互い心の底から信頼しているからこそ、 生まれる相乗効果があるし、それを舞台の上で表現したい
―─ネット上では、お二人がW主演を務めることに期待の声が多く挙がっていました。普
段のお二人の関係性も気になります。普段どんな会話をしているんですか?
荒牧 結構ふざけあってます(笑)。舞台『刀剣乱舞』で共演したときは、手紙を読みあいっこしたりして(笑)。実際は書いてないんだけど、今まさに届いたかのように読みあうんです。例えば、こちらが「ずっと留守番しています」と言ったら…。
鈴木 僕は「こういうシーンをやりましたが、そちらはいかがですか?」という感じで、返
事を読んで。同じ舞台に出ているのに、ほぼ会わないので、架空の手紙ごっこで遊んで
ました(笑)。
荒牧 拡樹くんはとても穏やかで、ふざけるのが好きなお茶目な方なので、そこに乗っか
るのが楽しいんです。
鈴木 僕はボケるのが好きなので、別に返してくれなくてもいいんです。自己満足なんで
すよね(笑)。
荒牧 拡樹くんがそんな感じで普段はお茶目だけど、役に対する真摯な姿勢を見せてくだ
さる方なので、取り組み方やその役として生きる姿を尊敬しています。
鈴木 役者は重要な役を任されて、決めないといけない瞬間があるんですけど、荒牧くんは
決めるシーンを外すことのない役者だと思っています。彼自身が本来持っているものなんですけど、技術もどんどん高めていて、トップクラスの役者だと思います。一緒にやっていてとても頼もしいですし、気持ちも引き締まりますね。
荒牧 拡樹くんとは、殺陣をするときなど、打ちあわせをしなくても、お互いの目の動き
や身体の動かし方で、その日の殺陣のスピードが変わったりするんです。心の底から信頼
しているからこそ、生まれる相乗効果があるんだと思います。拡樹くんとは、舞台の上で
サイコーとシュージンみたいに仲よく軽妙な会話を繰り広げたことがないので(笑)、今
回の舞台が楽しみです。そして、プレッシャーも少し感じています。拡樹くんのお芝居を
受けて自分がどう応えられるのか。でも、この作品の持つ物語の力というか、拡樹くんを
はじめ、素晴らしい仲間たちとこれからいろんなものを作っていくぞというワクワク感の
方が強いです。
鈴木 サイコーとシュージンのバディ感を、セリフだけでなく、一緒に舞台に立つ中で本
当に心から信頼しあっているんだって表現できたらいいですね。こういう話をしていると、
すぐに稽古したい気持ちになってくるんですよね。演劇ではよく、お客様が入って初めて舞台が完成すると言うんですが、その言葉どおり、舞台ってこちらが想像して届けるのと同じくらい、お客様に想像していただくことによる力があると思うんです。お客様の想像をピースの一つとして加えさせていただいて、作品を完成させたいと思います。
―─原作の「バクマン。」の好きなシーンで、舞台で演じられたらいいなと思うシーンを教
えてください。
荒牧 たくさんあるんですけど、「漫画家は休んじゃダメなんだ」って、サイコーが入院しても描いているシーンですかね。身を削って、そこまで情熱をかける思いが素敵だなと思います。
鈴木 僕はサイコーとシュージンが漫画を描くための部屋を訪れるため、町中を走るシーンです。でも、ここは舞台では難しいかな?
荒牧 本当に青春って感じですよね。
―─プライベートでお二人がバディを組むとしたら何をしたいですか?
荒牧 拡樹くんはゲームをしている印象が全然ないんですけど、ゲームを一緒にしたいです。
鈴木 ちょっとだけあるよ。絶望的に下手だけど(笑)。
荒牧 僕が教えます!(笑)。
鈴木 僕がもし荒牧くんとバディを組むなら、夢物語なんですけど、無人島を買って、二人
で無人島からめちゃめちゃ発展した都市を作りたいです。
荒牧 スケール大きいですね(笑)。「シムシティ」っていうゲームがそんな感じですよ。
鈴木 ゲームでもあるんだね。無人島開拓は一人では心細いし、意見をいろいろ求めたいので、頼りにしています。よろしくお願いします(笑)。
荒牧 こちらこそよろしくお願いします(笑)。
「バクマン。」THE STAGE
https://bakuman-stage.com/
2021年10月8日(金)~17日(日)
東京都 天王洲 銀河劇場
2021年10月21日(木)~24日(日)
東京都 TOKYO DOME CITY HALL
2021年10月28日(木)~31日(日)
大阪府 メルパルクホール大阪
原作:大場つぐみ、小畑健「バクマン。」(集英社 ジャンプ コミックス)
演出・脚本:ウォーリー木下
音楽:和田俊輔
キャスト
真城最高:鈴木拡樹
高木秋人:荒牧慶彦
新妻エイジ:橋本祥平
福田真太:オレノグラフィティ
平丸一也:福澤 侑
中井巧朗:村上大樹
佐々木尚:唐橋 充
服部哲:長谷川朝晴
川口たろう:片桐仁
photogaphy:Kumi Kim interview&text Miku Sugishima
<Hiroki Suzuki> hair&make_up:AKI Styling:Miho Nakamura
<Yoshihiko Aramaki> hair&make_up:Risa Suzuki(STRINGS) Styling:Haruo Utsunomiya(YKP)
<Hiroki Suzuki>semolina <Yoshihiko Aramaki>CULLNI