夜のとばりが下りたら、湯を沸かしてお茶を入れよう。茶葉が開き、湯気とともに立ち上る香りを嗅いでいると、昼間のストレスや緊張が少しずつ解けていく。好きなお酒やフルーツ、自家製のシロップと合わせて、いつもより少し時間と手間をかけて作る「お茶割り」。簡単なフードとのペアリングで、秋の夜長を贅沢に
recipe by Ayumi Cameron Imamura
今村キャメロン明優美●「櫻井焙茶研究所」でお茶を学び、より深く日本茶を知るべく渡仏。帰国後はドリンクコンサルティングチーム「ABV+」に所属し、2020年より「茶嗜八」の屋号で、嗜好品の愉しみを茶とともに表現する。
#1 麦茶 × ウィスキー
長く残る余韻を愛おしむ
夏の定番の麦茶をウィスキーと合わせて、秋に似合うウッディな香りと味わいを長く楽しむ一杯に。エルダーフラワーを使ったお酢で、酸味と華やかな香りをプラス。少量の炭酸水を加えて味わいに奥行きを出すことで、香ばしい余韻が尾を引く、残暑にぴったりのロマンティックなカクテルが完成。
材料(4杯分) ※以下すべてのレシピも同様
麦茶 120㎖
グレンモーレンジィ 20㎖
エルダーフラワービネガー 10㎖
炭酸水 30㎖
麦茶を煮出す。氷を入れたグラスに冷やした麦茶とグレンモーレンジィ、エルダーフラワービネガーを入れて、炭酸水を注いだのち、そっとステアして。
#2 烏龍茶 × シェリー
香りの物語を味わう
前日から材料を合わせ、アルコールとその他の水分をゆっくりとなじませるのがカギ。独特の強い香りと厚みのある味わいのシェリーを、白い花のようなすっきりとした烏龍茶や桃の果汁、パクチーと合わせた。口に含むと複雑な風味が時間差で立ち上っては消え、香りのグラデーションを楽しめる。
烏龍茶 320㎖
シェリー バルデスピノ・イザベラ クリーム 80㎖
桃 1/2スライス
パクチー 10g
烏龍茶を入れ、氷水を張ったボウルなどを使って急冷する。食品保存容器や保存袋などに烏龍茶と桃を含む材料をすべて入れ、24時間冷蔵庫で漬け込む。桃の果肉を搾り、布などで濾して加えてステアする。
#3 煎茶 × ジン
反芻する夏の思い出
日本の山里に古くから自生する貴重な野生種である在来種の茶葉。雨が降ったあとの森のような、みずみずしい青さや土の香りを持つ。ボタニカルなアロマを持つジンや、青臭さのあるキュウリとの相性も抜群だ。炭酸水と割ったさっぱりとしたお茶割りが、夏の日差しのもと過ごした日々を思い出させる。
在来茶ジン 30㎖
└ 煎茶 在来種 5g
└ ヘンドリックスジン 200㎖
(上記を24時間冷蔵庫で漬け込み濾したもの)
紫蘇シロップ 10㎖
ソーダ 120㎖
キュウリ スライス 4枚
紫蘇の葉(20枚)を手でちぎる。水(100㎖)を沸かして、紫蘇と砂糖(100g)を加え混ぜる。蓋をして鍋の熱が冷めたらひと晩冷蔵庫でなじませたのちに濾して、紫蘇シロップを仕込む。茶葉とヘンドリックスジンを合わせ、冷蔵庫で24時間漬け込んだのちに濾し「在来茶ジン」を作る。氷を入れたグラスに、在来茶ジンと紫蘇シロップを入れ、ソーダで割ってそっとステアし、キュウリを添える。
#4 紅茶 × ブランデー
舌に広がる甘美な刺激
クラシックカクテルの「サイドカー」をオマージュし、ローアルコールなお茶割りに。紅茶は急冷することで風味を閉じ込めた根野菜のような香りに。ラベンダーシロップや柑橘の風味を加えることで、ブランデーのアルコールの刺激感を和らげた。厚みのあるボディに華やかな香りが漂う、舌の上で転がしてゆっくり味わえる一杯。
紅茶 120㎖
ヘネシー 20㎖
グランマルニエ 5㎖
レモンジュース 7〜10㎖
ラベンダーシロップ 5㎖
ラベンダーシロップを仕込む。水(100㎖)を沸かしてドライラベンダー(2g)を入れて、香りが立ち込めたら火を消す。上白糖(100g)を入れて溶け切ったら蓋をして置いておき、冷めたものを濾してでき上がり。紅茶を入れて、氷水を張ったボウルなどで急冷させる。氷を入れたグラスに材料をすべて入れ、そっとステアする。
#5 焙じ茶 × メスカル
印象的な一杯を食後酒に
食事の余韻を楽しみ、消化吸収を促進するための食後酒にはメスカルを使った個性豊かな一杯を。独特な味わいの焙じ茶の在来種と、香りの強いメスカルを、ブドウを使ったジュース・ヴェルジュとラベンダーのシロップ(レシピは#4を参照)が橋渡しする。少しダークでスモーキー、華やかさも兼ね備えたカクテルの完成だ。
焙じ茶メスカル 160㎖
└ メスカル 200㎖
└ 焙じ茶 5g
(上記を合わせて24時間冷蔵庫で寝かせたもの)
ヴェルジュ 5g
ラベンダーシロップ 10g
焙じ茶メスカルと材料は、24時間じっくり冷蔵庫で寝かせて、前割りにしておく。飲むときにお好みでレモンピールを入れてもおいしい。
秋のお茶割りペアリングレシピ
recipe by KAORU
かおる●「Dress the Food」主宰。フードディレクターとして広告や雑誌などで活躍するほか、企業や飲食店のレシピも考案。アーティストとして制作する作品「Food On A Photograph」ではファッションブランドとコラボレーションも。
紅茶×ブランデーには…①巨峰のグリルとモッツァレラ
紫色のペアリング。ブランデー、グランマルニエと合わせた巨峰を、皮ごとグリルすることで甘みが増し、香ばしいフェンネルがほどよいアクセントに。クリーミーなモッツァレラと紅茶は相性ぴったり
材料(1人分)
巨峰 8〜10粒
モッツァレラチーズ 1個
はちみつ 大さじ1
塩 適量
┌ オリーブオイル 大さじ2
| フェンネルシード 小さじ1
A シェリー酒ビネガー 小さじ1
| レモン汁(あればメイヤーレモン) 小さじ1
└ 塩 小さじ1/2強
❶ボウルにAを混ぜ合わせ、巨峰を加えて全体をなじませる。
❷①を耐熱容器へ移し180度のオーブンで約10分、巨峰の皮が破れて少し焦げ目がつくまで焼く。
❸器にモッツァレラチーズを置き、横に②を汁ごと添える。
❹仕上げにはちみつと塩を全体にかける。
※フライパンでも調理可能だが、できればオーブンが望ましい。
※フライパンの場合の①②の工程:フライパンにオリーブオイル、フェンネルシードを加え弱火で1分加熱したら巨峰を加え、塩をして中火で4〜5分炒める。皮が破れて少し焼き目がついたらシェリー酒ビネガー、レモン汁を回しかけ、さらに30秒ほど炒める。
麦茶×ウィスキーには…②さつまいものバター焼きマスカルポーネヨーグルトとデュカ添え
麦茶の香ばしさにスパイスとナッツを砕いたデュカ、ウィスキーにさつまいものバター焼きを合わせ、マスカルポーネヨーグルトで酸味のバランスを加えた一皿
材料(1人分)
さつまいも(小ぶりなもの) 1本
バター 10g
塩 適量
┌ マスカルポーネ 100g
A ギリシャヨーグルト 50g
└ 塩 小さじ1/2
デュカ(作りやすい分量)
ヘーゼルナッツ 70g
白ごま 大さじ1
コリアンダーシード(ホール) 大さじ1
クミンシード(ホール) 小さじ1/2
フェンネルシード(ホール) 大さじ11/2
塩 小さじ1/2
黒こしょう(粗挽き) 小さじ1/2
❶デュカの材料をフライパンに入れ、弱火で3分ほど空炒りしミキサーで粗く砕けるまで攪拌する(ミキサーがなければ保存袋などに入れて麺棒でたたく)。
❷さつまいもは半分に切り、耐熱容器に入れ水を少しふり、ふわっとラップし、5分加熱する(中心部まで火が通るように)。
❸フライパンにバターを入れ、②のさつまいもをこんがりきつね色になるまで中火で両面焼く。
❹③のさつまいもに混ぜ合わせたAをのせデュカをたっぷりかけ、塩を適量ふる。
※仕上げの塩はマルドン塩などのフレーキーなシーソルトがおすすめ。
※デュカは市販のものでも可能。
煎茶×ジンには…③真鯛、いちじく、グレープフルーツのカルパッチョ
在来茶葉の青さにさっぱりした鯛を、ジンのボタニカルな香りに旬のいちじくを。酸味と甘みのあるグレープフルーツがつなぎ役に。みょうがとピリッとするカイエンペッパーがアクセントとしてきく
材料(1人分)
真鯛の刺し身 4〜5切れ
いちじく 1個
グレープフルーツ 1/2個
みょうが 1/2個
オリーブオイル 大さじ2
塩 小さじ2
白こしょう 適量
カイエンペッパー 少々
❶いちじくは皮をむき薄く輪切りにし半月形にカット。グレープフルーツは房ごとに切り、みょうがは薄切りにする。
❷真鯛に塩少々で下味をつけておく。
❸グレープフルーツ、いちじく、真鯛の刺し身の順で盛りつけ、全体にしっかり塩をふり、白こしょうをかけみょうがを散らす。
❹仕上げにオリーブオイルを回しかけ軽くカイエンペッパーを全体にふる。
烏龍茶×シェリーには…④生ハム、マッシュルームとトレビツのサラダ
桃の甘みにトレビツの苦み、生ハムの塩味を合わせた。ドレッシングにはシェリー酒ビネガーを使うことでお酒とリンクした味わいに。まとめ役にはグレープフルーツの果汁とマスタードを
材料(1人分)
トレビツ 3枚
マッシュルーム 1個
生ハム 2枚
タイム 葉の部分2つまみ分くらい
┌ マスタード 小さじ1/2
| グレープフルーツの果汁 大さじ2
A シェリー酒ビネガー 小さじ1
| オリーブオイル 大さじ1
| 塩 小さじ1/2
└ 白こしょう 適量
❶トレビツ、生ハムは食べやすい大きさにちぎり、マッシュルームは薄切りにする。
❷ボウルにAを混ぜ合わせ①を加え、トングなどで全体をよく絡める。器に盛り、最後にタイムの葉を散らす。
SOURCE:SPUR 2021年11月号「家時間のお酒をアップデート お茶割りナイト」
photography: Nathalie Cantacuzino styling: Mayu Yauchi cocktail recipe: Ayumi Cameron Imamura food recipe: KAORU edit: Rio Hirai
※kr1(デンマーク・クローネ)=約17.49円です(9月1日現在)。