【長尾智子さんの、シンプルでおいしいレシピ】 “気負わずおせち”のススメ

手作りのおせちは憧れるけれど、時間も手間もかかりそう……。そんなあなたのために、長尾智子さんが教えてくれた”気負わない”おせち。2022年のお正月は気楽にトライしてみては?

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「今は昔と違って、おせちを長く日持ちさせたり大量に仕込む必要もないから、おつまみを作る延長のような気分で気楽に作ってみては」と長尾さん。「黒豆など時間がかかるものもあるけれど、作業は意外と単純。和え物や焼き物も、お正月の食材を取り入れたり盛りつけを工夫するだけでおせちの一品になります。お重がなければ塗りのお弁当箱に詰めてもいいし、平皿に盛り合わせるだけでも特別感が出て、ぐっとお正月らしくなりますよ」

Profile 長尾智子
ながお ともこ●フードコーディネーター。雑誌や書籍で活躍するかたわら、オンラインストア、SOUPs(soup-s.shop/)を展開中。保存食がテーマのSPURの連載も好評。「おせちも保存食も自分で作ると、市販品を買うときにもしっかり吟味するようになるもの。やはり、自家製はおすすめです」

おつまみ代わりの和え物と酢の物

「おせちはしっかり甘さをつけたものが多いので、さっぱりした和え物や酢の物はいくつあってもうれしい」。お正月らしい素材を使いつつ、酒の肴になる4品。

いくらの煎り酒漬けと山いも

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「梅干しの酸味や日本酒のコクがきいた、煎り酒にいくらを漬けて」

材料 (4〜5人分)

いくら
約150g

A(煎り酒の材料)

日本酒(清酒) 
300㎖
梅干し
大1個
赤じそ(梅干しに漬けたもの)
少々
昆布
5〜6㎝角1枚
レモンのスライス
2枚

山いも
約15㎝
米酢
大さじ1
レモンの搾り汁
小さじ1
少々
三つ葉の茎 
少々

作り方

❶いくらは流水で洗い、皮が浮いてきたら取り除き、しっかり水気をきっておく(塩漬けの場合はそのままでよい)。
❷Aの材料を鍋に入れ、弱火にかける。20分ほど煮詰めて火を止め、濾して冷ます。いくらとガラスなどの保存容器に入れ、レモンのスライスを加えて一晩漬け込む。
❸山いもは皮をむいて3㎜にスライスし、太さに応じて2~4等分に切り分けてボウルに入れる。塩をふり、ざっと混ぜてから米酢とレモン汁を加え、なじむまで混ぜ合わせる。三つ葉の茎はさっとゆでて1.5㎝程度に切り分けておく。
❹ 器に山いもを入れ、②のいくらをスプーンでのせる。仕上げに三つ葉を散らす。いくらは漬けたまま冷蔵で4〜5日保存可。

数の子とゆり根の和え物

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「花かつおとゆず果汁でさっぱり仕上げる、箸休め的な一品」

材料 (4〜5人分)

塩数の子
3本
かつおだし
250㎖
しょうゆ
80㎖
てん菜糖 
小さじ2
塩 
16g
花かつお
適宜
ゆり根
1株
ゆず果汁
約1個分

作り方

❶数の子はたっぷりの水につけて5時間以上おき、薄皮が浮いてきたらそっとむく。水を変え、水800㎖に塩を加えてさらに5〜6時間かけて塩気を抜く。
❷しょうゆとてん菜糖、かつおだしを鍋に入れ煮立てて火を止める。粗熱が取れたら塩抜きした数の子に回しかけて漬け込む。
❸ゆり根は1枚ずつはがして洗い、傷のついた部分をナイフで取る。大きなものは2〜3等分に。鍋に湯を沸かし、厚みのあるものを先に入れ、2分ほどたったら薄くて小さいものも加え、1分ほどで引き上げて流水で粗熱を取る。塩少々(分量外)とゆず果汁を軽くふっておく。
❹食べる前に数の子を漬け汁から引き上げて食べやすく割り、たっぷりの花かつおを加えて混ぜる。数の子とゆり根ともに盛り合わせる。

【長尾智子さんの、シンプルでおいしいレシの画像_4

「サーモンと大根を酢漬けにしてロールに。三つ葉がアクセント」

材料 (約12本分)

〈サーモンの酢漬け〉
アトランティックサーモン

厚みのある四角い切り身1切れ
塩 
小さじ1
てん菜糖
約小さじ1
白ワインビネガーか米酢
大さじ3

〈大根の甘酢漬け〉

大根(細めのもの)
約7〜8㎝
小さじ⅓
昆布
細切り3〜4枚
てん菜糖 
小さじ1
米酢
大さじ4
三つ葉
約12本

作り方

❶サーモンは厚みを2等分し、細長く切り分けて12切れにし、バットに並べる。塩、てん菜糖をふり上下を返し、全体にまぶしたら酢をふりかけ冷蔵庫に1時間以上おく。
❷大根は皮をむき、スライサーで薄切りしてボウルに入れる。塩をふって混ぜ、しんなりするまでおいてからそっと水気を絞る。バットに並べて間に昆布を挟み、てん菜糖と米酢をよく混ぜ合わせて回しかける。ラップをかぶせて1時間ほどおく。三つ葉はさっとゆでる。
❸①のサーモンの水気を拭き取り、酢少々(分量外)を軽くふる。大根を3〜4枚、半分くらいずらしてまな板に重ね、端にサーモンをのせてそっと巻き、三つ葉を巻いて結ぶ。

たたきごぼうのごま和え

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「甘さを控えて酸味をきかせた、サラダ感覚で食べるごま和え」

材料 (4〜5人分)

ごぼう
1本

A(漬け込み調味料)

てん菜糖 
60g
ひとつまみ
米酢
100㎖
100㎖

B(仕上げの和え衣)

しょうゆ
大さじ1
てん菜糖
大さじ1
米酢 
大さじ3
レモンの搾り汁
小さじ1
すりごま
大さじ3

作り方

❶ごぼうは包丁の背で皮をこそげ取り、流水で洗う。適当に切り分け、太い部分は縦に2等分する。鍋に入れ、水をたっぷり注いで柔らかくなるまでゆでる。水気をきり、2.5㎝くらいに切り分けて、保存容器などに入れる。
❷Aの材料をよく混ぜ合わせ、てん菜糖を溶かす。①のごぼうに回しかけ、キッチンペーパーをかぶせて乾かないようにして一晩漬け込む。
❸食べる前にすりごまを他のBの材料と混ぜ合わせる。水気をきった②のごぼうと和え、よく混ぜ合わせて器に盛る。ごぼうは甘酢に漬けた状態で、5~7日ほど保存可。

やさしい手順で作る人気の2品

いつか作ってみたい、おせちの定番。「黒豆は先に柔らかくゆでれば、失敗知らず。 栗きんとんも手作りなら甘さが加減できるし、しっかり煮詰めてデザートにアレンジも」

栗きんとん2種

【長尾智子さんの、シンプルでおいしいレシの画像_6

「さつまいもの皮を素揚げにして飾ると、味や見た目のアクセントに。でき上がったきんとんをさらに練りながら火を通すと型抜きができる硬さになって、和菓子のようなデザートになります」

材料 (作りやすい分量)

さつまいも
約300g
グラニュー糖 
150g
粗糖またはてん菜糖 
120g
栗の蜜煮
約12個と蜜少々
植物油 
 適宜

作り方

❶さつまいもはピーラーで皮をむき、両端を切り落として3㎝の輪切りにする。太い部分は2等分し軽く水にさらして鍋に入れる。さつまいもがかぶるくらいの水を注ぎ、中火にかける。煮立ってアクが出たらすくい、柔らかくなるまで煮る。
❷さつまいもが柔らかくなったら火を止め、2種類の砂糖を全部加えて混ぜる。栗の蜜を大さじ2〜3程度加えて弱火にかけ、木べらで絶えず混ぜながら水気を飛ばしていく(はねるので注意)。木べらを持ち上げると、とろりと落ちるくらいになったら栗を加えて混ぜ、火を止めて冷ます。基本の栗きんとんが完成。
❸デザートのアレンジ。でき上がったきんとんを取り分けてさらに練り、木べらを持ち上げてしばらくしてやっと落ちるくらいまで煮詰めたものをバットなどに移し、2〜3等分に切り分けた栗を埋めて完全に冷ます。丸く型抜きし(ナイフで角切りにしてもよい)、残ったきんとんはラップに包んで絞り、小さな巾着形に。
❹皮を素揚げする。さつまいもの皮を水にさらし、斜めに切り分けて水気をふき取る。小さなフライパンに油を温めて皮をこんがりと揚げ、キッチンペーパーに取って軽く塩(分量外)をふる。きんとんに飾る。そのままチップスとしてお酒に合わせても。

黒豆

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「初心者でもうまくいくコツは、まず黒豆をゆでて柔らかくしておくこと。砂糖を加えると際限なく感じるほどアクが出るので、粘り強くすくいましょう。3種の砂糖を合わせると深みのある味わいに」

材料 (作りやすい分量)

黒豆(大粒のもの)
300g
グラニュー糖
150g
粗糖またはてん菜糖
100g
黒糖
20g
しょうゆ 
小さじ2

作り方

❶黒豆はさっと洗ってボウルに入れ、十分かぶるくらいの水を注いで半日~一晩おく。厚手の鍋に水気をきって入れ、黒豆がかぶるくらいの水を注いで中火にかける。煮立ってきたら少し火を弱めて、途中で水が減ったら適宜足しながら、柔らかくなるまで約1時間ゆでる。
❷①の鍋に3種類の砂糖としょうゆを加えて混ぜ、かぶるくらいたっぷり水を足す。弱めの中火にかけて、アクが大量に出るので、ほぼなくなるまで丁寧にすくい取る。このとき、水を多めに足すとアクをすくいやすい。
❸②のアクをきれいにすくったら、コトコトと煮立つくらいの火加減にし、黒豆が水面に出ないように水を足しながら2時間煮込む。火を止め、ふたをして、そのまま一晩おく。翌日、同じように1時間煮て冷めるまでおき、味を含ませる。煮汁をきって盛りつける。保存は煮汁に浸かるようにしておくとふっくらと保てる。

素材をシンプルに楽しむ焼き物と煮物

主役になる焼き物や煮物は、手をかけすぎず、素材を生かして。「このくらいのシンプルな料理が何品か並んでいるのが理想」

【長尾智子さんの、シンプルでおいしいレシの画像_8

里いものゆず風味煮

「里いもの皮は厚くむかず、形を生かして煮るといい。ゆずの果汁は、数の子とゆり根の和え物に使って」

材料 (作りやすい分量)

里いも(中)
約6個
昆布
約10㎝角1枚
しょうゆ
80㎖
みりん
80㎖
てん菜糖
小さじ2
少々2
ゆずの皮
1個分

作り方

❶里いもは皮がついたままよく洗って鍋に入れ、たっぷりの水を注いで中火にかける。煮立ったら5分ほどそのまま煮、里いもを取り出す。流水で熱を取り、上下を落として皮をむく。湯を捨てた鍋に戻し、たっぷりの水を注いで中火にかける。煮立ったら火を弱めて煮崩れないように静かに火を通す。竹串がすっと通ったら引き上げる。
❷ 鍋に昆布と水800㎖を入れて20分ほどおき、調味料を全部入れて中火にかける。煮立ってきたら昆布を取り出し、里いもをそっと入れ、クッキングシートをかぶせて(真ん中にはさみで切り込みを入れる)落としぶたにして、15分ほど静かに煮る。
❸ ②の火を止め、そのまま冷めるまでおいて味を含ませる。適当に切り分けて器に盛り、すりおろしたゆずの皮を飾る。保存はつけ汁に浸かった状態で。1週間ほどで食べきること。

五目松風

「具の種類を増やすと彩りよく、食感も楽しい。おせちのメインディッシュ的な存在に」

材料 (18㎝の角型 1台分)

鶏ひき肉(ももと胸)

約200gずつ
金時人参 
3、4㎝
きくらげ(生)
2個
銀杏(水煮)
約10個
しいたけ
2本
くるみ
 20g
白味噌
大さじ2
1個
少々
片栗粉
小さじ2
けしの実
適量

作り方

❶人参は薄くスライスしてから粗く刻む。きくらげは根元を切り落とし、粗く刻む。銀杏も同様に刻む。しいたけは石づきを落として軸を縦に薄切りし、笠も薄切りにして端から粗く刻む。くるみは粗みじんに刻む。
❷ボウルにひき肉を入れけしの実以外の材料を全部加え粘りが出てくるまでしっかり練り合わせる。
❸オーブンを180℃に温める。型にオーブンペーパーを敷き、②を詰めてゴムベラなどで平らにならす。けしの実を全体に散らし、オーブンへ。30分焼き、200℃にして10分ほど焼いて香ばしい焼き色をつける。
❹型からはずし、しっかり冷めてから切り分ける。冷蔵保存して4〜5日くらいで食べきること。

海老の甘酒焼き

「シンプルな味つけでも奥深いおいしさ。普段の食卓にも合います」

材料 (作りやすい分量)

えび(ブラックタイガーなど大きめのもの)

約250g
塩 
適宜
甘酒
約100㎖

作り方

❶えびは尻尾を残して殻をむき、背に切り込みを入れて背わたを取り、ボウルに入れて塩をふる。全体を混ぜ合わせてから流水で塩を洗い、水気をしっかり取っておく。
❷甘酒に塩をふたつまみくらい加えて混ぜる。小鍋に入れて弱火にかけ、1分ほど煮詰める。えびをボウルに入れ、煮詰めた甘酒を加えてよく混ぜ合わせる。
❸オーブンを200℃に温める。天板にオーブンシートをのせ、えびを並べる。ボウルに残った甘酒をえびに少しずつのせて10分ほど焼く。粗熱を取って盛りつける。三つ葉などを添えるとより華やかに。

SOURCE:SPUR 2022年2月号「気負わずおせちのススメ」
photography: Masahiro Sambe styling: Miwako Tanaka text: Kaori Okuda

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