HELLO! GRACE VAN DIEN
グレース・ヴァン・ディーンを知っていますか?Netflixの大ヒットシリーズ「ストレンジャー・シングス」シーズン4の新キャストに選ばれたLA育ちの25歳。憧れのハイブランドを身にまとった新時代のミューズを現地でスペシャルシューティング!
ホームタウンで装うフェスティブ・モード
スキーリゾートから着想を得たシャネルのコレクション。キルティングを施したジャンプスーツで、来たるホリデー・シーズンをお祝い。
リサイクルカシミヤ素材のコートは手作業による風合いが美しい。チュールのスカート、ハットを合わせて、海辺のドレスアップが完成。
思い出が詰まったマリブビーチ
ロサンゼルスの太陽光に反射する水面の輝きと、ブラウスの光沢感が、グレースの魅力を引き立てる。生まれ育ったビーチでは、自然と気負いない笑顔に。
チャウチャウを相棒に次はどこへ出かけよう
大きなリボンが目を引くミニドレスには、ラバーブーツを合わせて抜け感を。3Dプリントのペタルを施したクチュールテクニックに惚れぼれ。お気に入りの着こなしは、いつもモチベーションを高めてくれる。
“演技のほうから私を見つけてくれたと信じてる”
約束の時間の15分前に着くと、グレース・ヴァン・ディーンはもうスタジオ内のベンチの隅っこに座っていた。LAにしては珍しく、夜に雨が降り、やや肌寒かったその日、彼女の服装は、ゆったりした短め丈のフードつきセーターにジーンズ、アディダスのスニーカー。ノーメイクの(撮影のためにこれからプロに仕上げてもらうので当然だが)肌は透き通るようで、満面のほほえみを反射してさらに輝いている。
ハリウッドでは昔から20代の俳優が高校生役を演じるのは普通だったが、グレースの場合は、25歳という実年齢を知らなければ、十分、現役の高校生で通用しそうだ。そんな彼女は、来年配信が始まる「ストレンジャー・シングス」第4シーズンに登場する新しい役を、楽々と獲得してしまった。
「私が演じるのは、高校のチアリーダー。チアリーダーが『ストレンジャー・シングス』に出てきたことは、これまでなかったんじゃないかな。でも、彼女は、映画やテレビによく出てくるような意地悪な女の子ではないのよ。内面に悲しみや暗い部分をたくさん抱えている。なぜなのかは、ここでは言えないんだけどね(笑)」
役をオファーされたのは、2019年。パンデミックにより、撮影には思いのほか時間がかかってしまった。
「撮影が行われたのはジョージア州。この半年ほどはLAとジョージアを行ったり来たりだったわ。現場ではすごく厳しいコロナ感染対策がなされていた。週3回PCR検査を受けたし、テイクの合間には毎回マスクをしないといけないの。それはいいことだと思う。『ストレンジャー・シングス』の仲間は、みんなすごくいい人たちだった。自分がそこに入れてもらえたなんて、信じられないわ。実は今もまだピンとこないのよ。配信が始まったら、実感できるのかもしれないけれど」
母方の祖父母も、両親も、叔父や叔母、姉も俳優。でも、この道に進もうと早くから決めていたわけではない。
「幼い頃からずっとカメラの前に立つ父を見て育ったの。それ以外の生活を知らないから、これが普通だと思っていた。西部劇で馬に乗っている父を見るのは普通なんだと(笑)。私も乗馬をして育ったし。でも、自分も役者になるんだとは思っていなかったのよね。小さい頃は、ライターか心理カウンセラーになるのが夢だった。今もオンラインで心理学のクラスを取っているのよ。結局この道に入ったのは、(作品との縁があり)演じるチャンスが巡ってきてくれたからだと思ってる」
演技は楽しいけれども、これを一生のキャリアにするのかどうかと聞くと、「わからない」と答える。
「将来自分がどうしているのか、どこに住んでいるのか、想像がつかない。でも、監督はしてみたい。短編作品の監督をして、自分で出演もしたことがあるの。それがとてもいい経験になったから、もっとやってみたい」
彼女の興味の対象は、映画やテレビの世界だけにとどまっていない。たとえば絵を描くことも大好きだ。
「絵は、子どもの頃に習った。父がレッスンを受けさせてくれたの。でも私は反抗的で、先生の宿題にも、わざと抽象的なものを描いていっては『グレース、こういうのじゃないってわかっていたんでしょ?』と言われたりしたわ(笑)。だからほとんど独学と言えるのかも。ほかには読書も好きだし、写真も撮る。料理も得意(特に地中海料理やメキシカン)。飽きっぽいのかもね。いつも何か新しいことを探してる。そうやって脳を刺激していたい」
そんなふうに常に手を動かしているグレースは、パンデミックでLAがロックダウンになっても、退屈はしなかったという。
「もともと家にいるのが好きだし、部屋でずっと創作をしていたわ。女友達5人とみんなリモートでウェブ作品シリーズを作ったりもしたのよ。監督、脚本は私。そうやって私と友達が演技を続けられるようにしたの。仕事ではないにしても、練習にはなるから」
義母の影響で16歳の頃から政治的、社会的なことに強い関心を持ってきた彼女は、昨年アメリカで「ブラック・ライブズ・マター」が盛り上がったときにも、刺激を受けた。
「もちろん、私も常に学び続けているけれど、ほかの人たちも意識を高めていたのは、うれしかった。よりよい未来を実現するためには、大きな変化が起こらないといけない。今は、多くの人がその変化を求めているように感じる。それでもまだ20年くらいはかかるかもしれないわね」
ビーフェイスの奥には、ずっと大人の顔があった。
1 8歳のグレース。フロリダのマーメイドキャンプに参加し、レッスン後に公認証書をもらった
2 幼少期から父とは仲よし。誘われてよく一緒に映画を観ていた
3 父の初監督作『Sleeping Beauty』(’14)で主人公を演じたときのオフショット
HELLO! GRACE VAN DIEN
1 クローゼットで一番お気に入りのアイテムは?
グリーンストーンのネックレス。父からもらったニュージーランドのお土産。自分のために買ってはダメで、誰かにプレゼントするべきものだそう。変化や新しい始まりを象徴しているらしく、身につけると、毎日が「人生の新たな始まり」という気持ちになる。
2 一番使うアプリは?
インスタグラム。アクティブというほどじゃないけど、プライベートなアカウントを持っているの。メインアカウントより活動的かも。そこでショッピングもするし、友達の近況を知る。それとSpotifyね。
3 関心のある社会問題は?
メンタルヘルス。地球温暖化とかフェミニズムにも関心があるけど、これからは自分の内面をもっと大切にしたいと思っているの。
4 信じる言葉は?
最近友達の言葉で心に残っているのは「Good is enemy of Great("よい"は"素晴らしい"の敵)」。「よい」で満足する人は多い。それ以上があるかもしれないのに、そのことを忘れてしまう。私は、ちゃんと覚えていたいと思う。
5 あなたのプレイリストは?
誰かのためにプレイリストを作ってあげるのが好き。CDを友達のためにミックスしたりね。でも自分用にはあまり作らないかな。いくつかの音楽をシャッフルして聴く感じ。時には流れがおかしくなることもあるけれど(笑)。特に好きなのはブルース・スプリングスティーン。これは完全に父の影響ね。
6 最近観た映画またはテレビドラマは?
先日『True Detective』(’14〜)の第1シーズンをまた観たわ。そして今は『ノーゲーム・ノーライフ』というアニメを観ている。映画は『10日間で男を上手にフル方法』(’03)。もう100回以上は観てるかも(笑)。マシュー・マコノヒーが大好きなの!
7 今、読んでいる本は?
今、2冊読んでいるわ。マーガレット・アトウッドの『オリクスとクレイク』とトゥルッディ・チェイスの『When Rabbit Howls』。これは多重人格の少女についての話。私はいつも併読派なの。心理学に関係する本と、もうひとつ別ジャンルの本。
8 自信をくれる服は?
黒い服を着ていると、一番自信を感じるかもしれない。でも、オーディションには着ていけないんだけどね。地味に見えてしまうから(苦笑)。
9 環境を意識した生活をしていますか?
努力しているわ。できる限りヴィーガンの食事をしているし。新しいアパートに引っ越そうと計画中だから、中古の家具を探している。だけど個人でできることには限りがある。企業は大きな変化を起こせると思う。
10 尊敬する人は?
ポール・ニューマン! 彼は最高のロールモデル。ファミリーマンだし慈善事業も行なったし。キャリアも最高だし。チャリティへの熱量も素晴らしい。すごい人だったのよ。
Grace Van Dien
グレース・ヴァン・ディーン●1996年LA生まれ。本名はキャロリン・ドロシー・グレース・ヴァン・ディーン。母はキャリー・ミッチャム、父はキャスパー・ヴァン・ディーン。俳優一家に育ち、幼い頃からテレビなどに出演。映画『チャーリー・セズ/マンソンの女たち』(’18)にシャロン・テート役で出演。その他、Netflixのシリーズ「グリーンハウス・アカデミー」など。
SOURCE:SPUR 2021年12月号「彼女の名前はグレース・ヴァン・ディーン」
photography: Heather Gildroy styling: Masayo Kishi hair: Bobby Eliot make-up: AYAKO interview & text: Yuki Saruwatari coordination: Aura Kawasaki
※$1=約111円です(10月1日現在)。