2022.05.16

大切なバディとの出会いを語る【黒島結菜のHAPPY EVERY BUDDY!】

俳優の黒島結菜さんの愛犬・シャディとコハダは保護施設から迎えた元保護犬だ。彼女と一緒に、"相棒"とともに生きやすい世界を考える、期間限定の連載がスタート



保護犬だった二匹がバディになるまで

黒島さんと一緒にスタジオにやってきた二匹。抱えられているのがシャディで、足の間を自由に歩き回るのがコハダだ。それぞれ別の保護施設からやってきて、黒島さんの家族となるまでのストーリーとは──。

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二匹との暮らしで広がった、感情の振れ幅と社会への視野

「犬を迎えようと思ったとき、自分の選択肢は、保護施設から引き取る以外になかったんです」と話す俳優の黒島結菜さん。4年前に千葉県のとある施設から迎えた中型犬のコハダと、1年前に沖縄県の施設から迎えた小型犬のシャディとともに暮らしている。今春からは主演する朝の連続テレビ小説「ちむどんどん」がスタート。忙しい日々のなかで、二匹は今や欠かせない相棒となっている。

「この子たちがいなかった日々をもう思い出せないくらい、私にとっては家族のような、当たり前の存在です。いつしか自宅に犬を迎えいれたいと思っていました。引き取り先が必要な保護犬がたくさんいるということについては、もともと知っていたんです。ペットが売買される現状がある限り、保護犬はなかなかいなくならないという考えから、保護施設から引き取りたいという思いを強くしました。犬好きの知り合いに千葉の団体を紹介してもらい、譲渡会に参加。会場で目が合って『この子だ!』と思ったコハダを迎えることに。仕事上、自宅を留守にする時間が長くなってしまう日もあるので、ひとりぼっちじゃかわいそうだなと、その後もう一匹を探し始めました。そして沖縄の団体のウェブサイトで出会い、去年迎えたのがシャディです」

数多ある保護団体の中から自ら選び、2匹を引き取った黒島さん。どんな点に気をつけた?

「保護施設のあり方もいろいろなので、どういった譲渡条件を課しているかや、保護活動の状況などをよく調べて選びました。携わっている方たちや動物たちの様子を見て、『雰囲気がいい』と自分で感じられるかも大切。譲渡条件に関しては、厳しいところから緩いところまで千差万別。厳しさには理由があるとも思うのですが、条件が適わなくてペットショップで購入する人が出てきたり、逆に緩すぎて無責任な引き取り方をしてしまう人が出てきたりすることもあると思うので、難しいですよね。さらに、シャディのように、疾患があり治療にお金がかかる犬もいます。自分の基準と責任感をしっかり持って、向き合うのが大事だと思っています」

そうして始まった、性格や年齢も異なる二匹との生活は、一筋縄ではいかなかったという。

「まずコハダを育て始めた時期が大変でした(笑)。トイレを覚えるまで、しつけができるまでは、粗相もするし暴れん坊で部屋のなかはぐちゃぐちゃ。それでも投げ出すわけにはいかないので、向き合うしかなかったですね。シャディは引き取る前から疾患があることを知らされていましたが、詳しく調べてみたらさまざまな治療が必要で……。飼い主のエゴだけで判断するのではなく、この子にとって何が幸せなのかを考えて治療方針を決めていきました。もちろん大変なこともあるけれど、二匹を迎えてよかった。新入りのシャディに対して、コハダがよい指導役になってくれているし、ずっと二匹でいたのかなというぐらい自然な様子です」

二匹との出会いは、生活だけではなく、黒島さんの心境や仕事にも大きな影響を与えた。

「私自身、感情の振れ幅がすごく大きくなったのを感じています。言葉が通じない二匹と意思の疎通をはかるには、しゃべり方も仕草もそこに込める気持ちも、オーバーになる。これまであまり感情表現が得意じゃなかったけど、気持ちを伝えようと一生懸命なあまり豊かになって、少なからずお芝居も変わってきたのではないでしょうか。犬を飼ったことで演技に変化が出るなんて、思ってもみなかったですけれど。また、生活も規則正しくなりました。朝と夜に散歩は欠かしませんし、私がいなくなったら生きていけないこの子たちのために自分も健康でいなきゃ、と思うように。二匹の存在が、仕事を頑張るモチベーションにもなっています」

コハダとシャディを飼ったことで、ともにキャンプに行くなど行動範囲も広がり、ドッグランで出会った犬好きの友人たちとも交流しているという黒島さん。犬たちを通じて、彼女自身が見つめる世界に対しての視野も広がっている。

「保護犬についての認知を広めるのも、私にできることの一つですよね。保護活動に携わる人々に会って話も聞いてみたいですし、まだまだ知りたいことがいっぱいあるんです」

そんな黒島さんと一緒に、次回以降もバディたちと生きやすい世界について考えていく。

今月の Happy moments with BUDDIES

写真が趣味である黒島さんが撮影。
(右)眠たいけど頑張って起きてるシャディ。毛が伸びておじいちゃんみたい
(左)泳げないけど海が好きなコハダ。風を浴びて気持ちよさそう!

YUINA KUROSHIMA

1997年3月15日、沖縄県生まれ。映画『カツベン!』で第43回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。2022年、映画『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー/最後の錬成』の公開を控える。4月にスタートした、2022年度前期連続テレビ小説「ちむどんどん」(NHK)にて、ヒロインを演じる。

SOURCE:SPUR 2022年6月号「黒島結菜のHAPPY EVERY BUDDY!」
photography: Sophie Isogai 〈KiKi inc.〉 styling: Sumire Hayakawa 〈KiKi inc.〉 hair & make-up: Momiji Saito 〈eek〉 text: Rio Hirai 〈FIUME Inc.〉

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