2022年5月、電撃的なデビューを果たした韓国のニューグループ、LE SSERAFIM(ルセラフィム)。メンバーのひとりであるKAZUHAさんは、幼い頃から歩んできたバレエの道から一転、K-POPの舞台へ軽やかに舞い降りた。挑戦心に満ちながらも、気負わず世界へと羽ばたく彼女が、SPURに初登場! 未来への展望を語るロングインタビューとともに届ける
ピュアな魅力を秘めて
1920年代のカルチャーに敬意を表して作られたオーガンジーのドレスは、KAZUHAさんのやわらかな品格とマッチする。ダイヤモンドをちりばめたような襟のラインストーンは、手作業によるもの。ディテールに珠玉の技が光る一着に仕上がった。タフなレザージャケットを羽織り、繊細さとの対比を堪能したい。
躍動する体に呼応して
「CRINOLINEジャンプスーツ」と名付けられた一着は、体にフィットするシルエットと、レースと3Dステッチのデザインがモダン。ライトなビスコースニットは、動く体に合わせて伸縮。しなやかなムーブに沿うように、大胆なボリュームでフレアに広がる裾を揺らして。耳もとにはドロップモチーフにダイヤモンドを配したリュクスなピースを。
洗練された黒を着る
ハードな印象のルックも、持ち前の凛とした佇まいで心地よく着こなす。上質なブラックレザーで仕立てたクロップド丈のバイカージャケットは、立体的なシルエット。重ねたアシンメトリードレスは、あえて切りっぱなした裾がラフな面持ち。
視線をとらえて離さない
柔らかく紅潮した頰と赤いリップは、KAZUHAさんのピュアでヘルシーな個性を引き立てる。シルバーのボールドなパーツが連なったチョーカーやイヤーカフは、華やかな強さもプラス。エッジのきいたアティチュードは力強いマインドで歌ったデビュー曲「FEARLESS」の歌詞のムードともリンクする。
シックなスタイルに、パンクな精神を忍ばせて
オーバーぎみのシルエットを描くジャケットからは、まばゆいゴールドをのぞかせて。ボトムスには"バレエのエレガンスとパンクの生命力"の融合をキーワードに掲げるチカ キサダから、量感のあるチュールスカートを。ただロマンティックにとどまらない強さを体現する。
舞台の上では、自由で解放されていて何をしてもいいって気持ちになるんです
バレエからK-POPへ、思いもよらなかった道へ
バレエダンサーとして将来を嘱望され、さらに研鑽を積むためにオランダに留学していた日本人のティーンエイジャーが、韓国に渡ってK-POPグループのメンバーとなり、〝来日〟という形で故郷に帰ってくる――。にわかには信じがたい人生の展開を、驚きつつも心からエンジョイしているKAZUHAさん。BTSやSEVENTEEN、TOMORROW X TOGETHERなどが所属するレーベルを擁するHYBEが送り出した初めてのガールズグループとして世界の注目を浴びる、LE SSERAFIMのメンバーだ。8月に19歳の誕生日を迎えた彼女は、「留学先に行くために日本を発ったときは何の考えもなかった」と振り返る。「まさかアイドルとして帰国するとは思ってもみなかったから、すごく不思議な気持ちです。1年前に普通に見ていたテレビ番組に出演させていただいたり、別の世界に来たかのようで、〝本当に私がかつて住んでいた日本なの?〟と思ってしまって(笑)」
また、こうして本誌のカバーガールを務めることで、幼い頃からの夢をひとつかなえたとも彼女は言う。
「将来やってみたいことのリストに、いつも〝雑誌の表紙を飾る〟と書いていたので、本当に光栄です。今日着たどのルックも素敵でしたが、表紙のドレスは秋を先取りしたみたいで、特に可愛かった!普段はトレーニング用のウェアが多いですし、美しい服を着せていただけて、とてもうれしいです」
そう話すKAZUHAさんは、ミュージックビデオなどでは、気品漂うクールビューティな姿を見せているが、インタビューを始めると、うっすら関西弁のイントネーションで熱っぽく語り、朗らかな笑い声を響かせて、さっと印象を塗り替える。
「人見知りするタイプなので、あまりよく知らない人には真面目で大人しい性格だと思われているんですけど、仲がいい友人には、ちょっと変わっていて面白いって言われますね(笑)」
そんな彼女がクラシックバレエのレッスンを受け始めたのは3歳のとき。ほどなく才能を開花させ、国内外のコンクールで好成績を収める。ロシアと英国の名門校で研修し、ステージで踊る機会も得ていた彼女は、自分は表現者として生きていくのだと、子どもの頃からそれとなく感じていたという。
「私は練習するよりも、とにかく本番の舞台に立つのが好きだったんですよね。バレエではひとりで踊ることも多いんですが、舞台の上のほうが自由で解放されるというか、何をしてもいいっていう気持ちになれる。コンクールに出るときも、私を知らない人が大勢いるわけだし、〝だったらありのままの自分を見せればいいんだ〟みたいな解放感があるんです」
バレエの世界での成功を約束されていたKAZUHAさんだが、オランダ国立バレエアカデミーに留学していた昨年、転機が訪れた。以前からK-POPを愛していた彼女は、オンラインオーディションに映像を送ったのだ。
「幼い頃はミュージカルにも興味があって、歌って踊って体を動かす、みたいなことが好きだったんです。学校で友達と演劇のクラブを作ったりしていましたね。K-POPには日本で大流行したときにハマって、よく聴いていたんです。将来の進路を決める時期になって、バレエも楽しいけど、ほかに何か違うことに挑戦できるならやってみたいと考え始めたのがきっかけでした。で、オーディションに応募するだけで終わりだと思っていたら、予想外に連絡が来たんです」
もっとも、コロナ禍が続く中で国をまたぐ移動はままならず、オランダにとどまって韓国語とダンスの練習に打ち込み、今年に入ってソウルでほかのメンバーと合流することに。
「韓国に着いた当時はまだ隔離期間があって、その間はリモートレッスンを受けて、ダンスの練習をしていたんです。そのときに先生に送った動画を今見ると、バレエのスタイルが全然抜けていなくて〝なにこのダンス?〟っていう感じで(笑)。しかも裸足で練習していたから、映っている足の裏が、埃で真っ黒!それも含めてマル秘映像なんですが、初めてメンバーに見せたときには全員大爆笑でした。だからつらいことがあるとその映像を見て、過去の自分に元気をもらっています」
ときめきを内包するピンク
ぱっと弾けるような笑顔を引き立てるのは、ダイナミックなピンク。ロングジャケットをドレスのように着て、プリーツスカートをレイヤード。重なるチュールやギャザーがアクセントとなり、モードな趣へと昇華する。
自分が伝えていきたいのは行動することの大切さ
こうして始動したLE SSERAFIMは、5月に1stミニアルバム『FEARLESS』を発表。韓国では発売後最初の1週間で、当時K-POPのガールズグループのデビュー作としては最多記録の30万枚以上のセールスを達成、日本でもオリコンアルバムチャート1位を獲得。ほかにもアメリカなど世界各地で大反響を呼んで、順調なスタートを切った。KAZUHAさんはLE SSERAFIMの魅力について自信を持って語る。
「多分みなさんも見ていてわかると思うんです。メンバー一人ひとりが、どういう背景で育ってどういう経験を積んできたのかが全然異なり、持っている雰囲気や魅力にも個性がある。だからこそ、ひとつのパフォーマンスを行なったときにそれぞれの魅力がさらに際立つんじゃないかって思うんですよね」
彼女がコメントする通り、メンバーは実に多彩だ。LE SSERAFIMは多国籍メンバー5名で構成されている上に、特にKIM CHAEWON(キム・チェウォン)さんとSAKURAさんは、音楽活動の経験が豊富。このふたりから学ぶことは多いとKAZUHAさんは言う。
「私の場合はデビュー・ショーケースのときに初めてアイドルとして舞台に立ったんですが、目の前にファンのみなさんがいる状況が新鮮で、どんなふうに接していいのか全然わからなかったんです。CHAEWONさんとSAKURAさんはファンのみなさんとの接し方もよく知っていて、そういう姿勢を見て勉強になりました」
そんな5人がデビューにあたって打ち出したメッセージはずばり、1stミニアルバムのタイトルに掲げた〝FEARLESS(恐れを知らない)〟だ。実はグループ名も、〝I’M FEARLESS〟というフレーズのアナグラムで、ここに収められた5つの曲を聴くと、ディスコ・ファンクの太いグルーヴにも、彼女たちの最高になりたい欲望を映した強気な歌詞にも、同じメッセージが織り込まれている。
「このアルバムを作るにあたって、制作の方とひとりずつインタビューをしたんです。そのときに今自分が抱えている想いとか、これからどういうアーティストになりたいかとか、素直に伝えられたと思っていて。それをアルバムに組み入れた感じなので、出来上がったときには、私たちの話そのものの作品だなって思いましたね」
ここにきて初めて歌に取り組んだKAZUHAさんは本作で、ラップを披露。まさにFEARLESSなチャレンジ精神を見せつけているが、チャレンジ精神といえば、1億回以上の再生回数を記録しているタイトル曲のミュージックビデオでは、クレーンで吊った車の上に座って歌うシーンがある。本人は「車の上に乗れる経験なんてあまりないから、すごく楽しかった!」とあっけらかんと言うが、見ている側はドキリとさせられる。
「もちろん私も、失敗が怖いと思うことはありますよ。でも、そのこと自体は別に悪くない。行動をすることさえ恐れないようにすればいいかなって思っています。失敗してもなんとかなると呪文をかけて、乗り越えていますね。ほかのメンバーも、幽霊とか虫とか小さいことは怖がるんですが(笑)、人生に対するチャレンジ精神は豊富なんです。LE SSERAFIMとしてのデビューは私だけでなく全員にとって挑戦だったので、みんな覚悟を持っていると思います」
こんなふうにスピリットを共有し、互いに支え合っているメンバーとは、仕事以外でも一緒に時間を過ごして絆を深めているようだ。
「ソウルに来てからは忙しくてあんまり遊べていないんですが、メンバーと夜中に漢江までサイクリングをしたり、そういう些細なこともすごく楽しいですね」とKAZUHAさん。みんなでとりとめもないおしゃべりをしているうちに、韓国語も飛躍的に上達したという。
「最初の頃は韓国語がまだうまくなくて、話したいのに話せない!みたいなもどかしさを感じていたんですけど、今はそれもなくなりました」
ちなみに、6月初めには『FEARLESS』に伴う韓国での活動を終了したLE SSERAFIM。SBS放送の音楽番組「人気歌謡」で行なった最後のパフォーマンスでは黒いパンツスーツを衣装に選び、ジャケットの内側にハートのモチーフをあしらってファンに感謝を捧げたり、こだわりの演出が話題を呼んだ。
「最後だから何か特別なことをしたいとみんなで話していて、全部私たちが考えたんです。〝じゃあスーツを着てみようか〟とか、〝ハートを入れてみようか〟とか、〝眼鏡をかけてみようか〟とか。みんなでアイデアを出し合いながらひとつのものを作り上げるのはすごく楽しいなって、あのときに実感しましたね」
今後の目標はなんといってもツアーだ。「もっとアルバムをたくさん作って、私たちの曲で、私たちだけでステージができるといいなってメンバーのみんなで言っています」とKAZUHAさんは話す。舞台に立つことをこよなく愛する彼女は、その醍醐味を次のように説明する。
「私は誰かのパフォーマンスを見ていて感動させられたり、〝すごい!〟ってエネルギーが湧き上がってきたり、いろんな影響を受けます。自分たちがパフォーマンスをしたときにも同じように、見てくださる方に〝ああ、もうちょっと頑張ろう〟ってエネルギーを受け取ってもらえたりとか、〝見てよかった〟って感じてもらいたい。そういう部分が、この仕事の一番の魅力かなって思うんです」
では多くの人の注目を集める今、KAZUHAさんが伝えたいことは何だろう?
「私はある意味、自分にとってすごく大きな決断をしたんですが、それまでに〝何か挑戦してみたいけどどうしたらいいのかわからない〟とか、〝そういうチャレンジができる機会がどこにあるんだろう?〟ってすごく悩んでいました。自分の将来についても〝これからの人生どんなことがしたいんだろう? バレエだけでいいのかな〟って、モヤモヤしていたんですよね。でも、どんな小さなことでも、それを実行することで大きく将来が変わったりもします。私の場合は、オンラインのオーディションに応募すればいいだけだった。だから私はやっぱり、行動することの大切さを伝えたいですね」
Profile
KAZUHA
2003年、高知県で生まれ大阪府で育つ。3歳のときにバレエを学び始め、2021年、オランダ国立バレエアカデミー留学中に、オーディションに合格。LE SSERAFIMのメンバーとして、今年5月にデビューした。