【The Last of Us】切ない演技に引き込まれる、ストーム・リードにインタビュー

世界の話題を席巻する作品「The Last of Us」を知っていますか?

今年1月にHBOで配信が開始した途端、世界中で記録的な視聴者数を獲得した「The Last Of Us」。一瞬にして現象と言える人気となったこのドラマだが、原作は、2013年にPlayStation3専用タイトルとして発売され、大人気を博した同タイトルのサバイバルホラーゲームだ。物語性が強く、普段はゲームをプレイしない人も夢中になった本作。その世界をほぼ忠実に再現しているためゲームファンからも愛され、批評家からも絶賛されている。

舞台となるのは、2003年にパンデミックが起きてから20年後の世界、つまり2023年。コロナ後を予言するような設定が、まず共感を得た理由でもあると思うが、人気を獲得した大きな理由は、“ゾンビ”のような“感染者”と戦うサバイバル劇でありながらも、物語の中心がラブ・ストーリーであること。だから、主人公のジョエル(ペドロ・パスカル)が、14歳の少女エリー(ベラ・ラムジー)を、アメリカを横断し目的地へ連れて行く設定ではあるが、“感染者”とジョエルやエリーの戦いよりも、2人の間に生まれる親子のような愛情、またはその他登場するキャラクターたちの抱く愛について、より深く描かれているのだ。それがとりわけ象徴されているのが、第7話。エリーのオリジンストーリーとも言えるこの回では、クィアである彼女の初恋が描かれている。ここでエリーの相手役を演じるのが、同じくHBOの大人気ドラマ「ユーフォリア」で、ルー(ゼンデイヤ)の妹役ジアを演じているストーム・リードだ。現在、若手俳優の中で最も才能があり注目作にばかり出演している彼女。“世界の終わり”を背景に描かれた、あまりに切なく愛おしい2人の初恋物語について聞いた。

「The Last of Us」も「ユーフォリア」も愛を描いている

The Last of Us 劇中写真
©2023 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.

——「The Last Of Us」は、ゲームのドラマ化に初めて成功した作品として称賛されています。つまり、これまではどれも上手くいってなかったわけですが、ゲームが原作のドラマ化に出演することに躊躇しなかったのですか?

「まったくしなかった。むしろだから出演したかったんです。世界中の人に愛されているゲームを、ドラマにできるならやりたいと思ったから。それにこの作品をクレイグ(・メイジン)とニール(・ドラッグマン)が手がけていることも大きな理由。ニールはゲームを作った張本人だし、クレイグはこのゲームが長年好きだった。この2人が作って、失敗するわけがない、絶対に最高の作品になる、と思ったから迷いなく出たいと思いました。このドラマにゲームの良さが反映されないなんてありえないから(笑)」

——このアポカリプス的な世界を舞台にしたゾンビもののゲームが、実はものすごくエモーショナルな物語で、ゾンビはあまり出てこないことには驚きましたか?

「そうですね。とりわけ、私が出演した回はすごく深い内容だし、ポエティックですらあります。ライリーとエリーが、友情やとりわけ初恋を体験しているところが描かれていて、見ている人たちは、まるで自分たちもそれを体験しているかのように感じるんじゃないでしょうか。そこがすごく美しかった。それに2人は、すごく辛いことについても語り合っているから、物語の終わりが近づくにつれて、感動的だけれどすごく辛くもなる。全体としては、このドラマは常にすごく緊迫感があって過酷な状況下で物語が展開するけれど、その中で、7話では思春期の2人が描かれていることが、特別なところ。クレイグを筆頭としたチームが素晴らしいから、出演できて本当に嬉しかったんです。すべての体験が最高で、ライリーを演じられてすごく光栄でした」

The Last of Us 劇中写真
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——撮影中は“ゾンビ”という言葉が禁止されていたというのは本当ですか? 実際のところ、ゾンビではなくて、“感染者”ですからね。

「本当なんです! でもこの回では、それについてはあまり心配する必要もなくて。世界の終わりに直面したような状況下で、可能な限り美しい世界を作り上げようとしていた回だから。その中に“感染者”がいることもまったく考えていなかったし、とにかくこの番組への愛と思いを表現しようと精一杯でした。それは見ても伝わったんじゃないかな、と」

 

——あなたが出演している「ユーフォリア」も「The Last of Us」も爆発的な人気を得て、それぞれ独自のファンも増え続けています。「The Last of Us」は原作のゲームがあるので、初めから人気がありましたが、「ユーフォリア」と比べて難しかったことは何ですか?

「『ユーフォリア』と『The Last of Us』は全く違うプロジェクトだけれど、このどちらものドラマの中心にあるのは、愛だと思う。もちろん、それ以外についてもたくさん描いているけれど、大事なのは愛について。そして家族について、人を理解しようとすることについても、共通して表現している。それから、『ユーフォリア』では、世代間を繋げようとしていますよね。世界に向けて、今の若者がどんなに大変な経験をしているのかを描き、知ってもらおうとしている。見るのが辛いこともあるかもしれませんが、実際にそういう体験をしている人たちがいると思うから。一方『The Last of Us』では、世界の終わりが迫る中で、生き延びるために戦っている。生き残っている人達は多くはないけれど、その中で世代を超えて結びつきを持とうとしています。限られた時間で、愛や家族を体験しようとしている。そこにみんなが共感できるんじゃないかと思う。人生は短い。だから自分にとって大事なことをしっかりと掴んでいたい。そういうことが共通するテーマですよね」

Storm Reid portrait
Photo: Getty Images

——「ユーフォリア」であなたが演じるジアは非常に孤独ですが、「The Last of Us」では仲間を見つけています。2人の違いをどのように見ていますか?

「ジアとライリーの置かれている状況はまったく違っていて。ジアは姉にすごく影響を受けている中で、自分が誰なのかを見つけ出そうとしている。ルー(ゼンデイヤ)の妹であるという以外の自分は誰なのかを模索していますよね。それから、ルーや家族から、自分がどんな影響を受けてしまっているのかも考えようとしている。Z(ゼンデイヤ)は素晴らしい人で、本当に共演できて光栄ですし、本当にお姉さんみたいに思える関係性を築けています。かたやライリーにはエリーという仲間がいて、他に仲間は多くないけれど、それは気にしていない。彼女は自分が愛するものをに一途なタイプだから。それに彼女は彼女なりに、世界で起きていることも理解している。だからジアとライリーはまったく異なる場所にいると思うけれど、共通しているのは、すごく深く複雑な面があるキャラクターだということ。自分の抱く感情と向き合っている。自分の思いを内に秘めるタイプで、何を考えているのかがすぐには分からないんです。そこが似ていて、好きなところ」

ライリーとエリーの絆は、見ている人が共感できるもの

【The Last of Us】切ない演の画像_4
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——「The Last of Us」が支持を得ているのは、クィアの恋愛やクィアの視点から物語を語ることを大事にしていることもあると思います。あなたが、エリーとライリーの物語で共感できたことは何ですか?

「まず、世界中がパンデミックを一緒に経験したばかりですよね。だから『ああ、私たちもまさしくこれを体験した。世界は本当にこうなる可能性がある』と共感できるからというのは大きいと思う。この回に関しては、2人だけであの場所(廃墟となったモール)で過ごせたことも、若い女性を象徴できたことも、すごくクールだと感じています。それから、クィアの若い黒人女性を演じられたのも、とりわけ光栄だった。見ている人たちの置かれている状況は様々で、この回とは違うかもしれないけれど、彼女たちに共感できる部分を見出して、元気をもらえる人たちがいるんじゃないかなと思うんです。私たちがここで一番表現したかったことはそれだったから」

 

——この回にはとりわけ、喜びや愛があると感じるのですが、キスシーンとダンスするシーンの撮影はいかがでしたか?

「キスシーンとダンスシーンは、ゲームをプレイした人達の大好きなシーンだったから、あのシーンを入れないというのはあり得なかったんです(笑)。演技もすごく楽しかった。彼女の感情を探究できたことも。彼女は、あのダンスシーンで、親友に対して自分が抱く思いを見つめていて、2人はあくまで友達なのか、彼女も自分のことが好きなのかを探ろうとしている。すごく美しいシーンですよね。それにあのシーンでは、ただの子どもになって、楽しんでいる。作品は常に大人の登場人物の視点から描かれているから、あまり子どもらしい視点はないですよね。だからピュアにライリーとエリーがお互いの気持ちを確かめようとしている姿が見られるのは、すごく新鮮でした」

【The Last of Us】切ない演の画像_5
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——ライリーとエリーには強い繋がりがあるのが分かりますが、あなたとベラ・ラムジーの関係性はどのようなものでしたか?

「出会った瞬間から意気投合しました! ただ事前に関係を深める時間の余裕はあまりなくて、カナダに着いたら、リハーサルをして、衣装合わせをして、すぐに撮影でしたから。ベラは本当にずば抜けた才能の持ち主だけれど、それ以上に人間的にも素晴らしいんです! だから彼女と共演できただけで光栄だし、実際に友人同士になれたのは、すごくクール。一緒に過ごす時間は少なかったけれど、私たちが本当に仲が良いことはドラマからも伝わると嬉しい」

 

——ライリーとエリーのラストシーンを撮影するのはどんな心境でしたか?

「ゲームのプレイヤーみんなが大好きなシーンだということは知っていたし、同時に心が張り裂けそうな場面。みんなあのシーンについてネット上で四六時中語り合っているほど。だから寄せられる期待に応えたかったし、ゲームと何かを変えたいとは思わなかった。とてもエモーショナルだし、お互いの気持ちを尊重し合いたいと思っているシーンでもある。実際、最後に撮影したシーンだったから、これで私たちも本当にお別れだと思うと本当に悲しかった。ベラと一緒に演じられて、私にとっても大切な経験となりました」

——あなたの出演作は「The Last of Us」のみならず「ユーフォリア」も、ただ人気があるというだけではなく、その時代を切り拓くような革命的な作品であることが多いです。

「私は可能な限り、意味のあるプロジェクトに関わりたいんです。それに今私たちが生きている世界はすごくクリエイティブで、言いたいことを表現できる自由があると思う。説教臭くなりたいわけではないけれど、常に何かの目的がある作品を選ぶようにしています。そのおかげで『The Last of Us』のような作品にも出られたのかも。多くの人に愛されてきた作品で、私の出演回では語らなくてはいけないこともあるし、私が象徴している人たちもいる。私自身がこの回に共感できたのは、まだ若く分からないことだらけだけれど、何とか理解し、成長しようと努力している。エリーとライリーがやろうとしていることがまさにそうだから。2人は自分を、そして若者を理解しようとしている。それが“いいドラマ”になった理由なんだと思います」

The Last of Us

全9話。U-NEXTにて字幕版、吹替版独占配信中。脚本/製作総指揮:クレイグ・メイジン、ニール・ドラッグマン。出演:ペトロ・パスカル(CV:山寺宏一)、ベラ・ラムジー(CV:潘めぐみ)、マール・ダンドリッジ(CV:朴璐美)ニック・オファーマン、マリー・バートレット、ストーム・リード、ニコ・パーカー、ガブリエル・ルナ、アナ・トーヴ、マレー・バートレット 

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ストーム・リードプロフィール画像
俳優ストーム・リード

2003年アメリカ生まれ。10歳の時に、『それでも夜は明ける』('13)で映画デビュー。ウォルト・ディズニー・スタジオ製作の『リンクル・イン・タイム』('18年)からインディーズ映画『Missing(原題)』('23年)などで主役を演じ、TV番組「ユーフォリア/EUPHORIA」('19年〜)にも出演。話題作への露出が続く、今最も活躍する新人。

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