『セックス・アンド・ザ・シティ』が今年で25周年を迎えるにあたり、NYのソーホーで、キャリー・ブラッドショーのアパートなどが再現された没入型のイベントが開催された。
会場に入ると、それぞれのキャラクターを紹介するパネルが展示されていたり、キャリーのアパートは、玄関から、部屋の中も再現。デスクに置いてあるMacに文字を打ち込むこともできて、外を眺めるところを写真に撮ってくれたりもする。ベッドもあるし、クローゼットを抜けると、オープニングでキャリーが着ているピンクのチュチュから、数々の靴に、かの有名なポストイットまで展示。自分たちで、ポストイットに思い出を書いて貼れるようにもなっていた。
また、イベント会場ではコスモポリタン(カクテル)が振る舞われて、最後には、お土産にマグノリアベーカリーのカップケーキまで。グッズショップもあって、Tシャツからマグカップなども販売。『セックス・アンド・ザ・シティ』の世界観にどっぷり浸かれるこのイベントは、当時からこの番組が発していた元気が出るエネルギーをもらえるような最高の空間だった。
そして、この日のハイライトはなんと言っても、サラ・ジェシカ・パーカーが登場し、この25年を振り返り、その思いを話してくれたこと。また、『セックス・アンド・ザ・シティ』の新章である『And Just Like That』の衣装も手がけるモリー・ロジャースとダニー・サンティアゴも登場した。そこで語ってくれた内容とは……。
——25年前を振り返ってどう思いますか? なぜこんなに長い間愛される番組になったのだと思いますか?
サラ 何よりまず言いたいのは、こんなにたくさんの人たちが共感してくれた作品に自分が関われて、すごくありがたいと思っているということ。しかも、みんなこの番組にものすごく特別な思いを持ってくれて。それがすごく良い場合もあるし、時には強烈な反発であっても(笑)、それも良いことだと思っています。今振り返ってみると、私たちはとにかく良い作品を作りたいと、それだけを思っていました。すごくエキサイティングなものを作っていると思えたし、すごく新鮮なことをしていると思っていました。それからすごく良い意味で、自分たちが知らないことでもあると思っていました。
ただ、その時はまさかそれから25年後に、その時の気持ちを思い出す機会が来るとは全く思ってもいませんでした。だけれど、とにかくものすごくありがたいと思っています。それは、モリー(モリー・ロジャース/衣装スタッフ)などのように表に出ていないけれど、ものすごく才能があるスタッフに囲まれていたこともすごく大きいです。その人たちと一緒に仕事ができたおかげで全てのエピソードがあのようにスペシャルなものになったと思うのです。
——衣装はどのように見つけたのですか?
サラ パット(パトリシア・フィールド/スタイリスト)はいつもメガネをかけ、頭に鉛筆を2、3本差しながら、目の前には脚本が2つか3つある状況でした。3つのエピソードを一度に撮影したりしていたので(笑)。
全てのページにはもうメモが書かれていて、アイディアがあって、場合によってはすでに服があることもあったし、まだルックが決まっていないようなこともありました。
でも全てはマイケル・パトリック・キングが書いた脚本から始まって、それを読みながら、何が正しくて、何が違うのか、などを探りながら、本当にとにかく探して探して探し続けたのです。いつでもどこから探してきたのか想像も付かないような服を見つけてきてくれました。モリーがどこからともなく秘密の場所から、見つけてきてくれるのです(笑)。
番組が始まった当初は、全く予算もなくて、第2シーズンですら、苦労していました。それが時間をかけて変化していったのです。最初の変化が訪れたのは、フェンディが、バゲットを貸してくれたときのことです。そこで最初の扉が開きました。そこから他のブランドも貸してくれるようになったのです。
モリー ブランドは、番組を見る前は、『セックス・アンド・ザ・シティ』というタイトルの番組だったので、みんなリースに出すのを躊躇していました(笑)。サラ・ジェシカ・パーカーは一体そこで何をするの?と聞かれました(笑)。
——キャリー・ブラッドショーのファッションから学んだことはありますか?
サラ 勇気を持つこと。大胆であること。自分のファッションについて、他の人が決めたルールには従わないこと。
しかし、番組が始まった時は、誰も私たちに服を貸してくれなかったから、クローゼットはすごく小さかったのです。パットとモリーは、いつでもキャラクターの会話を重んじていました。だから、そのシーンの会話に何の衣装が相応しいのかを考えてくれていたんです。どんな衣装が物語を語るのに相応しいのかということを。しかも、それでいて驚きがあるのかなども。
彼女たちが選んでくれるものを見て、私もファッションの歴史を学んだし、日本の若者がどんな服を着ているのかも知ったし、アルゼンチンの若者がどんなファッションなのかも知りました。彼女たちは、常に世界中の人たちの服に目を向けていたのです。そういう最先端の場所に、本当に素晴らしいファッションがあると思っていたのです。だから、それをニューヨークに持ってきて着ようとしていました。そういう過程に私も関われたので、私たちはすごく良いパートナーになっていったと思います。
モリー キャリーは、鳥を頭に付けたり、または鳥を持ってストリートを歩いたりすることを恐れなかったキャラクターだと思います。それは本当の勇気です(笑)。
サラ でもそれがキャリーに相応しいと思えたら、やるのが当然だと思っているのです。それに正直言うと、結果当たりだったスタイルと同じくらい外してしまったファッションのことも楽しく思っていました。それがキャリーと私たちにとっての大事な経験だったと思うからです。それに私は彼女たちに勧められたものは全て着てみました。なぜなら着てみないことには絶対に分からないからです。挑戦してみないことには、驚きの結果は生まれないからです。またはマイケル・パトリック・キング(監督・脚本)をものすごく驚かせるようなものにはならないからです(笑)。
——4人のキャラクターの衣装がそれぞれ調和していた理由は
モリー それは最初にキャリーの衣装を決めたからです。そこからその他のキャラクターの衣装を発展させていきました。キャリーの衣装を決めると全てが自然と決まっていったのです。
——『AND JUST LIKE THAT…シーズン2/セックス・アンド・ザ・シティ新章』にエイダン・ショウ(ジョン・コーベット)が戻ってくるのがとても楽しみですが、何を期待できますか?
サラ えっと、何も話せないわ。現時点で予告編で見ているのが今教えたいことの全てなんです。モリーとダニーはこれまでの男性のキャラクターの衣装をどう思うかを語れると思う。
モリー 私はマシュー・マコノヒーの衣装がすごく好きでした。あのシーン全部がとにかく好きだったのです。クレイジーな感じで(笑)。彼が大好きだったし、彼が着たものも大好きでした。
ダニー スタンフォード・ブラッチ(ウィリー・ガーソン)が着たものが好きでした。彼は何でも着てくれました。どんな色でも、アクセサリーでも、ピンでもプローチでも、タイでも、靴でも。だから彼の衣装を見つけるのはすごく楽しかったです。
サラ ポケットスクエアでも、メガネでも、たくさん。彼のためにメガネ屋さんくらいの量が集められていて。彼は着せ替え人間になるのが大好きだったのです。
——サラは衣装のアーカイブをしているそうですが、今作のクローゼットはどのような感じですか?
サラ レンタルしたものでなかった場合は、全て私のところにくるだけなんですけれど。それは『セックス・アンド・ザ・シティ』の前からしていたことなんです。私はとにかく衣装が欲しいの(笑)。その衣装を大事に保管したいんです。しっかりと記録として残したいから。センチメンタルなものであり、実用的でもあると思います。私にとっては衣装合わせが全てであると思っています。と言うのも、衣装は、セリフと同じくらい大事だと思うからです。
——『AND JUST LIKE THAT…シーズン2/セックス・アンド・ザ・シティ新章』の衣装についてはいかがですか?
ダニー 時間がある時は街中を色々と見て回って、チャイナタウンから、ブルックリンまで。それから海外にも目を向けています。そうやっていつでも様々なものを目にしてそれを活かそうとしています。
サラ ちょっとバカみたいに聞こえるかもしれないけど(笑)、例えば、ひとつのスウェットシャツがどれだけの喜びをもたらしてくれるのかということなんですね。私たちは今、何にでもアクセスできます。でもそんな中で、スペシャルなものを見つけるというのは、それが最悪なコンディションであったとしても、素敵なこと。例えば、もう作っていなくて1987年にしかなかったものが見つかったりしたら。しかも、それがマイケルやライターたちが語ろうとしていることに役立つことがあるとしたら……。それらがすごく楽しいのです。しかも私たちをその人物に仕立ててくれる人たちが才能に溢れていて、彼女たちは誰にでも似合うように仕上げてくれるのです。それが古いものを使う時のキーだと思います。
——靴などのアクセサリーもキャラクターと同じであることについては?
サラ 私は靴に夢中だったわけではないんです。もちろん靴は大好きだったけど、パットとモリーが最初からやっていたことは、脚本に書かれていたキャリーと靴の関係性をなんとか形にしようとしていました。しかし当初はとにかくどのラグジュリーブランドも貸してくれなかったのです。だから、スリフトストアとか、センチュリー21(NYでブランドものを安く買える店)にはすごく助けてもらいました。ブルーミングデールズなど、個性的なスタイルがつくれるように目指していました。
モリー また、道を歩いていて、これまで見たこともないようなスタイルの人を見たらそれを参考に。今はインスタグラムでできるようなことかもしれませんが。
——これは着られないというような服はありましたか?
サラ 一度ジャンプスーツで、どう考えても似合わないというのがあって。でもパットがとにかく着て着てと言うので着てみました。着てみないことには分かりませんし、合わない場合はみんな分かります。とにかく着てみなくちゃいけないのです。
去年、自分的にはすごくハマらないんだけれど、美しい茶色のガールスカウトの制服みたいな服で、パンツになっている衣装がありました。ピエール・カルダンじゃなくて、どこのだっけ? オレンジのタイがついて……。
モリー ゴルチェですね。
サラ 私は衣装合わせの時に、それが見えて、私は『この最悪で美しい衣装は何なの?』って。そうしたらみんなが『そういうと思った!』っていったのです(笑)。絶対似合わないと思ったし、シンシア(・ニクソン)ならどんなオレンジでも似合うけど、私にはオレンジは似合わない。でも着てみたいと思って、着てみたら似合ったのです(笑)。
本当に美しい服だったから。それが単に吊り下がっているだけでは、私は絶対に着ていなかったと思います。すごく楽しかったです。
モリー この番組では、キャリーが触れたものは全てすごく大事なものになるのです。ハンドバッグにしろ、コスモを飲んでいる時に付けているディオールのリングにしろ、より特別なものになるのです。
——キャリーが最初の結婚式でかの有名な鳥を頭に付けたのはどういう経緯で?
サラ みなさんここにマイケル・パトリックが来てくれています。彼がその時の様子を話してくれます。
マイケル モリーとSJ(サラ)は私に隠していました。キャリーの結婚式の時のヴィヴィアン・ウエストウッドのドレスはすでに見ていて、それはオーケーを出していたのです。だけどベールはどんなものなのか?と聞いたら、モリーもSJも『これからのお楽しみ』と言い続けたので、セットに到着した時にはもう何があっても変更できないところまで来ていました。そこで2人が『こっちに来て来て』と言うので、行ったら、クローゼットを開けてくれて……。そうしたら、あの鳥が見えたのです。それで、一歩下がってクローゼットを閉めてしまいました(笑)。
彼女たちにとってクローゼットとは、心から信じているものが詰まった場所だったのです。ですが、私は『何て言っていいか分からない』と答えたのです。でも2人が『最高でしょ』と言うので、そのまま着用し、結局はうまくいきました。現場はいつも、そうやってみんなでダンスを踊るような感じです。つまり全員で取り組んだ真のコラボレーションでできた番組だったのです。
サラ あの鳥はニューヨーク・ビンテージで見つけたのですが、本当に探し甲斐のあるお店で、すごくファンシーなものが揃っています。しかし、それだけじゃなくてスペシャルなものがあるお店なのです。そこにあの鳥があって、小さな入れ物に入っていて、本当にこんなに美しいものは見たこともないというような出合いでした。それを私の頭に付けないってことはありえないと思ったのです(笑)。
モリー それに、ウエディングのサムシング4の中のサムシングボロー(借りるもの)やサムシングブルーでもあったし、しかもすごく美しい色でしたから。サウジアラビアの王女様が買いたいと言ったんです。25万ドルで。
サラ お断りしました(笑)。それで頭に鳥を付けるのを見た後で、マイケルが、キャリーの新婚旅行のシーンの脚本に書いたセリフ、なんでしたっけ?
マイケル 「私は頭に鳥を付けたのよ」。
サラ (笑)。それから、最後にひとつ言っておきたいのは、私たちは、イヤリング、帽子、財布、靴、手袋、リングなど全てが揃ったら、この小さなベル(※サラの左手デスクの上のベル)を鳴らすんです。それで次に進みます。だからベルを鳴らすのが仕事の中で大事なことなのです。これが鳴ったら準備が完了したということですから。
『セックス・アンド・ザ・シティ』(全シーズンU-NEXT見放題独占配信中)
『AND JUST LIKE THAT…シーズン2/セックス・アンド・ザ・シティ新章』
米国MAXと同時配信の6月22日(木)より。U-NEXTにて見放題独占配信。