先の世界選手権で銀メダルを獲得した、"韓国フィギュア界の至宝"がSPUR初登場。まだあどけなさの残る21歳だが、氷上ではハッとさせる表現で見る者を捉える。ますます世界を虜にしていくであろう彼の凛とした瞳には、どんな未来が映っているのか。
【チャ・ジュンファン インタビュー】観客の目を釘づけにする魅惑的なスケーターの素顔
夏のアイスショーで受けた刺激を糧に、新しいシーズンの挑戦が今から楽しみ
韓国の男子シングルフィギュアスケーター、チャ・ジュンファン選手。体を大きく使った伸びやかなムーブメント、エレガントな足さばきから生まれるステップの美しさでスケートファンを魅了している。さらに、高難度ジャンプも年々成功率を高め、トータル・パッケージなプレーヤーとしての評価もうなぎ登り。間もなく22歳になる彼は着実にスケーターとして成長し、新たなフェーズに入ろうとしている。この夏も多数のアイスショーに出演し、多忙を極める彼に話を聞いた。
——直近の2022-’23 シーズンは世界選手権で銀メダルを獲得、韓国の男子スケーターとして快挙を果たしました。
「さいたまスーパーアリーナは僕が初めて世界選手権に出場した2019年以来、2度目でした。今回は2位というよい成績を残すことができてうれしい。シーズン中は多くの試行錯誤をするべき場面に直面しました。幼い頃からこの競技を続けてきましたが、まだまだ学ぶことが多くあると感じています」
——シーズン最終戦となった世界国別対抗戦では韓国のリーダーを務め、団体戦2位という結果に。韓国のフィギュアスケーターの皆さんは力を強めていますね。
「韓国選手たちの練習を見守っていて、僕自身も含めて、みんなが本当に頑張っているなと感じたんです。お互いにエネルギーを与えたり、受けたりしながら、より大きなシナジー効果を発揮したように思います。何よりも国別対抗戦は選手全員が一丸となって試合に臨むうちに、個人とは違ったチームとして協力をしながらプレイする楽しさがありました。こういう経験は選手それぞれの成長にもよい影響をもたらしますよね」
——今年の夏は『Dream On Ice』に始まり、『THE ICE』『Friends On Ice』と日本のアイスショーに出演。どのような体験でしたか。
「多くの選手の新しいプログラムを観る機会になりました。個々の魅力を活かした演技を披露する姿にたくさん刺激を受けました。僕の新しいシーズンのプログラムはまだ発表していませんが、ヒントを言うなら、これまでと違ったジャンルになるかも? 前のシーズンよりもアップグレードされた満足できるプログラムを作ろうと、いま一生懸命に準備しているところです」
——夏のアイスショーでは観光名所を回る時間もあったそうですね。もし韓国でアイスショーが行われるなら、ほかの選手をどんな場所に案内したいですか?
「試合のスケジュールもタイトなので街を楽しむ余裕はほとんどないんです。でも今年は日本のアイスショーで回る都市を熱心に見ようと決めていました。観光していると、いつも新鮮で面白いことが多くて。大阪の道頓堀通りをのんびり歩くだけでも楽しい! もし韓国でショーが行われるなら、僕の地元の近くにある蚕室の石村湖(チャムシルソクチョン)もいいし、最近ホットなカフェやポップアップストアが一番多く位置している聖水洞(ソンス)とソウルの森の近くをみんなにおすすめしたいな」
——新シーズンのことが気になる時期ですが、2021-’22シーズンのショートプログラム「Fate of the Clockmaker」はファンの方から推薦された曲を起用。いつもはどのように選びますか。
「ほとんどの曲は自分で提案します。振付師のシェイ=リーン・ボーン氏も提案をしますが、僕の意見を尊重してくれます。彼女とのやりとりを経て、最も心に響く曲を選びますね。北京五輪シーズンのときはファンの方々がおすすめしてくれた曲で素敵な舞台を作ることができました。ですから、皆さんの声をいつも注意深く聞いていますよ」
——現在は高麗大学世宗キャンパスのグローバルスポーツ学部に在籍中。学業とスポーツの両立はどうしていますか?
「アスリートにとって学業は重要です。両立は難しいですが、新しい学問に触れ、スケートの世界にはないさまざまな分野の方々と交流ができるのはいいですよね。今は熱心に授業を聞き、レポートも書くし、試験勉強もしながら、学校に通っています。でも単位はどうかというと、それは内緒です……(笑)」
——SPURではこれまでもスケート界のおしゃれ好きな方々に出演いただく機会がありました。皆さんファッション撮影の表現に長けているのですが、スケートと似ている部分はありますか?
「フィギュアスケートでは、僕に合う音楽を選曲し、自分だけの個性を加えて演目を作っていきます。ファッションもまた、自分が好きで関心のあることに集中して自分ならではのスタイルを作っていく。この過程は似ていると感じます」
——以前、日本の友野一希選手にも出演いただきました。彼はファッションにも関心が高く、お二人は気が合うのではないかと思います。
「そうなんです。彼とはジュニアグランプリの頃から試合やショーで一緒になる仲なので、普段からよく話をするんですよ。いつも彼は洋服をきれいに着ているので、心の中で“おしゃれだな”と思っていることも多いです(笑)」
——撮影で着たルックはどうでしたか?
「普段はオーバーサイズの服が好き。僕は上半身は痩せているけれど、下半身に筋肉があるんです。練習着や衣装は体にフィットするものが多いので、オフはワイドなフィット感を好みます。今回の撮影では普段あまり着ないユニークなスタイルが多くて、新鮮な出合いでした。何よりどれも素敵な服だったので、撮影に集中できましたし、楽しかったです。普段はスポーツウェアが多いので、機会があればいろいろなスタイルに挑戦したいですね。特定のブランドを選ぶよりも、いろいろとミックスするのが好きなタイプです」
——本国ではモード誌にも出演なさっていますし、ハイブランドのショーに招待されたりと接点も多いですよね、これから挑戦したいスタイルはありますか?
「ファッションは好きですが、普段はスケートに集中しているので、あまり詳しくはないんです。だから、最近の体験を経てハイファッションの世界の入り口に立ったといった感覚なんです。いつの日かデザイナーの哲学がこめられた、ほかにはないピースのコレクションにも挑戦してみたいですね」
チャ・ジュンファン●2023年世界選手権銀メダリスト、2022年四大陸選手権優勝、2018-’19グランプリファイナル銅メダリスト。韓国の自国選手権では7連覇中というスター選手。子役としてCMやドラマにも出演していた。昨年はジュニア時代に選手としても仲のよかったENHYPENのSUNGHOONさんとBTSの「Black Swan」を一緒に踊ったテレビ出演も話題になった。