SPUR 2024年9月号では、「知っていますか? 中国の今」と題して、隣国のアップカミングなトレンドをお届けしています! そんな本特集内で注目した現象のひとつが、空前のフレグランスブーム。to summer(观夏)はこのシーンを牽引するブランドのひとつとして、本誌でもたっぷりフィーチャーしています。「東洋」の世界観を軸に、ビジュアルやパッケージデザインに美意識が貫かれているのが特徴。何より“茶”をモダンに表現した調香が素晴らしいんです。ここでは特別にファウンダーのひとり、Shen Li(沈黎)さんの拡大版インタビューを公開します!
“観夏閑庭”(to summer garden)という旗艦店を、上海旧フランス租界湖南路111号にオープン。この建物は1936年に建てられたスパニッシュ様式で、かつてスペイン人画家とその恋人が住んでいました。私たちが発見したとき、すでに建物は壊れかけていて。この洋館と建築を守りたいと考え、歴史建造物保護の修復チームを招集し1年かけて修復。木製階段やシャンデリアや暖炉など、本来のディテールを維持することができました。
ブランドとしてここまでする意味としては、これからの若者にはショッピングモールだけでなく、日々を暮らすその土地を知り、文化背景や街そのものにも関心を寄せてほしいから。to summerがそのきっかけを作ることで、より豊かになると考えています。
人々は、香りに“情緒”を求めるようになった
––2018年のブランドのローンチから今まで、お客さんの変化はありましたか?
当初は、香水マーケットは依然として西洋の香水ブランドがメインで、東洋の香りに対しては、あくまでもトライアルするくらいの温度感でした。それが近年では、中国本土全体の景気が向上することで、国民が自国の文化に自信を持ち、自らが東洋のカルチャーや歴史を探究、理解するようになったと感じています。今では顧客自身がブランドのよい理解者となり、布教するようなパートナーとなっています。
また、初めは写実的な“東洋の香り”を好む声が多かったのですが、今はより情緒的な表現を求めています。たとえば、お茶でいうと东方哲学シリーズで「VOID」(空境研茶)というプロダクト。濃厚な中国茶の香りを苦味と甘味で表現し、それだけでなく茶道にある一期一会の価値観を香りの表現に取り入れています。そんな変化があるからこそ、香りのクリエイティビティを探究する上で、より大胆になることができています。
2018年に北京で創業。中国茶や竹、菊、松など“東洋の香り”をコンセプトにしたフレグランス、そして伝統文化をモチーフとしたモダンな世界観で知られる。現在ショップは北京、上海、杭州、南京、成都、無錫に12店舗がある。
中国版『Harper’s BAZAAR』誌に携わった後、2018年に化粧品EC販売の刘惠璞、デザイナーKhoonとともに3人でフレグランスブランド、to summerをスタート。
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