『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン シーズン2』、《黒装派》vs《翠装派》王家の壮絶な内乱はいかに! プライベートも仲良しなエマ・ダーシーとフィア・サバンに物語のテーマなどを聞いた(*少しネタバレあり) #ハウスオブザドラゴン

TV史上最高と言える人気と評価を得た『ゲーム・オブ・スローンズ』(以下『GOT』)の200年前が舞台となった前日譚『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』(以下『HOTD)。そのシーズン2の配信がついに開始した。エピソード1では、シリーズの原作となったジョージ・R・R・マーティンによる小説『炎と血』の中でも、最も有名な場面が映像化され衝撃的な幕開けとなり話題に。アメリカで配信されたHBO Maxでは史上最高のストリーム数を獲得した。

シーズン2の展開は?

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ターガリエン家に劇的な衰退を招くことになる内戦を描いたこの物語。かつては親友だったエマ・ダーシー演じる”黒装派”レイニラ・ターガリエン王女と、オリヴィア・クック演じる”翠装派”アリセント・ハイタワー王妃の、先代王ヴィセリースの後継を巡る対立が描かれているが、このシーズンではそれが一層激化する。

『GOT』は、ファンタジーの世界を舞台にしながらも現代の政治が映し出されていることが人気の理由のひとつだった。が、『HOTD』においては、とりわけ家父長制社会において女性が権力を持つことについて描かれているのが最大の魅力だ。

レイニラ とアリセントは、ティーネイジャーの時に出会い、権力を持つ女性に成長していく。しかし、社会が彼女たちにいかに障害となるのか。王女になっても、常に抑圧されるのか。それが多くの人が惹かれる理由のひとつでもあるのだ。”翠装派”のアリセントを演じるオリヴィアと、彼女の娘であり王女であるへレイナ・ターガリエンを演じるフィア・サバンに、エピソード1の残酷なラストシーンについても聞いた(*少しネタバレあり)。

女性が権力を持っていること、女性のエンパワメントについて

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——物語については詳しく話せないと思いますが、感情的な面において、シーズン1と比べてどのように違うと思いますか?

オリヴィア「シーズン1で、アリセントは、権力の頂点にいるけど、その後、必然的にそれが衰えていきます。彼女とレイニラの昔からの結び付きも断絶寸前で、レイニラが昇格した後、アリセントの本性が露呈していく。彼女が領土を統治しなくなったら、誰も彼女に耳を傾けてくれなくなるから。だからシーズン2の彼女はものすごく怯えています。それをいかに克服しなくてはいけないのかが描かれているのです」

フィア「シーズン2では、へレイナにもっとドラマが起きるので、彼女についてより知ることになると思います。彼女は、自分は王家に合っていないと思っていて、自分の地位も心地良く思っていない。それなのに、王女になってしまうので、その居心地の悪さも増していきます。だからこのシーズンでは彼女の不安が増大するのが分かります。一旦崖から転げ落ち出したら止まらなくなる。この家族には、それが起きているのだと思うんです」

——このシリーズでは、女性が権力を持っていること、女性のエンパワメントについて描かれているのが興味深いところです。

フィア「このシリーズは、中世を舞台にしながら、女性が主体性、自主性をを持とうとしていること。そして、それがいかに困難なのかが描かれています。彼女たちに立ちはだかるのは、歴史に自分の名前を残すことしか考えていない男性たちです。彼らには、大きな世界が見えていない。領土にとって何が最良なのかは全く考えていないんです。だから、女性が統治した方が世界は絶対に良くなるはずなのです。それは今、私たちが、世界中で目撃している悲惨な事態とも重なるような気がします」

オリヴィア「ただこれは家父長制度だけの問題、男性対女性だけの問題とも言い切れないと思います。私たちが関わる文化全体の問題だと思うんです。だからこのシリーズでは、それが女性同士の関係性の中からも見えてくると思います」

フィア「本当にそうですね」

オリヴィア「それは彼女たちがどう育てられたかの結果でもあり、だから今シーズンでは、母と娘の関係性もとりわけ見どころになります。特にアリセントひととなりが、これまで以上に浮き彫りになる。でもアリセントは、若かりし頃の自分をヘレイナに見ていて、どれだけの呪縛があるのかも分かっているし、どれだけ女性蔑視が根深いのかも象徴しています」

エピソード1の残酷な衝撃のラストシーンでの心情は?

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——エピソード1の残獄な衝撃のラストシーンについて伺いたいのですが、あのシーンの撮影はどのようなものでしたか?

フィア「あのシーンは脚本では、あまりにシンプルに書かれていて、それが一層不穏でした。どれだけ最悪なのかを象徴していたと思います。だから、演じる方としては役に立ったんです。もちろんあんな経験したことなかったから、可能な限り、どれだけショッキングなことなのか、その場の空気感から引き出そうとしました。エピソード1の最後のシーンは、言葉にはならない会話が交わされていたような感じで、心を全て解放するように演じました」  

オリヴィア「あなたの演技が、本当にシンプルで美しくて感動したの」

フィア「そんなこと言ってくれてありがとう。私は犬が蹴飛ばされたから泣きそうになった」

オリヴィア「あれは本当に最悪だった」

——お二人とも普段からレッドカーペットでも個性的で素敵ですが、今シリーズの衣装についてはどのように思っていますか?

オリヴィア「衣装は、贅沢に生地を使っているから本当に美しいんだけど、ものすごく締め付けられていて、苦痛だし、辛い。でもそれがあの時代の役を演じるのに、ぴったりだと思う。実際、感情が押さえつけられているから。歩くのも辛いし、階段を上るのも大変だし、トレイに行くのも大変で、何もかも大変。重いし。でもこの抑制された役を演じるのにはぴったりなの」

フィア「私もそう。ものすごく押さえつけられているからこの衣装が好き。こんなに体が締め付けられた状態のヘレイナの心の中では何が起きているのかしら?と考えられるから。彼女は絶対に着心地が悪いと思っているし、だから姿勢がいつも悪い(笑)。あれはわざとなの。でもそのせいで、ある時TVで見ていたら、私の胸が異様に大きく映っていてびっくりしたこともあった(笑)。でも、その不自然さも含めてこの役を象徴していると思うんです」

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オリヴィアとフィアはプライベートではどんな関係?

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——出演者の皆さんは、すごく仲が良いように思えるのですが、久しぶりに再会してみていかがですか?プライベートでも遊んだり、グループチャットしたりするのですか?

オリヴィア「プライベートでも会うんです」

フィア「(シーズン2の)撮影が終わってからすでに2回は一緒に休暇に行っているし(笑)」

オリヴィア「コスタリカに行って、アイスランドも一緒に行った」

フィア「オリヴィアの誕生日(12月27日)にアイスランドに行ったの」

オリヴィア「あれは本当に最高だった」

フィア「会わない方が珍しいくらいで」

オリヴィア「しかも家が近所だし」

フィア「そう」

オリヴィア「フィアは、私の家の鍵も持っているの」

フィア「ビーチサンダルで行くくらいの距離で」

オリヴィア「まだ鍵持ってる?」

フィア「もちろん。だって彼女がいない時にお邪魔してお風呂に入っているの。うちにはバスタブがないから(笑)」

 

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——オリヴィアとフィアは母娘の役ですが、お二人は、実は年齢はそれほど離れていないですよね。(オリヴィア30歳、フィア25歳)でも、プライベートでは、役柄と一緒で母親的な気持ちになりますか?

オリヴィア「母親みたいに振る舞うことが多い気がします」

フィア「確かに。でも、友情における愛って、お互い母親になったみたいなところがあるでしょ。それに私は、(TVシリーズの)経験も浅くて、慣れていないから、怖いと思うことも多くて。でもオリヴィアがいてくれるおかげで、すごく落ち着いて演技にのぞめるの。すごく緊張していたりすると、『考えすぎなくて良いから』などと声を掛けてくれることがあって、『そうね』って思って落ち着けたりするから」

オリヴィア「撮影現場って色々とうるさいし、それにこれはあなたにとっては、初めてに近い仕事で、でも最初にやる仕事としては、あまりに規模が大きいから。私はあなたに比べたら慣れてて冷めているのかもしれない(笑)。12年間もやっているからね」

フィア「でも、あなたはこれがいかに楽しい仕事なのかも教えてくれてる。だからあなたと仕事できて本当に本当にラッキーだと思っている」

オリヴィア「私の方こそラッキーだと思っているよ」

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——かなり複雑な感情を表現する役ですが、撮影前は一人きりになって精神集中したりするのですか?

オリヴィア「そういうのは実は苦手で。1日中役になりきって落ち込んでいるのも好きじゃないし。アリセントはいつもギリギリの精神状態を保っているから、撮影の合間や昼食の時は、楽しくしていないと、暗い気持ちのまま過ごしたら、その感情に押しつぶされて、疲弊してしまう。だから、本番とそうでない時は気持ちを切り替えるようにしている」

——シーズン3がすでに予定されていると聞きましたが(*インタビュー後に正式に発表)。

オリヴィア「どうかしら。アリセントには、未来に楽しみにするようなことが待っているとも思えない。だからシーズン3があるとしたら、これ以上どうやって落ち込んで、トラウマを抱えた状態を演じられるのか?ってことになると思う」

フィア
「アリセントの未来が暗いのだとしたら、へレイナも同じだと思う」

ハウス・オブ・ザ・ドラゴン シーズン2 
U-NEXT にて⾒放題で独占配信中 

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その他の出演者からシーズン2の見所を聞いた

《翠装派》王の後妻アリセントの息子エイゴン2世を支持

エイゴン・ターガリエン2世(トム・グリン=カーニー)/アリセントの長男。異母姉のレイニラから王位を奪い、鉄の王座に座る

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「彼は、王になりこれまで以上堂々としている。予測不可能で、悪夢のような存在。気まぐれだし、乱暴者だし、すぐにキレる。そういう役を演じるのは楽しい。シェイクスピアのリチャード2世は参考にした。彼の弱さや、不安、自己嫌悪、闇を表現したかった。それから、『時計じかけのオレンジ』でマルコム・マクダウェルが演じたアレックスも。あの強烈なインパクトで、予測不可能な危険さとかね。彼は、負の連鎖で坂を下っている感じなんだ」

エイモンド・ターガリエン(ユアン・ミッチェル)エイゴンの弟

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「シーズン1のエピソード10で彼がやったことは、最悪だし、この番組をハイジャックして、ホラー映画にしたと思う。でも、シーズン2では、より恐ろしいことが起きる。彼の影や、新しい面を見せるし、それを見て視聴者がどう思うのか試されると思う。役作りにあたり、メタリカ、スリップノット、トゥール、キルスウィッチ・エンゲイジ、システム・オブ・ア・ダウンなどを聴いている。刺激的だし、挑発的だから、この役にぴったりだと思うし、個人的にも好きなバンドなんだ。彼は、何を考えているのかは分からないけど、彼が何かを考えているのは見て分かると思う。それが彼の恐ろしいところだ。シーズン2でも、彼が次に何をしでかすのか分からない」

クリストン・コール(ファビアン・フランケル)アリセントの護衛。《王の楯》の司令官。平民出身

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「シーズン2のエピソード1のラストで、最悪なことが起きるけど、クリストン・コールに、大きな責任がある。王都での惨事が起こった際、アリセントと一緒にいたけど、一緒にいなければ酷い事態を防げたかもしれないから。彼にとってはそれがこのシーズンのキーとなる」

ラリス・ストロング(マシュー・ニーダム)父と兄ハーウィンの死によりハレンの巨城領主の座を引き継ぐ。

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「シーズン1では彼が何をしたかは見えるけど、なぜそこにたどり着いたのかはよく分からない。シーズン2ではそれが分かる。でも全ては彼の思う通りに進まなくて、乗り越えなくてはいけない障害が出てくる。だから彼は自分の計画を変えて、即座に行動しなくてはいけなくなる。そのために努力しなくちゃいけなくなるんだ。このシリーズで交わされている会話は、今世界の政府のどこかで実際に交わされていると思う。そう考えると物凄く恐ろしい」

《黒装派》王女レイニラを支持

デイモン・ターガリエン(マット・スミス)ヴィーセリス王の弟。レイニラの叔父であり夫

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「彼は、悲しみとたたかっている。乱暴になり、悪魔と対峙している。それがこのシーズンではさらに悪化する。悲しみでよりおかしくなっていくんだ」

レイニス・ターガリエン(イヴ・ベスト)先代王の実子だが、性別を理由に従兄弟ヴィーセリスに王位を奪われる

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「シーズン1では、彼女は全てを失い、最悪な悲しみが続く。シーズン2では、彼女の悲しみだけでなく、母として全員の悲しみを抱えようとしている。そして、悲しみを乗り越え、徐々に解放されようとしている」

コアリーズ・ヴェラリオン(スティーヴ・トゥーサント)レイニスの夫

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「シーズン1では、家族のレガシーを守ることに必死になっていた。娘を失うが、まだ息子がいるから、レガシーは守れると思っていた。しかし息子も死んでしまう。さらに、孫まで死んだ時には、自分の野心のせいで、家族が全て喪失したと悟る。シーズン2のエピソード1では、孫を失った悲しみにくれ、それに対する罪の意識を感じている。シーズン2では、その償いをしようとするんだ」

ジャセアリーズ・ヴェラリオン(ハリー・コレット)レイニラとコアリーズの息子レナーの長男とされるが、実父は別にいるのではと疑われている

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「シーズン2で、ドラゴンストーンの外の世界を知り、自分が生まれた環境がどれだけ恵まれていたのかを知る。しかし彼は孤独で、父親的存在がいないし母も忙しい。だけど、ベイラにだけは何でも話せると思っている。二人とも子どもだし、悲しいという意味で同じ経験をしているから。二人ともお互いが好きで、シリーズの中では最も健全な関係だし、他のカップルとは違う。シーズン2では、この二人の新たな関係が見られると思う」

ベイラ・ターガリエン(ベサニー・アントニア)デイモンとコアリーズの娘レーナの長女。ジャセアリーズと婚約

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「べイラは、頂点まで行って落ちた唯一の役柄だから、その両方が分かっている。『HOTD』は、男性の視点で作ることもできたけど、女性が最前線にいるようなシリーズになったのが素晴らしいと思う。ライアン・コンダル(共同企画、ショーランナー、製作総指揮)は、アリセントとレイニラを主人公にすると決めたわけだから。それが多くを物語っていると思うし、人々がどんな番組を見たいのかを物語っていると思う。そういう作品に出演できて光栄です」