「日本の何もかもが恋しい」。映画『レンタル・ファミリー』主演ブレンダン・フレイザーにインタビュー

分断社会での新しい「つながり」を描く、映画『レンタル・ファミリー』

「日本の何もかもが恋しいです。また早く訪れたい。日本では、僕という存在——背の高さも含めて、いろいろな意味で"外側"に立っているはずなのに、それでもあれほど心から受け入れられていると感じた経験は、これまであまりなかった」

そう語ってくれたのは、ブレンダン・フレイザー。『ザ・ホエール』(2022)で感情があふれ出すような演技を見せ、アカデミー賞主演男優賞に輝いた彼は、受賞直後の注目の渦中で、全編日本ロケによるHIKARI監督の『レンタル・ファミリー』を次作に選んだ。

『レンタル・ファミリー』主演、Brendan Fraser(ブレンダン・フレイザー)のポートレイト

フレイザーが演じるのは、日本に滞在する売れない俳優フィリップ。レンタル・ファミリー社に所属している。長年行方不明だった父親として少女の前に現れた彼は、"両親がそろった家庭"であることを装い、少女が名門校の入学試験を受けられるようにする役割を担う。

「そこから、倫理的な問いが浮かび上がります。フィリップが感じるこのジレンマこそが、この映画の核にあります。作りものと現実、そのあいだの領域を描く舵取りは、HIKARIに全面的に委ねました。個人的には、その役割が誰かの助けになるなら、害があるとは思わないのですが」

さらに今作のテーマについて、こう続ける。

「HIKARIが希望を託していたのは、分断をつなぐことでした。合成されたつながりが増え、世界が分断されていく中で、彼女は本物の人間同士のつながりを描く作品を作りたかったのだと思います」

役作りの一環として、日本語の特訓も重ねた。

「言葉そのものはわからないけど、『何を言っているか』はわかる程度に(笑)。共演した柄本明さんは、映画界のレジェンドで、いわば日本のイアン・マッケランのような存在。彼のほうが、僕が日本語を覚えた以上に、英語を話せるようになっていました。僕は、言語の正確さよりも、その言葉が持つ意味を話すように努力した瞬間から、一気に理解できるようになったんです」

滞在中には、フードライターのアンソニー・ボーディンが紹介し、世界に広がったコンビニのエッグサンドにもハマったそう。「僕はファミリーマート派なんです。たまにローソンでも買いましたが」と笑う。

映画のハイライトとも言える桜のシーンについては特別な思いを込めてこう振り返った。

「撮影時、桜の開花が、10日から12日くらい遅れていたんです。あのシーンには、再生、刷新という意味があり、美しさが感じられますよね。スタジオで撮ったら、退屈なものになっていたでしょう。だから桜が咲くのを待ち、慌ててロケ地を探しました。幸運にも最終的にあの橋を見つけましたが、撮影できたのはたった一日でした。なんと翌日、まるで詩のように風が吹いて、桜は一気に散ってしまった。その一瞬しか存在しない儚さ、美しさが、僕をとても物悲しい気持ちにさせたんです。同時に、『また日本に戻って、もう一度あれを見たい』と強く思わせる体験でもありました」

INFORMATION

『レンタル・ファミリー』

『レンタル・ファミリー』のブレンダン・フレイザーのワンカット

日本で暮らす売れない俳優フィリップ(B・フレイザー)はレンタル・ファミリー社でさまざまな役割を演じながら、老名優の喜久雄(柄本明)らと心を通わせていく。人々との交流を通じて自らを見つけていく物語。(2月27日公開)

Brendan Fraserプロフィール画像
俳優Brendan Fraser

ブレンダン・フレイザー。1968年生まれ、NY在住。『ハムナプトラ』(1999〜2008)シリーズで世界的スターとなるが、その後活動のペースを落とす。『ザ・ホエール』で復帰しオスカーを受賞。『ハムナプトラ4』の噂もあり期待が高まっている。

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