いよいよ、彼の年。若手最高の実力派と呼ばれ続け、過去にも2度オスカー候補入りしたティモシー・シャラメが、今度こそ受賞しそうなのだ。その作品は、50年代を舞台にした『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』。
実在の人物をモデルにした主人公マーティは、卓球で世界を制覇する野望を持ったユダヤ系ニューヨーカー。『君の名前で僕を呼んで』(’17)公開前にジョシュ・サフディ監督に会っていたティモシーは、7年もかけて卓球のトレーニングに励んだ。
「ハリウッドの若手にとって、ジョシュと組むのは夢。彼は、言ってみれば、ニューヨークの腹の底の部分をリアルに描き、役者が洗練されすぎるのを嫌う。彼の世界に合わなくなるからです。たとえば僕が映画でかける眼鏡も、目が小さく見えるようにしたんですよ。『監督はいつも役者さんの目が大きく見えるようにしてと注文するものなのに』と、眼鏡店の方は驚いていました」
叔父が経営する靴店のマネージャーに納まりたくないマーティは、お金もないのにロンドンに行き、卓球の世界選手権に挑む。だが、日本の選手、エンドウにコテンパンにやられ、プライドはズタズタに。エンドウを演じるのは、2025年の東京デフリンピックで卓球の日本代表を務めた川口功人。映画の中では最大のライバルでも、現場ではお互いに楽しいときを過ごしたとか。
「功人との仕事は素敵でした。気取りがまるでなく、ものすごく仕事熱心。シーンにエネルギーを持ち込んでくれました。通訳を介していても、彼にユーモアのセンスがあるのは明白でした」
クライマックスのロケは、東京で行われた。時代物でもあり、カナダかどこか近場でセットを作って撮影できそうなものだが、サフディ監督はエキストラを日本生まれの日本人で固めたかったのだ。それは、ティモシーにとって最高のニュース。
「東京は、アメリカ人やフランス人を魅了する街。そこで撮影できるなんて、信じられませんでした。日本には非常に優秀なクルー、職人さんたちがいます。準備には何カ月もの時間をかけましたが、あの試合のシーン自体は、わずか1日半で撮ったんですよ。『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』(’23)で来日したときと違い、今回は自由時間もありました。日本の食べ物は最高! 中でも一番記憶に残っているのは、スパゲティ ボロネーゼ。人生で一番おいしいスパゲティでしたね」
『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』(’24)のときには、数年かけて歌、ギター、ハーモニカを習得した。いつでも200%を注ぎ込むのは、彼の性格。
「ニューヨーカーの気性や、若い頃スポーツをしていたのも奏功しているかも。自分には演技の才能があるようだし、最大の努力をし、経験を重ねるのみ。僕はそう信じています」