何かに夢中になっている人たちの姿に目を奪われる、元気づけられる。好きなことを見つけたい、夢に挑戦したいときに背中を押してくれるマンガはこれ! 『これ描いて死ね』 とよ田みのる著 小学館ゲッサン少年サンデー コミックス/既刊3巻・各820円 舞台は伊豆王島の高校のマンガ同好会。マンガを愛する少女たちが、読み、描き、笑い、悩みながら進む"まんが道"を描く、マンガ家成長物語。「マンガ大賞2023」大賞を受賞。 好きなものに出合い、熱中する姿をかっこよく描いて、新しいことに挑戦する人の背中を押してくれる作品を紹介します。とよ田みのる先生は以前から好きで、「マンガ大賞2023」受賞のニュースもうれしかった! マンガが大好きな" 読み専 "の主人公がコミティア※を訪れ、「そっか…漫画って、自分で描けるのか」と気づく『これ描いて死ね』。 離島の高校でマンガを読んだり描いたりする少女たちと指導する手島先生の言動には、とよ田先生のマンガ愛と、楽しんで読み、描く姿が色濃く投影されているようです。『コロコロコミック』を思い出させるマンガ表現や、大胆な書き文字から、作家の生の感情が感じられるのも最高です。おそらく今後、作中で手島先生がマンガを描くべき瞬間が訪れるはず。それがいつ、どんなふうに描かれるのかワクワクします。 ※コミティア……一次創作ジャンルに限定される自主制作マンガ誌展示即売会。 『ブレス』 園山ゆきの著 講談社マガジンエッジ コミックス/既刊3巻・各715円 メイクの研究をする元モデルの男の子と高身長の背を丸めた女の子。学園祭への出場が決まり、他人の期待からはみ出さないよう生きてきた二人の日常が鮮やかに動き出す。 諦めかけていたメイクアップアーティストとしての道を、高校生の男の子が進んでいく『ブレス』は、絵がすごくキレイで魅力的です。園山ゆきの先生、年齢も経歴もわからないのですが、とにかく絵がうまい。理解も描写も高解像度だからこそ、メイクアップの力や魅力をきっちり表現できるんだと思います。化粧についてはまったく詳しくないのですが、アイテムやプロセス、どんな点が評価されるのかなどを、高校生たちの目線を通して教えてもらえるのも面白い。この主題にして、ルッキズムや美醜の話に偏らないバランス感覚も素晴らしいですよね。 2巻に収められた第4話。夏祭りの屋台が並ぶ道が、ランウェイという夢につながっていく見開きの表現など、マンガならではの演出も堪能できます。 『ガールクラッシュ』 タヤマ碧著 新潮社コミックニコラ/既刊5巻・各544円 ※4月21日時点、電子配信のみ。 ビジュアル最強、スポーツ、歌、ダンスや勉強も努力でものにする百瀬天花は高校1年生。ふいに訪れた出合いと、恋と嫉妬の思いからK-POPアイドルを目指すことに。 未知の世界をのぞきこめる、知らないことを教えてもらえるという楽しみは『ガールクラッシュ』にも。K-POPグループにも日本人メンバーがいるけど、アイドルってどうやってなるの? どんな授業や練習があるの? という疑問にも、取材ベースの情報を盛り込み具体的にこたえてくれます。 この主人公は、器用になんでもこなす学校の人気者だったのが、恋愛感情がトリガーになってアイドルを目指す。人に流されるようにして立てた目標に、次第に熱中していく様にリアリティがあります。若くても、大人になっても、新しいものに出合って、掘って、夢中になれるって最高だ!と胸が熱くなりますよ。 マンガ編集者林士平 マンガ編集者。「少年ジャンプ+」にて連載中の『SPY×FAMILY』『チェンソーマン』『ダンダダン』『幼稚園WARS』『BEAT&MOTION』担当。「USJに『SPY×FAMILY』が上陸!」。 マンガに関する記事はこちら! 【林士平の推しマンガ道】2025年、"ロマンタジー"旋風が日本にも到来!? 大人もハマる、【推しの子】の魅力とは? 齋藤飛鳥さん、村田沙耶香さんなど、ファンが語る! 『【推しの子】』アイ、一夜限りの復活祭。横槍メンゴさんが特別に描き下ろし! 【林士平の推しマンガ道】名手の名作は短〜中編マンガにあり! 【林士平の推しマンガ道】旅情もリアルな情報もマンガで摂取 【林士平の推しマンガ道】作家の想像力が読み手を異世界へ連れていく、珠玉のSFマンガ