映画を観れば、世の中の“今”と“未来”がわかる。世界中の映画祭を取材する3人のジャーナリストが、2026年のアカデミー賞注目作を予想! 『ワン・バトル・アフター・アナザー』、『ハムネット』などの話題作から彼女たちが“1票を投じたい”私的オスカーまでお届け。

【2026年最新映画】ジャーナリスト3人が、 オスカー注目作を予言!

映画を観れば、世の中の“今”と“未来”がわかる。世界中の映画祭を取材する3人のジャーナリストが、2026年のアカデミー賞注目作を予想! 『ワン・バトル・アフター・アナザー』、『ハムネット』などの話題作から彼女たちが“1票を投じたい”私的オスカーまでお届け。

中村明美さんプロフィール画像
中村明美さん

NY在住。映画・音楽ライター。サンダンス映画祭、トロント映画祭、NY映画祭を毎年取材している。

猿渡由紀さんプロフィール画像
猿渡由紀さん

LAをベースに、ハリウッドスターや監督のインタビュー記事を執筆。サンダンス映画祭を毎年取材。

佐藤久理子さんプロフィール画像
佐藤久理子さん

パリ在住。カンヌ、ベネチア、ベルリン映画祭に参加し、米ゴールデン・グローブ賞の国際投票メンバー。

『ワン・バトル・アフター・アナザー』

『ワン・バトル・アフター・アナザー』

かつては革命家だったが、今は冴えない日々を過ごすボブ(レオナルド・ディカプリオ)。そんな彼のひとり娘ウィラ(チェイス・インフィニティ)が、とある理由から命を狙われる羽目に。彼女を救うため、彼の闘志が蘇る。(公開中)

『レンタル・ファミリー』

暴力や無秩序、中絶や国境の断絶といった社会問題を背景に、ときに滑稽な現実を、エンタメとして描き出す。そしてその先にあるのは、父が娘を守り抜こうとする家族の物語。絶対的な希望が胸に灯る感動作。(中村明美さん)

全編フルスクリーンのIMAX上映による、映像的な醍醐味とスケールは圧巻! アメリカン・ニュー・シネマにオマージュを捧げたカーチェイスは見事です。ヒロイン役の新星チェイス・インフィニティにも注目を。(猿渡由紀さん)

監督のポール・トーマス・アンダーソンは、業界でずっと尊敬されてきた人物。今作は時事性・ユーモア・アクション、すべてにおいて完成度が高く、彼の最高傑作では。2025年のフロントランナーに間違いなし!(佐藤久理子さん)

『ハムネット』

『ハムネット』

シェイクスピアによる戯曲『ハムレット』の誕生秘話に迫る同名小説を映画化。作家のウィリアム(ポール・メスカル)と、妻のアグネス(ジェシー・バックリー)は、不運にも11歳の息子ハムネットを失ってしまう。ロンドンを舞台に、喪失の深い悲しみや、家族愛の絆の強さ、ペスト禍に揺れる人々の姿を描き出す。(2026年春に公開予定)

『ハムネット』

古典『ハムレット』を大胆に再解釈する、革新的なアプローチが衝撃的。普遍的な悲嘆をリアリズムと詩的な語りで昇華し、カタルシスを生む。言葉にならないほど深い悲しみに襲われる、奇跡のような一本。(中村明美さん)

知られざるシェイクスピアの人物像と、『ハムレット』が生まれた経緯を描いた作品。神秘的でロマネスクな世界観で古典に神秘的なエモーションを吹き込んでいます。J・バックリーとP・メスカルの化学反応に震える。(猿渡由紀さん)

アジア系女性として初めてアカデミー賞監督賞を受賞したクロエ・ジャオ監督作品。喪失をどう乗り越えていくのかという、普遍的なテーマが共感を呼ぶ。ジェシー・バックリーの名演は、主演女優賞級!(佐藤久理子さん)

『罪人たち』

『罪人たち』

『ブラックパンサー』(’18)で社会現象を巻き起こしたライアン・クーグラーと製作チームが再結集。1932年の信仰深いアメリカ南部ミシシッピ・デルタを舞台に、一獲千金を夢見る双子の兄弟がダンスホールをオープンした。しかしその夜、"招かれざる客"の来訪により、一夜にして雲行きが怪しくなっていく。南部ゴシックを現代的に描き出した。(配信中)

『罪人たち』

“ヴァンパイア × ギャング × ウエスタン × ミュージカル”が見事に交差する、圧巻のエンタメ作。マイケル・B・ジョーダンの一人二役、そしてクーグラー監督の魂の叫びが、大胆な社会的メッセージへと姿を変える!(中村明美さん)

ヴァンパイアというジャンルと、1930年代アメリカ南部の黒人社会、人種差別問題を合体させたアイデアは唯一無二。予測不可能な展開に引き込まれます。クーグラー監督ならではの、挑発的エンタメ問題作。(猿渡由紀さん)

ビジュアル、音楽が素晴らしく、感覚のすべてで吸収させる映画。エンタメ性の中に、アメリカの人種差別、白人が黒人の文化を搾取してきたリアルなどがしっかりと織り込まれ、骨太のメッセージを届ける。(佐藤久理子さん)

1票投じたい! “私的”オスカー

『Sirāt』 by 佐藤久理子さん

『Sirāt』

5カ月前に失踪した音楽好きな娘を探し、スペインからモロッコのレイブパーティを訪れる父と息子。だが捜索のかいはなく、ふたりは次の会場に移動することを決めるが、道中は思わぬ危険に満ちていた。(日本公開予定)

2025年のカンヌ国際映画祭で出合い、同年一番の衝撃とも言うべきインパクトを受けた作品。砂漠のレイブパーティへ、父と息子が家出した娘を探しに行くという筋立てに、哲学的なメタファーが詰まっている。広大な風景を映した圧倒的映像美、砂漠に響き渡る爆音の迫力、険しい山岳地帯を車で進むスリル、そして唐突に訪れる危険。Sirātとはイスラム教の聖典コーランに書かれている、地獄の上の、他の場所へとつながる橋のこと。オリヴェール・ラクス監督はそこから煉獄をさまよう人々の姿をイメージしたという。独創性とともに、子を想う父の痛々しさにも魂を揺さぶられる。

『ウィキッド 永遠の約束』 by 猿渡由紀さん

『ウィキッド 永遠の約束』
『ウィキッド 永遠の約束』

大人気ブロードウェイミュージカルの映画化。前編『ふたりの魔女』に続き、後編も11月下旬に北米公開されると、瞬く間に大ヒットに。今作のために書かれた新曲もあり。(2026年3月、全国ロードショー)

この映画は続編ではなく、元々ひとつの物語をふたつの映画に分けた後編。ストーリーのクライマックスにあたるため、必然的に感情面でより深く、女性ふたりの絆というテーマがパワフルに伝わってくる。よりユーモアにあふれた前編『ふたりの魔女』は、アカデミー賞に10部門で候補入りしつつ、受賞は衣装と美術のみだった。しかし今回は商業的にも成功した大作が最終章で主要な部門をかっさらう『ロード・オブ・ザ・リング』現象となるのでは⁉ これはグリンダの成長物語だったのだともわかるので、今回はアリアナ・グランデが助演女優部門でかなり有力とも思われる。

『マーティ・シュプリーム』 by 中村明美さん

『マーティ・シュプリーム』
【2026年最新映画】ジャーナリスト3人の画像_11

1950年代、プロ卓球選手を目指すマーティ(ティモシー・シャラメ)が、周囲の軽視を振り払い夢に向かって奔走する物語。日本での試合シーンも見どころだ。ジョシュ・サフディ監督。(2026年3月、全国ロードショー)

2025年は良作揃いで『センチメンタル・バリュー』とも迷ったけれど、A24製作『マーティ・シュプリーム』に1票。とにかくティモシー・シャラメの演技が圧巻なのだ。前作ではボブ・ディランになりきった彼(アカデミー賞をあげるべきだった!)が、今回は実在の1950年代の卓球選手をモデルにした役に挑む。サフディ兄弟の『アンカット・ダイヤモンド』(’19)を思わせる、すべてが悪い方向へ転がっていくドタバタ喜劇で、ティモシーはディランとは別次元の振り幅を見せている。いずれオスカーを手にすべきなのは間違いないが、今回は前作と併せて評価されるべき。