作・演出は三谷幸喜、出演は草なぎ剛と香取慎吾のふたりのみ。2015年に上演された奇跡の舞台「burst!~危険なふたり」が7年ぶりに再演! 公開初日を翌日に控えたタイミングで行われた三谷・草彅・香取出席の囲み会見&公開舞台稽古の模様をレポート。
香取が「三谷さんの作品に出られるということもそうですし、草彅剛はとても好きな俳優さん。古くからの付き合いですけど、今改めてこうやってふたりがぶつかり合えているのがとても楽しいです」と喜びを露わにし、草彅は「再再演をしたいという気持ちで終えるんじゃないかな」と意欲を燃やす。約35年という長い時間を共に過ごしてきた香取と草彅、そして三谷との絶対的な信頼関係が感じられた囲み会見が終わり、いよいよ舞台稽古へ。
【以下、舞台内容の詳細を含むため、ご注意ください】
幕が上がると、草彅と香取、それぞれがステージの上手と下手に設けられた部屋にいる。上手にいる草彅が演じるのは警視庁警備部第三機動隊・根上大五郎。下手にいる香取が演じるのは周囲に畑しかない一軒家に住む青木誠二。根上が青木に電話をかけ、「あなたの家に爆弾が仕掛けられました」と告げるところから物語は始まる。
仕掛けたのはゼマティスなる国際犯罪集団。本来は国会議事堂に仕掛けるはずだったが、実行犯が日本に来るのが初めてだったので、住所を間違えてしまい、何でもない一般人である青木の家に仕掛けられたのだと説明する根上。爆発の範囲内にある公園に生えている希少価値の高い植物を守るために、爆弾処理を青木に指示する。
根上に対し、「爆発するまでまだ時間があるのだから、大事なものだけを持って早く逃げたい」と青木は懇願するが、根上は聞き入れない。業を煮やした根上が「どうやら私たちは気が合わない。意識統一をする必要がある」と切り出すのだが、根上と青木のちぐはぐなやりとりは、強い絆で結ばれた草彅と香取の関係性を踏まえるとクスリとしてしまう。ふたりの白熱した芝居の応酬にどんどん高揚感とスリルが高まっていく。
上映時間は約100分。爆弾処理においてひとつターニングポイントを迎えたタイミングで場内が暗転し、再び照明が付くと、根上が香取に、青木が草彅に入れ替わっていた。役柄を交換したふたりは、何事もなかったかのように物語を進める。ふたりは姿かたちも声質も大きく違うわけで、一瞬でこれまでとは違う新しい根上と青木が誕生したことでパラレルワールドに迷い込んだかのような不思議な感覚を覚えた。根上となった香取が、青木(草彅)が必死で爆弾処理に集中する中で、つい先ほどまで根上(草彅)にやられて嫌がっていたことをするのは、まるで仕返しのようにも見えるし、不思議なデジャブ感があった。
基本的に根上と青木は対面せずに、電話のやりとりが延々と繰り広げられる。囲み会見で三谷は、「ふたりが顔を合わせるのは1回だけ。あとはずっと違う方向を向いて、会話を交わしている。なおかつ呼吸を合わせる必要がある綿密な構成が1時間半続く。ふたりはさらっとやっているんだけど、これは実は演劇的にはすごく高度なこと」だと熱弁していた。まさに、草彅剛と香取慎吾という役者としての力量を終始実感した舞台だった。
稽古とはいえ、素晴らしい熱演を繰り広げたふたり。上演後は毎回ふたりのフリートークが行われる。それはこの日の稽古後も同様だった。拍手が贈られる中、どこか神妙な面持ちで挨拶を切り出した草彅のテンションの低さを香取が突っ込むところから始まった。これまでずっと台本を片手に稽古をしており、囲み会見で「明日初日なのにまだ8割しか覚えていない」と言っていた香取が初めて台本無しでやりきったことに対し、「この人覚えてる!と思ってドギマギしました。初めて稽古した感じです。香取慎吾ってやっぱり一筋縄ではいかない男だね」と絶賛する草彅。
香取は「(草彅とは)35年ぐらいの付き合いなんですが、一度もケンカしたことないんです。心の中で『嫌だな』と思ったこともあまりない。不思議だよ」としみじみ言うと、草彅が「何だろうね。逆に俺のことどうでもいいと思ってるんじゃないの?(笑)」と返す。
香取が「ただ、初めて今回の稽古中に『こいつ、いつまで台本持ってるんだよ?』って空気を感じて、『は?』って気持ちになった」と明かすと、「この『burst!』でふたりの間に亀裂が入るかもしれない」(草彅)、『burst!だけにね』(香取)という、息の合ったやりとりも見られた。
香取が、「今日(のこの舞台)が素晴らしかったら、僕はもう明日から諦めようかな」と言ってステージ上に胡坐をかくと、草彅がハンドマイクとアコースティックギターを手に再登場し、生ギター&生歌を披露。途中から香取も加わり、力強いハーモニーを聴かせ、上から紙吹雪が降り、公開稽古は幕を閉じた。『burst!~危険なふたり』は日本青年館ホールにて、10月1日~10月26日の期間、上演予定だ。