人気マンガのスピンオフ、エッセイコミック、食でつながるシスターフッド。食べて、笑って、相手を思う。日常と人間関係を丁寧に描くマンガで元気をチャージ! 『1日外出録ハンチョウ』 上原 求・新井和也著 萩原天晴(原作) 福本伸行(協力) 講談社 ヤンマガKCスペシャル/ 既刊15巻・各¥726 『賭博破戒録カイジ』の登場人物・大槻を主人公に、気のおけない友人との時間を描く。地下労働の合間に訪れる地上での休日が楽しそう! 週刊ヤングマガジンで連載中。 日常を大切に、人生を楽しむ具体的なコツを教えてくれる作品としておすすめしたい『1日外出録ハンチョウ』。ギャンブルマンガ「カイジ」シリーズのスピンオフで、既刊15巻を通して読んでもまったく疲れない、笑いのセンスほとばしる最高のマンガです。地下暮らしの債務者がときおり地上に上がり、24時間限定で自由時間を満喫するのですが、主人公の食と遊びへのこだわりがとにかくすごい。おいしいものを食べる、友達の家に遊びにも行く、ドライブも花見もする。「大人ってこんなに楽しく遊べるの!?」「本編では掘り下げられない脇役がこんなに魅力的なキャラだったとは!」と驚きの連続です。特に好きなエピソードはホラー映画を観る回か、まさかのSFタイムリープ回。幽体離脱の回や脳内子育て回も捨てがたい。食を軸にときどき実験的な話をぶち込んでくるから、油断できません。ハンチョウたちはコロナ禍の制限があるなかでも自炊を楽しんだりして、この作品や『裸一貫! つづ井さん』はいずれ、パンデミック下におけるエンターテインメントの描かれ方についての、興味深い資料になるんじゃないでしょうか。 『裸一貫! つづ井さん』 つづ井著 文藝春秋/全5巻・¥1,045〜 オタクの主人公と友人たちが、推して、遊んで、笑い合う。家が近くても遠くても、コロナ禍でも新しい遊びを考案する。『腐女子のつづ井さん』に続くエッセイコミック。 『裸一貫! つづ井さん』が完結、東京での新生活を描く『とびだせ! つづ井さん』が始まりました。演劇やアニメやマンガをとことん愛する、人生を楽しむことに本気な"凝り性な成人女性"の絵日記です。「これやりたい、この人に会いたい、ここ行きたい」って言ったら、「やろう、行こう!」と一緒に楽しみ、誕生日には全力でサプライズを仕掛け合える友達がいる。推しと友情とハッピーにあふれた、豊かな日常に憧れます。 『作りたい女と食べたい女』 ゆざきさかおみ著 KADOKAWA it COMICS/ 既刊4巻・各¥770 少食で料理好きの野本さんと、たくさん食べたい春日さん。食を媒介に近づく二人の関係を丁寧に描く。NHKで実写ドラマ化された話題作。コミックウォーカーに掲載。 『作りたい女と食べたい女』の主人公二人は、マンションの同じ階に住んでいます。料理の絵がきれいで一見グルメマンガのようですが、2巻、3巻と読み進めていくとかなり違った感触を抱くと思います。彼女たちの感情がわずかに揺れ動く瞬間や、相手への想いを自覚する瞬間の描写が丁寧。食べたいという欲求の源泉もしっかり描かれ、キャラにリアリティがあります。3巻からは食べたくない女と作りたくない女も登場して、おいしそうに食べる人最高!とまとめてしまわない、このバランス感覚が優しく、真面目で秀逸です。 大事な人と過ごす時間を主体に描いた3作品、ぜひ読み比べてみてください。 マンガ編集者林士平 りん しへい。マンガ編集者。「少年ジャンプ+」で連載中の担当作に『SPY×FAMILY』『チェンソーマン』『ダンダダン』『幼稚園WARS』『BEAT&MOTION』。GWは台湾でのんびり過ごしました。 マンガに関する記事はこちら! 【林士平の推しマンガ道】2025年、"ロマンタジー"旋風が日本にも到来!? 大人もハマる、【推しの子】の魅力とは? 齋藤飛鳥さん、村田沙耶香さんなど、ファンが語る! 『【推しの子】』アイ、一夜限りの復活祭。横槍メンゴさんが特別に描き下ろし! 【林士平の推しマンガ道】名手の名作は短〜中編マンガにあり! 【林士平の推しマンガ道】旅情もリアルな情報もマンガで摂取 【林士平の推しマンガ道】作家の想像力が読み手を異世界へ連れていく、珠玉のSFマンガ