『ながたんと青と -いちかの料理帖-』 磯谷友紀 著 講談社 KC Kiss 既刊14巻・550円〜 京言葉で「包丁と青とうがらし」。ふくよかな響きのタイトルも印象的な『ながたんと青と−いちかの料理帖−』は、『Kiss』で連載中の磯谷友紀の代表作。2026年の春には、門脇麦と作間龍斗が出演する実写ドラマ第2シーズンの放送と配信が決定している人気作品だ。 「34歳の女性料理人と19歳の男子大学生の縁談から物語が始まります。終戦から間もない昭和26年の京都が舞台ですから、戦死した夫の兄や弟との再婚なども少なくなかった時代。とはいえ、女性がこれだけ年上というのはレアだったんじゃないかな。登場人物たちの人間性を際立たせるユニークな設定ですよね」 Ⓒ 磯谷友紀/講談社 病院に行きたがらないいち日をお姫様だっこ! 「息子に声をかけるところに周の優しい人柄や家族の結びつきを感じます」 料亭〈桑乃木〉を継いだ父を亡くし、料理人の夫に先立たれたいち日は、西洋料理のコックとして修業中。200年続く料亭をなんとしても守りたい伯母と、大阪でホテルを営み京都進出を目論む山口家の思惑が絡み合い、山口家の三男・周との政略結婚に巻き込まれることに。 「この夫婦だけでなく、桑乃木家、山口家、兄や妹の結婚相手など、いくつもの家族の形が描かれていきます。父や長男といった一家の大黒柱が絶対だという家父長制に基づく家族観があって、その呪縛やコントロールから逃れようとするキャラがいる。 それがかっこいいんですが、周も当初はかなりエゴイスティック。自分の居場所を作ろうという腹づもりだったのが、いち日の仕事に対する姿勢を間近に見ることで、だんだんといち日のため、〈桑乃木〉のため、家族のためと意識が変わっていきます。 二人の感情の揺れや変化をリアルに感じさせる技がすごいんですよ。派手な泣き顔や笑顔を見せるというより、リアルな人間の表情にも似た生っぽい瞬間をこまやかに挟み込んで、物語に説得力を持たせています」 Ⓒ 磯谷友紀/講談社 東京で研修中の周がお盆の京都に帰省。目の寄りで、静かな喜びと、「抱きついてもええの?」と逡巡する気持ちを表現 主人公の二人をはじめ、自ら望んだわけではない状況に、真面目に向き合い抗う人々の姿が美しい。 「伯母が突然連れてきた養子の少年に対する二人の態度からも真摯な人間性が見えます。山口家の長男夫妻のエピソードもいいんですよ。恋というものに興味がない、今ならアロマンティックと定義されるであろう妻の心をどう救うのか。キャラの振る舞いと言葉によってよりよい選択肢を提示できる、フィクションの強みを生かして、戦後を描きながら現代に響く物語を作り上げています」 Ⓒ 磯谷友紀/講談社 満州からシベリアに送られ、帰国してさらに数年。いち日の前夫の遺言をまるごと暗記して京都に届けてくれた人がいた 林さんにとって最も印象的だったのが、最新14巻に収められた第68話の雪降るワンシーン。戦死した前夫の遺言を携えて、いち日のもとを訪れる戦友の姿だ。 「戦地からシベリアに送られて、手紙も没収されながら、託された言葉を一字一句間違えないよう記憶していち日に伝える。人間の善意を目のあたりにしたような気持ちになります。戦後という時代の空気感が丹念に描き込まれているのは、この作品の大きな魅力ですね」 サブタイトルに「料理帖」とあるとおり、料理マンガでもある本作。料理人の監修をつけ、現代の食材や道具でも再現可能なレシピが作中に置かれている。 「料理を見せる、という気合の入ったカットは器や空間もきっちり描く。疲れたときにいち日が出す料理も本当においしそうでうらやましいんです。食に限らず、建築や洋服といった当時の文化風習や、料亭経営という特殊な世界をのぞき見る意味でも読みごたえのある作品です!」 マンガ編集者林士平 マンガ編集者。『SPY×FAMILY』『チェンソーマン』『ダンダダン』『幼稚園WARS』などの人気作品、「少年ジャンプ+」の新連載や読切も担当。「『SPY×FAMILY』アニメ3期が放送、配信中です!」 マンガに関する記事はこちら! 『ながたんと青と -いちかの料理帖-』終戦間もない京都の老舗料亭で、料理を作り、 食べ、闘い、恋をする年の差夫婦の物語【マンガ編集者のおすすめ】 『RIOT』雑誌作りの扉を開いた文化系高校生の青春物語【マンガ編集者のおすすめ】 『ヴィンランド・サガ』11世紀、 ヴァイキングの時代を舞台に「愛」を描く傑作長編!【マンガ編集者のおすすめ】 『半分姉弟』 ミックスルーツのキャラに光を当てる話題作【マンガ編集者のおすすめ】 『隙間』『緑の歌 -収集群風-』 台湾の若手作家・高妍(ガオ イェン)の2作に没入!【マンガ編集者のおすすめ】 身も心も冷やす作戦! おすすめ【ホラー】小説&マンガで暑さを忘れる体験を #深夜のこっそり話 #2281 『りぼん』が創刊70周年! 『ときめきトゥナイト』、『ご近所物語』など、憧れの主人公に変身 『海獣の子供』 地球と宇宙とすべての生き物の誕生の物語【マンガ編集者のおすすめ】 脚色は一切なし! 清野とおる【壇蜜】は、極めて面白い、世にも奇妙なラブストーリー漫画だ 『不思議な少年』 時空を超えて、人間を見つめるオムニバス【マンガ編集者のおすすめ】 【ユニクロ】UTが、漫画家・矢沢あいの名作とコラボレーション! UT限定の描き下ろしデザインもお見逃しなく 『乙嫁語り』 緻密に描き込まれた絵と物語に震える長編【マンガ編集者のおすすめ】